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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
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獣の耳はピクピク

ブクマ評価感謝です。

次説明回になるかもしれません><

「……えっと?」


 俺は突然ギルドの雰囲気が変わったことに戸惑っていた。


 倒れていた人の頭に巻いていたその布が解け、獣そのものの耳が顕になってからこうなったのだ。


 「おいおい……『獣人』じゃないか……」


 そんな中、誰かがそう呟くのが聞こえた。


 「『獣人』……?」


 俺は今まで生活してきた中で初めて聞く単語に思わず首をかしげる。


 しかし、今の呟きにはとても歓迎しているような響きは含まれていなかった。


 逆にどこか不快さのようなものが感じられた気がする。


 「……」


 俺は静かに周りを見回す。


 すると目があった人達は気まずそうに目を逸らし、無言のまま立ち尽くしている。


 「……あ、今日は治療これで終わります」


 俺はそう言うと、倒れている人の肩を支えるようにして、ゆっくりと立たせる。


 最初、ここまで連れてきてくれた二人は既にその人から離れてしまっていて、こちらをジッと見つめていた。


 「……じゃあ」


 俺はそう一言だけ残すと、肩でその人を支えながら、ゆっくりとギルドの扉をあける。


 誰かが驚いたような声を上げていたけど、今は帰ったほうが良さそうだ。





 「うーん……」


 俺は、隣で一向に目を覚まさないその人を見る。


 倒れていた時は分からなかったが、その人はどうやら男らしい。


 そして、俺はそのことが分かると、改めてその耳を確かめる。


 やはりどこからどう見ても獣である。


 「ふぅー」


 つい悪戯心が湧いてしまい、思わず息を吹きかけてみる。


 それに反応してかその獣の耳はピクピクと反応してくれた。


 「おぉぅ……」


 これでどうやら本物らしいということが分かったが、それはそれで感慨深いものがある。


 一体どういうつくりをしているのだろうか……。


 俺がそんなことを思っているうちに、いつの間にか俺の家がだんだんと近づいてきたのだった。





 「ぅ……こ、ここは……?」


 「あ、起きた?」


 家に帰り着いて少ししたとき、その獣耳の男が目を覚ます。


 「っ!?」


 その男は俺に気がつくと、物凄い速さで後ずさる。


 ……かと思うと、こちらを睨みつけてきた。


 もしかして、俺のことを敵だと思っているのだろうか。


 「あー、俺敵じゃないから大丈夫。怪我もしてたから治療したし」


 俺は両手を上げながら自分の無害を示す。


 「……?」


 その男は訝しみながらも、俺に敵意がないことを察してくれたのか、警戒を少し解いてくれたようだ。


 「……それで、ここは?」


 すると落ち着いてきた男が、俺にそう聞いてくる。


 「えっと、ここは俺の家なんだけど。何でもアンタがこの街の近くで倒れていたのを俺のところまで冒険者が連れてきてくれたんだ。これでも俺、回復魔法も使えるし」


 「……そうか」


 俺の言葉に納得してくれたらしい男は、ゆっくりと元いた場所まで戻ってくる。


 「…………ブロセルだ」


 「え?」


 男は黙り込んだかと思うと、突然にそう呟いた。


 「ブロセル、俺の名前だ」


 「あ、あぁ。名前ね」


 どうやらこの獣耳の男はブロセルという名前だということが分かった。


 「俺はアネストって言うんだ。みんなにはネストって言われてるけど」


 相手の名前を教えてもらったからには自分もしないわけにはいかないと思い、俺もそう返す。


 ブロセルは、「ネスト、か」と小さく呟くと再び黙り込む。


 そこで俺はふと、ブロセルに聞きたいことがあったことを思い出した。


 それは、もちろん『獣耳』についてだ。


 「なぁブロセル、その耳って……なに?」


 俺は目でブロセルの獣耳を見つめながら、ブロセルにそう尋ねる。


 「む?ただの耳だぞ?」


 ブロセルは俺の質問の意味が分からないといった風に首をかしげながらそう呟く。


 「俺は『獣人』だからな」


 ――――また出た。


 やはり今までの記憶を辿ってみても、そんな単語は聞いたことがない、と思う。


 「その、『獣人』ってのはなんなんだ?」


 「……は?」


 やっぱりいくら考えてみても分からないので、諦めて本人に聞いてみたところ、ブロセルは再び意味が分からないような声をあげる。


 「……もしかして、『獣人』をしらない、と?」


 しかし俺の表情から何かを察してくれたのか、俺にそう聞いてくれる。


 「……知らない」


 きっとブロセルの反応からして、一般常識なのだろうけれど、田舎者の俺はそんなこと知らない。


 俺は少し恥ずかしさを覚えながらも正直にブロセルに応えた。


 「……はぁ、じゃあ教えるぞ?」


 「お願いします」


 ブロセルは少し驚きのようなものをその表情に浮かべながらも、俺に獣人について教えてくれるようだ。


 「いいか?獣人ってのは――――――――――――――――」


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