今日も来ないんでしょうか
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あ、あと申し訳ないのですが、今回キリが悪いですm(_ _)m
「……つ、つ、着いたァァァァアアッッ!!」
俺たちは今、本当に久しぶりに自宅まで帰ってきていた。
そのことに思わず玄関の前で思いっきり声を上げてしまったが、まぁ仕方ないと思う。
だって本当にいつ以来だろうか、この家に帰ってきたのは。
俺が王城のパーティーに招待される前だから、相当前のはずだ。
「はぁーっ」
自分の部屋に入ると、その見慣れた空間に思わずベッドに飛び込んでしまった。
特に何かあるわけでもなく、ほんの少しの小物と家具が置いてあるぐらいのこの部屋がやはりどこよりも心地がいい。
「……ベッド、最高……」
さらに言えば、長い間馬車に乗っていたので、とてもこのベッドに横になれる時を楽しみにしていたのだ。
やはり馬車と違ってベッドはいい。
眠っている自分を包み込んでくれるような気さえする。
「……あ」
俺はそこで、そういえば街の皆に帰ってきたと一言言うことを忘れていた。
馬車が街につきそうな時、俺たちは一足先に馬車から降ろしてもらい、こうして自宅へと帰ってきたのだ。
だから当然街の誰かにあった訳でもなく、ましてやギルドにでさえ顔を出していない。
「……行った方がいいかな……?」
ベッドで仰向けになり、見慣れた天井を見上げながらふと口に出す。
「うーん……」
いや、もう結構夜も遅いし、今日じゃなくて明日にでも行けばいいか。
俺は窓から見える暗闇を思いながら、そのまま眠りについたのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「……はぁ、今日も無駄になるんでしょうか」
ギルド職員である私、アスハは今目の前にある二つの弁当箱を見ていた。
一つはもちろん自分の分、そしてもう一つは『彼』の分だ。
『彼』は今、用事で都の方へと出かけているらしいのだが、私はこうやって弁当を作っている。
それも『彼』が出かけてからほとんど毎日弁当を二つ作っている。
もちろんいつも残してしまうのだが、もしかしたら今日帰ってきてくれるのではないか、なんて思ってしまい、また今日も何時ものように二つ目の弁当を用意しているわけだ。
「……」
でもやっぱり、今日も来ないんでしょうか…。
口には出さないけれど、私は心の中でそのことを理解していた。
「おはようー。アスハー」
仕事場であるギルドにやってくると、既に何人か同じギルド職員が来ている。
「おはようございます」
どこか眠たそうにしている同僚に、私は一言だけ挨拶を返すと、今日の仕事に取り掛かった。
『こんちわー』
「――――――ぇ」
それは私がギルドの受付に座っていたときのことだった。
冒険者たちの喧騒の中にも関わらず、すんなりと私の耳に入ってきたその声に思わず書類から目を離し、顔をあげる。
そして今しがたギルドにやってきただろう人物を探す。
何人もの冒険者がいる中で、その隙間からどうにかギルドの入口あたりに目を凝らす。
「…………」
―――――いた。
一瞬だけだったけど、玄関のあたりに『彼』を見つけることができた。
そしてその一瞬の間になんと、目があった。
かと思うと、『彼』は冒険者をかき分けて、なんと私の方へとやってきている。
……え、これどうしたらいいのでしょうか……!?
慌てていることがどうにかあまり顔にでないように気をつけるも、ちゃんと出来ているかどうかは分からない。
けれどこのいきなりの事態に私はとても混乱していた。
私の足元には、今朝方一生懸命作ってきた弁当が置かれている。
どうせ今日も無駄になってしまうんだろう、と思いながらも、そのもしかしたらを想像したら作らずには居られなかった弁当が、そこにある。
でも私はそこで一つの問題にぶち当たっていた。
……これってどうやって渡したらいいんでしょうか。
思わず足元の弁当箱を見つめる。
「アスハさん、お久しぶりです」
そして私のそんな葛藤を知ってか知らずか、『彼』は声をかけてくる。
「……はい、お久しぶりですね」
ゆっくりと弁当箱から視線を上げながらそう返す。
今、そう返した私の視線の先には『彼』――――――ネストさんが立っていた。