ちょっと待とうか、アウラくん。
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「それにしてもやっぱり美味しかったなぁ……」
俺はベッドに横になりながら、さっき食べたアスハさんの弁当のことを思い返していた。
最初、俺が弁当を開けたとき、その中には何も入っておらず、既に食べ終えられていたのだが、それを見たアスハさんが固まったかと思うと、「ここで少し待っていてください」と言い残してどこかへ走り去っていってしまったのだ。
するとそれから少しだけ経った後、手に何かを持ちながらアスハさんが帰って来た。
その何かをアスハさんが手渡してくるので見てみると、そこには先ほどと同じような弁当箱。
恐る恐るその蓋を開けてみると、今度はちゃんと美味しそうなモノが並んでいて、俺の空腹を刺激した。
アスハさんから箸を渡された俺は、再度食べていいかということを確認し、その弁当を食べ始めた。
食べながらふと、どうしてアスハさんは二つも弁当を持っているのだろうか、と思ったりもしたが、そんなことがどうでもなるくらいその弁当のうまいこと。
「……はぁ」
また、食べたいなぁ……。
今回食べさしてもらったのは二度目だったが、やはりどうしてもまた食べたくなってしまう。
もちろんリリィたちが作るものもとても美味しいのだけれど、アスハさんが作る料理は、俺やリリィたちが作る味とは違う気がする。
それがとても新鮮に感じることができて、とても美味しく感じられる原因なのかもしれない。
「うーん」
自分から頼むのも恥ずかしいものがあるし、やっぱりアスハさんが作ってくれるのを待つしかないか……。
俺は少し残念に思いながら、ベッドに頭を押し付けた――。
「……ストー?ネストってばー」
「……ん……ぅん?」
自分の名前を呼ぶ声に、俺はゆっくりと目を覚ます。
ベッドで横になっている内にいつの間にか寝てしまっていたらしい。
「……」
一体誰が俺を読んでいたのかと思っていると、俺の身体に跨り、さらに顔を近づけてきているリリィと目があった。
「あ、おきたーっ」
リリィは俺が目を覚ましたことに気がつくと、ベッドから降りる。
「……それで、どうしたんだ?」
リリィが俺を起こしに来たということは何か用事でもあったのではないかと思い、俺はリリィに尋ねる。
「ん、ごはんできたよ?」
「……あぁ、了解」
俺は眠たい目を擦りながら、ベッドから身体を起こす。
きっとリリィが言っているのは、夕食のことだろう。
確かに俺は家に帰ってきてからは何も食べることなくこうやって眠っていたのだから、わざわざ起こしにきてくれたということか。
幸いにも、アスハさんのお弁当はそこまで量も多くなかったので、夕食程度であるならば軽く食べきることができるはずだ。
「ふぅ……っと……」
俺はベッドから立ち上がると、リリィが出て行った扉の方へと脚を進めた。
「おぉ、美味しそうだなぁ」
俺は机に置かれたその料理に思わずそう零す。
肉なんかはもちろん、ちゃんと野菜まである。
「じゃあ、食べようか」
机には、俺、リリィ、アウラ、そしてトルエの四人がみんな揃ったので、俺たちは食事をはじめる。
「……うん、おいしい」
料理を一口分だけ、口に運ぶ。
口の中でふんわりととろけていく、ソレに思わずそう零す。
「それリリィが作ったんだよー?」
俺のその言葉に、嬉しそうにリリィが反応する。
「へぇ、すごいなぁ」
俺が、となりに座っているリリィの頭を撫でながらそう褒めてあげると、リリィは嬉しそうに微笑む。
「……」
それに反してアウラたちがどこか浮かない顔をしているが、多分気のせいだろう。
そんなことを思いながら、俺は再び料理を口に運び始めた――。
「………ふぅ、お腹いっぱいだわぁ……」
俺はとりあえず、今目の前にある料理は食べきろうと思っていたのだが、意外にも量が多くてきつかった。
まぁなんにせよちゃんと食べきれたので、良かったとしよう。
「え、もうお腹いっぱい、なの……?」
そんな俺に、アウラが意外そうな顔をこちらに向けてきた。
「い、いや、でももう全部食べ終わったし……」
俺は変なこと言うアウラに、自分の空になった皿を示しながらそう返す。
「……?ネストって今日昼食べてなかったわよね?」
するとアウラは、今度は確認するように聞いてきた。
「ま、まぁ確かに食べなかったけど」
そのあとにアスハさんの弁当もらったし……。
「だから今日はたくさん作っておいたのよ」
「…………え?」
アウラはそう言うと、一度机から離れ、台所へと向かう。
俺はその後ろ姿を、恐る恐る目で追いかける。
「……」
すると、俺の気のせいだとは思うが、アウラは新しい料理が入った皿を持ってきた。
「……」
ち、ちょっと待とうか、アウラくん。
「はい、これネストの分よ」
そう言って、無慈悲にも俺の目の前に新たな料理をおくアウラ。
「あ、それもリリィがつくったやつーっ」
その料理をみてリリィがキラキラとした目を俺に向けてくる。
やめてくれ……。
……そんな顔されたら、食べないといけなくなるじゃないか……。
「…………」
しかし俺は中々、料理を食べ始める勇気が湧いてこない。
きっと一度でも食べ始めたならば、それを食べ終わるまで続けなければいけないだろうからだ。
「おいしい、よ?」
そんな俺に、リリィがそう言ってくる。
「はい、あーん」
しかも何を思ったのか、その料理から一口分だけを取ると、俺の口の前まで持ってきた。
これってもう食べるしか、ないじゃん……?
すべてが終わったあと、俺が自分のお腹に対して回復魔法を掛けまくったのは、言わなくてもいい、よな?