37.ほのぼの
騒いでいるサラたちをなだめすかしたメリルは、彼らに瓦礫の山で生き残っているものがいないかどうかを確認させた。
どうやらほとんどのものは今の魔法で破壊された建物の下敷きになったり魔法で動かされていたようで剣が破壊されたことで魔法がキレて、ただの死体に戻ったものがほとんどのようだ。
そんな中数人ほどがまだ息があったようなのでそのもの達を捕らえると瓦礫の山となった砦を後にした。
何もないのにここにいても仕方がない。
メリルはサラたちに昨晩自分たちが野営した場所まで戻るように命令すると、ジェシカの馬に乗ろうとしてヒューにいきなり腰を掴まれた。
「ちょっヒュー?」
文句を言おうとしているメリルにヒューは自分の胸に彼女を抱えると先程乗っていた馬を走らせた。
「あーあ、行っちゃったよ。」
クリスが馬上にいるジェシカを見たが彼女はその視線を無視した。
「行くぞ。」
彼女はそう言うとサラを促して昨晩野営した場所まで戻るように指示を出した。
クリスは溜息をつきながら背中を向けて走り出そうとした彼女の背に飛び乗った。
馬がビックリして飛び上がりクリスの手がジェシカの胸をギュッと掴んだ。
「なっ・・・。」
馬を落ち着かせて彼の手を外そうとするといきなり耳元で囁かれた。
「もし後ろに乗るの許可しないなら夜まで待たないけどいい?」
ジェシカは顔を真っ赤に染めながら背中にクリスを乗せたまま馬を走らせた。
「後で憶えてろよクリス。」
ジェシカが叫ぶとクリスは彼女の背中から囁いた。
「大丈夫。おれ防音魔法も得意だから。」
サラたちを置いてジェシカはさらに馬を早く駆けさせた。
昨晩の場所で野営をしたサラたちはなかなかテントから出てこないジェシカを待って、やっと昼過ぎにその野営地を出発した。
ちなみにヒューとメリルは全員が王都についた時にやっと現れた。
「メリル様、大丈夫ですか?」
「ジェシカ。ええ、今日は問題ないわ。」
「今日はね。」
クリスは不貞腐れた目線をヒューに投げた。
「わかってる。王都についたら今度はお前が休め。」
ヒューはクリスの耳元で囁いた。
「同然でしょ。こっちは夜だけだったんだから。」
クリスは腕組みして文句を言いながらジェシカの背中を熱い目線で見つめた。
ゾクリ
なんでかジェシカの背中を悪寒が走った。
「どうしたジェシカ?」
メリルが身震いした彼女を心配そうな顔で覗き込んだ。
「いえ。なんでか急に寒気がして。」
「それいかん。クリス。後は私がやるからジェシカを部屋に連れて行ってくれ。」
クリスは嬉しそうに頷くとジェシカを抱えるようにして部屋に連れて行った。
それから一週間。
ジェシカは風邪をひいたようでなかなか出てこなかった。
やっと出てきたジェシカをメリルは心配そうな顔で出迎えた。
「申し訳ありませんメリル様。」
ジェシカはメリルの執務室に入ると敬礼してから土下座せんばかりに謝った。
「いやそれはかまわん。だがもう体調は問題ないのか?」
「はい。大丈夫です。」
「そうか?まだ少し顔色が良くないな。もう少し・・・。」
「いえ。まったく問題ありません。」
喜々とした顔で寝室に運ぼうとしたクリスが近づく前にジェシカはメリルの話を遮ると、その日は休み明けなのにメリルの執務室で彼女は明け方まで仕事を続けた。
今夜はお前に指一本触れさせん。
メリルの闘志にクリスは早々に諦めると彼女の為に仕事手伝った。




