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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
114/181

期待しているよ

ブクマ評価感謝です。

 「じゃあ先に宿に行っててくれ」


 「あぁ」


 ブロセルが俺の言葉にそう返し、宿屋へと向かっていく。


 そう、俺たちは既に都へと着いている。


 街からここに来るまで、特に何か起こるわけでもなく無事にやってくることができた。


 道中、エスイックからの手紙の中身を確認してみると、どうやら都で武闘大会か何やらをするらしく、それの治療員として来てくれ、ということだった。


 詳しい内容などはあまり書かれていなかったので、今は挨拶も兼ねて王城へ向かっている。


 「……」


 後ろには俺の服の裾を掴みながら、黙って俺について来ているトルエがいる。


 これは、別に獣人が苦手だからとかそういうわけではなく、ただあまり知らない人と二人になるのが、苦手なだけだろう。





 そんなことを考えている内に、俺たちは王城の前までやって来た。


 門番の人に国王様からの手紙を見せ、すんなりと中に通される。


 城の中に入ると、今度はメイドさんたちが俺たちをエスイックがいるだろう部屋の前まで連れて行ってくれた。


 「失礼します」


 一応他の人の目を気にしながら、丁寧に部屋の中に入る。


 中を見てみるとどうやら、エスイックの他に誰かいるという訳ではなく、ただ何時ものようにエスイックが椅子に腰をかけているだけだった。


 「待っておったぞ」


 そう言いながらエスイックは俺たちに手招きをする。


 俺たちはエスイックに従い、エスイックの近くに用意されていた椅子に腰を下ろした。


 「それで、俺が今回呼ばれたのって、治療員としてだよな?」


 「あぁ、いきなりで申し訳ないができればお願いしたい」


 俺の確認に対し、エスイックはある張り紙を渡しながらそう言ってくる。


 それに目を通してみると、どうやら武闘大会の概要のようなものだった。


 それによると、前回の武闘大会の参加者人数や、優秀な参加者への報酬などがいろいろと書かれている。


 「まぁ、俺もちょうど都に来る用事もあったから別に大丈夫だな」


 もともと都に来たのは獣人であるブロセルの妹を探すためだが、この概要からするに、武闘大会の開催日はまだ先のようだし、それまでは妹探しの手伝いもできるだろう。


 「ん、用事とは?」


 俺の言葉にエスイックが首をかしげる。


 そんなエスイックに俺は都に来るに至った訳を話し始めた。





 「ほう、そんなことがあったのか」


 俺の話を最後まで聞いたエスイックの口からそう溢れる。


 「……エスイックから見て、人間と獣人ってのはやっぱり敵対してるのか?」


 俺は少し考えた末に、国王であるエスイックに聞いてみた。


 「……確かに、人間と獣人は仲が悪い」


 俺の質問から少しの間のあと、エスイックは答え始める。


 「しかし、人間は獣人に対して、そこまで敵対しているというわけではない」


 「……というと?」


 いまいちその言葉の意味が分からない俺は、もう少し詳しい説明を求める。


 「獣人は人間に対して敵対心を持っているが、その逆はそうでもないというわけだ」


 「…………」


 「確かに人間の中には、獣人の耳なんかに苦手意識を持つ者が多い。しかしそれだけだ。少なくとも私はそう思っている」


 「……なるほど」


 俺はそこでようやくブロセルがギルドで獣人とバレた時のことなど、合点がいった。


 あの時襲ってこなかったのは、耳が怖かったとかではなく、まず襲う気がなかったということだったのだ。


 「じ、じゃあなんで獣人は人間に敵対してるんだ?」


 別に人間が敵対しているわけでもないのに、どうして獣人が敵対してきているのかが分からない。


 「……獣人は、人間よりも長寿なのだ」


 エスイックは少し間をおいたかと思うと、そう告げる。


 「……?」


 しかし、長寿だから何かあるのだろうか。


 「……昔、人間と獣人の間で大きな戦いがあった」


 「…………」


 「文献によると、とても大きな戦だったということが記されておる」


 「つまり、その戦を体験している獣人がまだ生きている、と?」


 今までの話をつなげ、俺はそう確認する。


 「……それが国の上層部を占めているのだ」


 「おぉぅ……」


 しかしエスイックの口からは俺の想像を超えた答えが帰って来た。


 確かに自分の同胞がたくさん殺されてしまっただろう戦を経験してしまえば、人間に対して敵対心を持つのもうなずけてしまう。


 「まぁそのことも今後解決しなければいけないな」


 エスイックのその言葉を最後に、ひとまずこの話は終わった――。





 「それで具体的には、俺はどんな感じで治療すればいいんだ?」


 今度は打って変わって、武闘会での俺の役割について話している。


 「そうだな、そこあたりはルナが仕切っているから、後で聞かないといかんな」


 ルナ、というのは国王であるエスイックの娘さんで、『聖女』も務めている才女だ。


 「そうなんですか。じゃあまた後で教えてください」


 俺は今まで大人しく横で座っていたトルエの手を引くと、一度挨拶をしてから扉へと向かう。


 「あ、そういえば!」


 と、そこで何やらエスイックが声をかけてくる。


 「ネスト、お主最近ゴブリンを大量に倒したり、したか……?」


 そう聞いてくるエスイックは、何かを期待しているような、そんな顔をしていた―――。


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