なんてこったい……
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「おーい、風呂入るぞー」
俺は獣人の子供達にそう呼びかける。
子供たちは今となっては素直に俺の言うことを聞くようになった。
なぜかと言うと、怪我を回復魔法で治すところを見せてあげたからである。
やはり小さい目からすれば、昔の俺と同じようにソレがとても凄いもののように見えてしまうのだ。
因みに先ほどのルナの護衛についてだが、今度一緒に商店街へ行くことになった。
エスイックも俺なら安心だ、と喜んでいたのを覚えている。
それから部屋へと戻ろうとした俺に、メイドさんがお風呂の用意ができましたと告げてきたので、今こうやって子供たちに呼びかけているのだ。
「はーい」
「まってー」
あちらこちらで子供たちの騒がしい声が聞こえてくる。
「言っとくけど男の子だけだからなー」
念の為に、と思い俺はそう伝えておく。
ブロセルの妹や、他にも女の子の小さい獣人の子もいたからだ。
以前トルエをお風呂に入れたときのような失態をここで犯すわけにはいかない。
「さきいっとくねー」
「ぼくもー」
どうやら既に風呂の場所を知っているらしい数人の子供たちが、我先にと風呂場へと走っていく。
「あれ、ブロセルは入らないのか?」
俺は特に準備を始めようとしないブロセルに聞いてみる。
「あぁ、後でゆっくり入るから大丈夫だ」
「了解」
俺はそれを聞くと、子供たちを追いかけるように風呂場へと向かう。
すぐ近くでトルエが何とも言えない顔でこちらを見ていたが今回は我慢してもらうしかないな。
俺は心の中でトルエに謝り、その場から離れた。
「……まぁ、子供だしな」
俺は目の前の脱衣所の有様をみながらそう呟く。
既に子供たちがお風呂で身体を洗っているらしい音が聞こえるが、脱衣所には服が脱ぎ散らかされていた。
「仕方ないなぁ……」
俺はそれをメイドさんからもらった籠の中に詰め込んでいく。
「……ん、なんだこれ?」
その時ふと床に一本の長い髪の毛のようなものが落ちていることに気がついた。
子供たちには少し長すぎるような、そして茶色がかった髪の毛だ。
「…………」
もしかして誰か女の人の髪の毛、とかじゃないよな……?
俺は思わず目の前のものを見つめる。
「ま、まぁいいや」
しかしこんなことをしても意味が無いので、俺は恐る恐るそれを脱衣所の端っこの方へおき、自分も風呂へ入るべく服を脱ぎ始めた。
「よしっ、じゃあ入るか」
全て脱ぎ終わった俺は、ゆっくりと風呂の扉を開ける。
中からは湯気がたちこめ、暖かい空気が身体全体を包みこむ。
「あ、おそいよー」
すると子供たちは当然俺に気がつき、皆こちらによってくる。
「あぁごめんごめ……ん……ん?」
俺は子供たちの頭を撫でてやり、謝りながら何気なしに視線を落とした。
するとそこにあるものに俺は思わず目を奪われる。
「……え、……えっ!?」
ソレがあるのは子供たちの腰とお尻のちょうど真ん中あたり。
湯気のせいでどうなっているのかまではよく見えないが、確かにソレはそこにあった。
「そ、それって―――――――尻尾か……?」
そう、そこには何と、細長い尻尾が生えていたのだ。
「ん?これは尻尾だけど?」
「っ!?」
無邪気に呟く子供たちの言葉に合わせるように、それぞれの尻尾がくねくねと揺れ動く。
「……まじか……」
俺は風呂場の入口で立ち尽くし続けていた。
そして、ある一つの可能性を思い浮かべていたのだ。
「も、もしかしてだけど、それって獣人なら女の子にもその……生えてるのか……?」
俺は恐る恐る俺が一番聞きたかったことを聞いてみる。
多分……否、絶対それが一番大事なことだからだ。
「そりゃあもちろん!」
子供達は俺がそんな状態だとも知らずに、明るい無垢な笑顔を俺に向けてくる。
しかし今はそれどころではない。
だって、女の子の腰とお尻の間から尻尾が生えているのだから。
そこで俺は当然のようにニアを思い出した。
獣耳だけでもとても可愛らしいのに、それに尻尾がつくなんて……。
なんてこったい……ッ!!
想像してみろ……!
ニアに尻尾が生えている姿を……!!
その事実に俺は拳を天に突き上げる。
そして俺はその時、自分の鼻の中で微かに血の匂いがするのを感じたのだった――。