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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
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触らせてくださぁい

ブクマ評価感謝ですm(_ _)m


 「……あ、やべ……」


 奴隷契約のため別室へと向かっていた俺は、そこでようやく奴隷競りの会場にやって来た当初の目的を思い出した。


 俺は思わず、トルエやブロセルのいる会場の方へと目を向ける。


 「……急ぐか……」


 しかしここで引き返す訳にもいかない俺は、再び視線を前に向け、奴隷契約のための別室へと急ぐのだった。





 「ここ、かな?」


 恐らく目的の部屋の前にまでやってきた俺は、恐る恐る扉を開ける。


 扉を開けた部屋の中には、既に先程までステージにいた奴隷商と、獣人の女の子が待っていた。


 「では、まず説明をさせていただきますね」


 部屋に入り一息ついた頃、奴隷商がそう切り出す。


 「ご存知のとおり、今回脚を運んでもらったのは奴隷契約を行うためです」


 「はい」


 俺は以前アウラやトルエと契約した時と、同じ言葉を聞かされる。


 「しかし今回行うのはただの奴隷契約ではなく、『犯罪奴隷』との契約になっております」


 「……ん?」


 「こちらもおそらくご存知かと思いますが念の為に説明させていただきます」


 「あ、お願いします」


 ……犯罪奴隷って、何だろう。


 ま、まぁ説明してくれるみたいだから助かったけど……。


 「犯罪奴隷とは、まぁそのままの意味なのですが、罪を犯したために奴隷となった者のことです。そのために様々な手続きが必要になる、というわけです」


 「は、犯罪、ですか……」


 俺は、こんな女の子が何の罪を犯したのだろうかと、何気なしに女の子のことを見てみる。


 「…………え」


 そこには、俺の知っている女の子が立っていた。


 「あ、あれ、お前……あの時の……?」


 なんとその女の子は、以前俺の道案内をしてくれたかと思うと、俺の財布を盗んでいった女の子だった。


 というかどうして今までそのことに気がつかなかったのか。


 はいそうです。


獣耳ばかり見ていたからです。


 「…………」


 俺の言葉に対し、顔を下げる獣人の女の子。


 この反応から見て、もしかすると既に俺のことに気がついていたのかもしれない。


 「あ、あの奴隷商さん」


 そこで俺は、確認のために奴隷商に話しかける。


 「もしかしてこの女の子の罪って、盗難、とかですか……?」


 「はい、そのとおりでございます」


 俺の言葉に対し、奴隷商はすぐにそう返す。


 「そ、そうですか……」


 やはり、俺の予想は正しかったらしく、俺の財布を盗んだあともそういうことをやっていたらしい。


 もしかしたらその前にも……。


 「あれ、もしかしてお客さんも盗られたりしましたか?」


 俺たちの様子から目聡く察してきた奴隷商がそう尋ねてきた。


 「あ、はい。実は前に一度だけ……」


 特に隠すことでもないと思ったので俺は奴隷商にそう答える。


 「それならちょうど良かったですね」


 「ん?」


 すると俺の答えを聞いた奴隷商はどこか含み笑いを浮かべ、つぶやき出す。


 「今から行うのは犯罪奴隷専用の契約なのですが―――」


 「はい」


 確か説明の最初の方でそんなことを言っていた気がする。


 ……それのどこが良いのだろうか?


 俺は奴隷商の続きの言葉を待つ。


 「――――服従の契約、と呼ばれています」


 「……服従?……お、俺が?」


 「奴隷です」


 「……」


 うん、分かってたよ?


 冗談だからそんな哀れむような目でこっちを見ないでくれると助かる。


 「そ、それで服従の契約、とは?」


 俺は気を取り直して、気になっていることを聞いてみる。


 「服従の契約をした奴隷は、主の命令に絶対従わなければ(、、、、、、、、)いけません(、、、、、)


 「……え、絶対って……?」


 「何でもです。日頃の雑用、夜の相手、そして―――死であったとしても」


 俺に畳かかけてくるようにそう教えてくる奴隷商は、獣人の女の子に目を向けると、嬉しそうに嫌な笑みを浮かべる。


 もしかしたら奴隷商の言うことでも聞かなかったのかもしれない。


 「……っ…………」


 奴隷商の言葉を聞いて、女の子はその小さな手を握り締めている。


 よく見れば、少しだけ丸められたその肩も、小刻みに震えていた。


 きっとこれから自分の主となる俺が無理難題な命令をしてくるのかも、と心配しているのかもしれない。


 けどそんなこと(、、、、、)どうでもいい。


 今は、もっと大事なことがあるだろう?


 「……本当に何でも良いんですね?」


 俺は最後の確認にと、奴隷商に確認をする。


 「えぇ、何でもどうぞ」


 奴隷商も笑みを浮かべながら、頷いてきた。


 「じゃあ――――」


 俺は、獣人の女の子の方へと身体を向ける。


 顔を下に向けた女の子の横顔から覗ける瞳には、濡れている気がするけど、今は仕方ない。


 「――――獣耳触らせてくださぁいッッッ!!!」


 俺は、物凄い速さで頭を下げながら、女の子にそうお願いしたのだった。

 


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