あ、これ無理だ
ブクマ評価感謝です。
3OVL一次通過しました。
ありがとうございますm(_ _)m
「……ど、『奴隷競り』の会場……?」
俺はデュードさんの言葉に思わず聞き返す。
もちろん『奴隷競り』という言葉の意味はわかるが、それでどうして人がたくさん集まるのかが分からない。
少なくとも、街にあった奴隷市場では、競りでなかったにしろ、そこまでたくさんの人は集まっていなかったはずだ。
「……あぁ、『市場』と『競り』は比べ物にならねぇからな。それに都ってことも加われば……」
俺の率直な疑問にデュードさんはそれだけ教えてくれると、早速『奴隷競り』の会場へと向かうのか、ギルドの出口へと向かってしまう。
俺たちはデュードさんの背中を見失わないように、慌てて後ろを追いかけるのだった。
「……多すぎだろ、ここ……」
奴隷競りの会場らしい場所へと着いた俺は、思わず呟く。
周りを見渡せば、人、人、人。
正直今の状態ではトルエとブロセルと逸れないようにすることと、デュードさんを見失わないようにすることだけで精一杯だ。
「ネストー、こっちだ」
既に若干見失いかけていたデュードさんから声がかけられたかと思うと、人ごみの中から手を掴まれたかと思うと、思い切り引っ張られた。
引っ張られた先で顔をあげると、そこにはデュードさんがニカっとこちらに笑いかけている。
「どうだ、多いだろ?」
「は、はい。正直ここまでとは思ってませんでした……」
俺は人の多さに窮屈さを覚えながらも、デュードさんにそう返す。
しかし誰だってここまでとは想像できないだろう。
そして俺はふと、恐らく奴隷がやってくるであろうステージの方へと顔を向ける。
「そうだ、あそこに一人一人やってきて競られていくんだ」
俺の視線から察してくれたらしいデュードさんが軽く説明してくれた。
どうやら『競り』の形式は、まず奴隷商が出てきて挨拶をする。
そして次に一人目の奴隷が出てきて、それを会場に集まった貴族や冒険者が競り落とす。
……といった形らしい。
俺は特に誰かを買ったりするつもりもないので、当初の目的通りに、ここにいるかもしれないブロセルの妹らしき『獣人』がいないかを探し始めた。
「では今回の『奴隷競り』を開始いたしまぁーーすっ!!」
俺やブロセルが周りに獣人がいないかを探しているとき、そんな声が聞こえてきたと思っていると、いつの間にか奴隷商の挨拶も終わっていたらしく、一人目の奴隷が出てきた。
目を細めて見てみるとどうやら、細身の男の子のようだ。
まだ幼さを隠しきれていないその表情の中には、緊張の色も見えるような気がする。
「では価格の提示をおねがいしまーぁす」
奴隷商のその言葉を皮切りに、俺の周りにいる人たちが、どんどんと価格を口にしていく。
「―――万エン」
ふとその時、近くで知っている声がしたかと思い、顔を向けてみると、そこにはなんとデュードさんが手をあげている姿があった。
『…………』
そして、俺の驚きと同じように会場も静かになる。
「……では、―――万エンで決定です!!落札者の方は後ほど別室にお越し下さい!!」
しかも奴隷商の言葉を聞く限りでは、デュードさんがそのまま競り落としてしまったらしい。
「……俺はここで競りに出されている子供たちを自立できるように、教えたりしているんだ」
俺が驚きの表情を浮かべていることに気がついたデュードさんは、少し恥ずかしいものを見られたかのように頬を掻いている。
「これでも俺、意外に冒険者で儲かってるからな。自己満足って言われたらそうかもしれないが、それでもたまにこうやって競りに来てるんだ」
「……へぇ……」
俺はただそう呟く。
けれど、恥ずかしそうに頬をかくデュードさんは、なんだか格好良く見えた。
「それではお待ちかねぇー。ここからは夜の時間だよーぉっ!」
それからもどんどんと競りが行われている中で、突然、奴隷商がそう声を張り上げる。
すると、それまで喧騒に包まれていた会場が、あっという間に静まり返ってしまった。
「……?」
俺も周りに合わせて口を開かないようにしているが、今から何が始まるのだろうか。
夜の時間、とも言われていたが、今はまだ昼過ぎくらいのはずだ。
『……』
その時、ステージの脇から中央へと、一人の女性が歩いてきた。
―――――下着姿で。
「ッッ!!??」
自分で言うのもアレだが、そういうことにあまり経験がない俺は、もちろん一瞬で目を背ける。
「こ、これって……?」
混乱している俺は、顔を下に向けながらデュードさんにそう質問する。
「あぁ、これは所謂『夜の相手』を務める奴隷だ」
そんな俺に、デュードさんがそう教えてくれ、俺は恐る恐るもう一度ステージへと目を向ける。
『……』
下着姿の女の人がそこには立っていて、周りの人が色々な価格を提示している。
……あ、これ無理だわ。
俺はすぐに再び目を逸らす。
「……こんなに人が多いのもこれが理由の一つだな」
少し呆れたような声色で、デュードさんがそう呟く。
その呆れの対象が、俺なのか、それともこの会場にやってきている人たちのことを指しているのかは分からないけれど、一つだけ言わせてほしい。
じゃあなんでデュードさんは――――――そんなにステージを凝視しているのか、と。




