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濡れ羽色に輝く片翼の戦士  作者: しゃもん
第二章 下界
35/40

35.再会

「ワイド、しっかりしなさい。」

 サラが血みどろの男を馬から降ろすと地面に横たえた。

 ディーンがすぐに男の傍によると医療魔法を使って治療を開始した。


 応急処置が終わってしばらくするとうめき声をあげて男が目を覚ました。

「うっ・・・。」

 頭に手を置いて目を開けた男にサラは顔を近づけると彼の体を揺さぶった。

「何があったのワイド。」

「サラか?」

「そうよ。なんで第一隊の隊長が血みどろでこんな所にいるの?」

「奇襲を受けた。」

「えっ奇襲ですって!そんなわけないでしょう。将軍と副将軍の魔法は最強よ。そんなわけ・・・。」「だが奇襲を受けたんだ。」

 サラは男の体を横たえた。

「それで部隊はどうなったの?」

「わからん。」

 男は苦々しい顔でそう言った。


 サラは一緒に来た隊員の中で一番若い二人にワイドを王都守備隊まで運ぶように命令すると騎乗した。


 そして馬を隊員の方に向けるとまじめな顔で問いかけた。

「いい。よく聞いて。あのワイドが血みどろになるくらいの相手よ。死にたくなかったら引き返しなさい。」

 サラがしばらく隊員を見つめるが誰も動かなかった。

 彼は全員を見回した後、頷くと前方を向いて馬を走らせた。


 全員がその後に続いた。


 そこから峠を越えたところでヒューが先頭を走っていたサラを追い越すと、それ以上先に進まないように馬を止めさせた。


「ちょっと何するのよ?」

 後ろ脚で立ち上がった馬をなだめながらサラは前に立ち塞がったヒューを睨み付けた。

「ここで待ってろ。」

「はっ?」

「クリス。」

 ヒューの呼びかけにクリスは無言で頷いた。


「死にたくなかったら、これ以上は先に進むな!」

 ヒューはそう言うとクリスと連れだって物凄い勢いで駆けていった。


「ちょっとどういうつもりよ。」

 サラは唖然としながら後ろにいる仲間を連れて先に進もうとしたが馬が怯えて言うことを聞かなかった。

「どういう事?」

 サラが隣にきたディーンに視線を向けると彼は震えながら馬から降りた。


「ディーン?」

「感じませんか?」

「感じるって何を?」

 サラが不思議そうな顔でディーンを見ると彼は前方を指した。


 そこにはいつの間にか黒い靄が立ち込めていた。

「なにあれ?」

 そう言った途端、サラも震えが来てガクガクしてしまい馬にも乗っていられなくなった。

 慌ててディーンと同じように馬を降りた。


「何でなの?」

 結局サラたちは誰一人としてヒューたちの後を追うことが出来なかった。


 サラたちを後に残して先に進んだ二人は黒い靄を中から現れた魔物の群れと出くわしていた。

 二人は剣を抜くと馬を駆りながら魔物を斬り捨てて先に進んだ。


「この数すごすぎなんですけど。」

 クリスはうんざりした顔で隣にいるヒューに愚痴った。

「文句を言ってないでまじめに動け。」

「真面目にやってますが多過ぎです。」


「仕方ない。」

 ヒューは覚悟を決めるとクリスに目配せして剣に意識を集中させた。

 その間はクリスがヒューを庇いながら周囲の魔物を斬り捨てた。


「クリスどけ。」

 クリスは慌てて後方に下がるとヒューから白魔法が放たれた。


 その魔法が放たれた通り道には魔物が一掃され、綺麗に道が出来ていた。

「いくぞ!」


「了解。」

 二人は白魔法で一掃された道を突っ走る。


 そのまま走り続けると二人の目の前に禍々しい気配を放つ黒い球体が立ち塞がった。

 ヒューは剣を構えるとその球体に向け白魔法を放つ。


 魔法は球体の周囲を覆うように光ると黒い靄を吹き飛ばし、そこから透明な球体が現れた。


「ジェシカ!」

「メリル!」


 二人の呼びかけに球体の中にいたメリルとジェシカが目を見開いた後叫んだ。


「「うしろ!」」


 二人は後ろを振り向くと同時にヒューが白魔法のシールドを展開し、クリスがそれを土魔法で補強した。


「クリス。二人を守れ。」

 クリスは頷くと周囲に土魔法で二重に覆った防御壁を展開した。


 ヒューはそのまま後方をクリスに任せると迫ってくる禍々しい黒い塊に魔方陣を展開すると上位の聖魔法を放った。


 広範囲に聖魔法が展開され、その禍々しい塊は一瞬で消え失せた。

 ヒューはもう一度周囲に魔法探索を発動して危険を確認した後、念の為周囲に聖魔法の魔方陣を展開してからクリスたちの所に戻った。


「メリル無事か?」

 ヒューは地面に座り込んでいるメリルに駆け寄ると彼女を抱きしめた。


「ヒュー!」

 メリルはヒューの胸に抱き締められた。

 すぐに彼女も彼の背に手を回すとギュッと抱き付いた。


 二人が感動して抱き合っていると隣でクリスの声が聞こえた。

「ジェシカ!しっかりしろ。」

「クリス?」

「ああそうだ。俺だ。」

 ジェシカはクリスの腕の中で微笑みながら意識を手放した。


「ジェシカぁー。」


 ヒューはメリルを放してジェシカを抱きしてているクリスの肩を掴んだ。

「クリス、俺が治療する。ジェシカの背中を見せてくれ。」

 クリスは頷くと彼女を地面に俯せに寝かせた。


 ジェシカの背中の片翼はほとんど失われていた。

「等価交換の魔法か。」

 苦々しく呟きながらもヒューは治癒魔法を展開した。

 すぐに背中の傷は治せたが失われた翼は戻せない。

 治療を終えてクリスを見ると彼は頷くだけで何も言わなかった。


 彼女が”等価交換”の魔法を使ってメリルを守ってくれたお蔭で彼女は無事だった。

 ヒューは少し複雑な気分で治療の終わったジェシカ抱きしめ、回復魔法をかけているクリスを見た。


 そこにメリルが心配そうな顔で近づくとヒューの肩に手を置いた。

「ヒュー、ジェシカは?」

「命に別状はない。今クリスが回復魔法をかけているから、しばらくすれば目が覚めるだろう。」

「よかった。」

 メリルはホッとした表情でジェシカを抱きしめているクリスを見た。


「ジェシカ・・・。」

 しばらくするとうめき声をあげてジェシカが目を開いた。

「ジェシカ!」

 クリスが嬉しそうにジェシカを抱き締めた。


「クリス!」

 彼女もクリスを抱き締め返した。

 熱い雰囲気にクリスが彼女にキスしようとするとガバッと起き上がった彼女にクリスは頭突きを食らった。


 イテェッー


「メリル様ぁ!」

 呼ばれたメリルが大慌ててジェシカの傍に行った。

「大丈夫、ジェシカ?」

「どこかケガしましたか、メリル様?」

「いいえ。ジェシカのお蔭でかすり傷一つないわ。」


「メリル様?」

「でもジェシカの翼が・・・。」

 泣き始めたメリルにジェシカが羽を広げると自慢げに声を上げた。


「メリル様とお揃いですね。」

 ジェシカの笑顔を見てメリルは泣きながら頷いた。


「確かにそうね。でももうこんな無茶はしないで。」

 メリルに抱き締められながらジェシカは頷いた。


 熱い抱擁を交わす二人の横でクリスが”俺だって片翼でお揃いなのに”とブツブツと呟いていた。

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