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濡れ羽色に輝く片翼の戦士  作者: しゃもん
第二章 下界
31/40

31.なぞ

 知らせを受けてメリルとジェシカは国境沿いの砦に向かった。

 首都からはかなり離れているため馬で早駆けしても三日はかかってしまう。

 本当は王都で所有している飛龍で辺境まで行ければいいのだが、なぜかメリルもジェシカも飛龍に近づこうとすると怯えられてしまい、彼らの背に乗ることは出来なかった。

 もっとも二人が今乗っている馬も数百頭以上の馬を試して、やっと二人に怯えないというある意味希少種をやっと探し出したものだった。


「副将軍そろそろ馬が持ちません。」

 後ろを走っていた砦の一番隊隊長が部下を気にしながら進言してきた。


 ジェシカはチラッと後方を見ると先頭を走っているメリルに声をかけた。

「メリル様どうしますか?」


 メリルは前方を見て少し速度を落としジェシカと並走すると後方を走っていた一番隊隊長に告げた。

「次の峠を越えた所で一旦野営する。」

 一番隊隊長は頷くと少しスピードを落として後方にいる部下に告げに行った。


「いいんですかメリル様?」

 いつものメリル様ならもう一・二時間は進軍するとおっしゃるはずなのになんで今日は?

 不思議に思ってメリルを見ると曖昧な顔で急に予想外の事を訊かれた。

「ジェシカなんだか嫌な感じがしないか?」

「嫌な感じですか?」

 ジェシカはメリルがさっき見ていたように前方に意識を集中するが特に何も感じなかった。

「いえ。何も感じません。」

 メリルはジェシカの言葉にもう一度前方を注視した所で先程自分が言った野営場所に着いた。

 二人は馬の速度を緩めて平坦な場所に止まると馬を降りた。

 しばらくすると後方から砦の隊員たちが到着して野営の準備が始まった。

「メリル様。気になるようなら斥候を出しましょうか?」

 ジェシカの提案にメリルは少し考えてから近づいてきた一番隊隊長に明日、日が昇ったら斥候を出すように命令した。

「畏まりました。」

 結局その日は隊員の疲労も考慮して早々と休むことにした。


 メリルは部下が組み立てた簡易テントで横になりながら先程感じた嫌な気配について思いを巡らしていた。

 同じような嫌な気配を以前どこかで感じたことがあるはずなのにどうしても思い出せなかった。

 ふと隣を見ると反対側には毛布に包まれたジェシカが眠っていた。


 いくら考えてわからないものはわからないか。

 メリルも諦めて毛布を被ると休むことにした。


 翌朝。

 ジェシカはメリルより先に起きると一番隊隊長を呼び斥候を出したかどうかをすぐに確認した。

 一番隊隊長は朝一番で自分の隊で一番乗馬が上手いものを2名、先程斥候に出したと言ってきた。

「そうか。わかった。」

 ジェシカは二人が国境の砦に向けすでに出発したのが確認できるとメリルを起こすためテントに向かった。

 テントに行くとすでに彼女は起き出していて身なりを整え、ちょうどジェシカの方に歩いて来るところだった。

「メリル様。もう少し休まれていては?」

「大丈夫だ。それより朝食にしよう。まだ食べていないだろ?」

「そうですね。行きましょう。」

 二人は煙が立っている場所に向かって一緒に歩き出した。


「メリル様。今日の出発はどうしますか?」

「そうだな。戦闘前だから早めに次の野営場所に行って、十分休憩を取ってから国境沿いの砦に向かおう。こちらが国境に向かえば斥候に行った者たちにも早く合流できるだろうしな。」

「気がつかれていたんですか。」

 ジェシカはメリルを起こしてしまったのかと慌てていた。

「少し眠りが浅かったのでな。」

 ジェシカが心配そうにメリルを見ていると彼女お腹が鳴り出した。

「早く行こう。」

「そうですね一番隊隊長に食べ尽くされる前に行きましょう。」

 二人は顔を見合わせて笑うと食事にありつくためどちらともなく速足で向かった。


 二人が朝食の準備をしている場所につくとすでに一番隊隊長が大きな背中をこちらに向け座っていた。

 彼の手元の御椀を見るとまだ何もよそられていなかった。

 将軍と副将軍が一番隊隊長の前に座ると給仕の若い兵士がスッと御椀に芋粥をよそると二人に渡した。

「おい。なんで後からきた二人に渡すんだ。俺の分を先によそえ。」

 一番隊隊長は御椀を若い兵士に突き付けた。

「隊長それを言うなら普通自分の上司を先によそえって言うんじゃないですか?」

「馬鹿かお前は!食事は身分に関わらず先に座ったものから食べるんだ。」

 若い兵士は呆れ顔で隊長が出した御椀に大盛りの芋粥をよそった。


 メリルは面白そうにその光景を見ながらよそられた芋粥を喉に流し込んだ。


 一時間後。

 メリルたちはテントを片付けると次の野営場所に向け出発した。

 速度は緩めず昨日と同じ速さで進軍したため、昼過ぎには国境近くにある村に到着した。


 メリルは村の外にテントを張るように命令すると一番隊隊長を連れて村に入った。

 ここ最近は王都で引っ張り回されてばかりでここには大分来てなかったなと、そんな事を考えながら村に足を踏み入れた。

 しかし彼女が村に入っても周囲には誰も来なかった。

 そこは異様な静けさに包まれていた。


 メリルは隣にいた一番隊隊長を見た。

「探しましょう将軍。」


 二人は頷き合うとそこで二手に別れて村の住人を捜すことにした。


「ワイド。一時間後には何も見つからなくてもここに戻れ。」

 一番隊隊長は大きく頷くと二人はそこで別れた。


 メリルは前回来た村長の家に向かった。

 どこの村でもそうだが何かあれば皆村長のところに集まるはずだ。

 ならこの奇妙な現象もそこに行けば解明できるかもしれない。


 メリルは村の中を駆け抜けて村長の家の前に立った。

 念のため抜刀すると魔法障壁を張って家の中に入った。

 そこは綺麗に片付けられていて何かに襲われたような状態ではなかった。

 それでも戦闘になった時のことも考えて土足で部屋に上がると次々に部屋の扉を開けた。


 やはり何もない。

 誰一人気配さえも感じないなど異常すぎる。

 一体何があったんだ。


 メリルは村長の村を出ると周囲の家を確認しながら待ち合わせ場所に向かった。

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