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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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詰んだな!!

「じゃあ、始めるか……」


 「えぇ、そうね……」


 「第一回!緊急御家会議ぃ!!」


 俺たちは今、新しく買った家でひとつのテーブルを囲っていた。理由は言わずもがな。


 料理、洗濯、お掃除をだれがするかで俺は悩んでいるのだ。俺ができるのは精々掃除くらいだろう。洗濯もがんばればいけると思う。


 だが、決定的に料理ができない。村にいた頃も実家だったから全て親頼みだった。


 「アウラたちのなかで、料理できるやついるか……?」


 アウラはどうだろうか。あ、ダメだ、目逸らしたもんコイツ。


 リリィはどうだ!頭の上にクエスチョンマーク浮かべてる時点でダメだな。


 だ、大丈夫だ、まだトルエがいる!!


 「ごめんなさいご主人様……。僕、料理というものをしたことがなくて……」


 「だ、だよな……」


 期待の目を向けた俺にしゅんとするトルエ。


 「べ、別にトルエが気にすることじゃないよ」


 「でも、今日からなに、食べるの……?」


 そうなのだ、現実問題どうしたらいいだろう。ここから毎食街で食べるって言ってもこの家からだと少し遠い。


 それに、外食だと栄養が偏る心配も出てくるし……。


 「今から人を雇うのも時間が掛かるわよね」


 アウラが言うとおりだ。奴隷を買うにしても、その前にいろいろと準備しないといけないし。


 「詰んだな!!」


 これは打つ手なしだ。こうなりゃ自棄だ!アスハさんにでも頼みに行こう!もしかしたら作ってくれるかもしれないし!


 「ご主人様……、実は昨日街でこんなの見つけた……」


 俺がアスハさんに頼みに行こうとしたところで、トルエが一枚のチラシを机の上に出した。


 『お料理教室を開催します!!料理ができないそこのアナタ、もっと料理が上手になりたいそこのアナタ!そんなアナタの希望を叶えます!!』


 か、神だろこれ、グッドタイミングだよ!!


 「これだ!!もうこの際みんなで行くぞ!」


 「えぇ!?私たちも行くの!?」


 「当たり前だ!そしたら順番制で出来るからな!」


 



 

 「では、料理教室始めますぅ~」


 そして俺たちは今料理教室に居る。どうやら俺たちの他にも希望者が居たらしく、かなりの人数が集まっている。


 「本日はなんと!今流行りのアネストさんも来ていらっしゃいますぅ~!」


 へぇ、誰のことだろ…………って俺じゃん!?今流行ってんの俺!?


 周りの奥さん型が「あらまぁ」という感じで目をキラキラさせている。

 

 「い、居心地が悪いなこれ……」


 


 


 まぁそんなこんなでそれからも料理教室に通い続け、俺たちはある程度の料理スキルを身につけることができた。


 今になってはリリィまでもが夕食を作れるまでになっている。


 そんな中で唯一、トルエだけが未だに料理を作れずにいた。俺の予想では一番最初に覚えると思っていたのだがどうやら料理は苦手のようだ。


 トルエは今も一人で料理教室に通っているからいずれはできるようになるだろう。




 今日は週に一度の買い物の日だ。リリィと一緒に一週間分の野菜を買うのだ。


 途中で宿屋の看板娘さんと会ったりしたけど、特に問題なく食料を調達することが出来た。


 ここ最近では結構な人数の店主がいろいろサービスしてくれるようになった。治療のときにお返ししますんで、と言うと笑いながら手を振ってくれる。俺としては嬉しい限りだ。


 「ネストはぁ人気者なんだね!みんな手振ってくれるし!」


 「いや、皆が優しいだけだって」

 

 「それでもやっぱりネストは人気者だよぉ!」


 俺たちは会話を楽しみながら家への帰り道につく。


 「こんな日がいつまでも続いたらいいね!」


 ホント、こんな日常がずっと続いたらいいな。


 柄にもなくそんなことを思ってしまった。


 その日の夕食担当はリリィだったが、やっぱりリリィの料理は美味しかった。





 


 ――――――だけど、そんな日常を脅かす事態が少しずつ迫ってきていることに、俺たちは誰も気がついていなかった。


 


 



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