25.事件
四人が食堂に入って行くとザワザワと話していた兵士たちが一斉に二人に視線を向けるとシーンとなった。
サラとディーンはそんな周囲を無視すると厨房にいたおばちゃんに四人分の食事を頼んだ。
「あらまぁ。めずらしいわね。サラのところに新人が入るなんて。何十年ぶりかしら?」
厨房にいたおばちゃんが大盛りご飯をよそりながらサラに話しかけた。
「そんなことはないわよ。ディーンが入ったの5年前よ。」
サラがすかさず訂正を入れた。
「アラそうだったかしら。」
厨房のおばちゃんがにっこり笑いながら四人分の料理を盛るとそこに置いた。
「「ありがとう。」」
ヒューとクリスの二人はサッと厨房のおばちゃんのふっくらした手を取るとお礼のキスをした。
厨房のおばちゃんの顔が見る間に真っ赤に染まった。
「な・・・な・・・なんて・・・うれしいぃーーー。」
厨房のおばちゃんはちょっと待っててと一言呟くと奥に消えた。
そして、すぐに戻ってきたかと思うと霜がきれいにのった肉を二皿二人に差し出した。
「これ今朝仕入れたばかりの新鮮な高級牛よ。入隊祝いよ。食べて頂戴!」
二人は同時ににっこりと笑った。
「もうダメぇー。」
厨房のおばちゃんはトマトより真っ赤になりながら床に蹲った。
なんてやつら(だ)!
サラとディーンは彼らのキラースマイルに殺られた厨房のおばちゃんを憐れみながら二人を席に促した。
これ以上、二人をここに置いておくと他の厨房のおばちゃんが犠牲になりそうだ。
二人はサラとディーンに促されるまま席に向かった。
ちょうど中央の席が空いていたので四人はそこに座った。
サラとディーンの前には自分たちの皿より一品多く盛られた料理があった。
思わずなんか理不尽な思いに駆られる。
そんな彼らの心理をまったく無視するように二人は席につくとすぐに食べ始めた。
まずは最初に新鮮な高級牛が二人の腹の中に消えた。
そして躊躇することなく、二人は次々に食べていく。
ただ唖然とみていた二人にヒューが声をかけた。
「食べないのか?」
「いえ、食べます。」
ディーンは慌ててフォークを持つと肉に突き刺して食べ始めた。
サラもナイフとフォークを手に肉を食べながら、さきほどから気になっていたことを二人に質問した。
「ネエあなたたち。ここに来る前はどこかの軍隊にいたんじゃない?」
「ええ。ここではありませんが砂漠のずっと向こうでは軍に所属していましたよ。でも料理はここの方がずっと美味しいですね。」
クリスはそう言うとこっちを見ていた厨房のおばちゃんに投げキッスをした。
それを見た厨房のおばちゃんの何人かが倒れた。
サラがクリスの行動を見て、深い溜息をつきながら冷めた笑顔でその行動を注意した。
「それ、わざとかしら?」
「何が?」
なにも気がついていないクリスの反応にサラは頭痛を覚えた。
そこにドタドタと複数の足音が聞こえてきた。
「なにかあったんでしょうか?」
ディーンが入り口の方に視線を投げた。
「そうね。いつもと違って騒がしいわね。何かしら?」
サラも扉の方に視線を向けた。
そこに大声を上げながら若い兵士が食堂に駆け込んできた。
どうやらだれかを探しているようだ。
「あらキートンじゃない。」
サラの声に食堂に飛び込んできた茶髪の若い男が振り向くと走って彼らが食事をしている場所に突進してきた。
「サラ・た・・たい・・・隊長・・・大変なんです。」
息も切れ切れでまともに会話もできないようだ。
クリスが気を利かして、その子に水が入ったグラスを差し出した。
「しょ・・・将軍と副将軍が敵の部隊に捕まったそうです。」
「「なんだと!」」
やっと話せてホッとしたキートンの襟首をグイッと掴むとヒューが怖い顔で迫った。
「間違いないのかデマじゃあないのか?」
ヒューの勢いに飲まれながらキートンは消え入りそうな声でつぶやいた。
「お・・・お願い・・・です。離して・・・くだ・・・さい。はなし・・・。」
キートンが真っ青な顔で襟首を締め上げているヒューの手を放そうともがいた。
サラが見かねてヒューの肩を叩いた。
「ああ・・・すまん。」
ヒューはそういうとキートンの襟首を掴んでいた手を離した。
「ま・・・間違いないです。砦の隊長あてに連絡が来ていますし、王宮にも身代金の請求がありました。」
それを聞いたサラは立ち上がった。
「ついてきて。」
三人とここに知らせに来たキートンも全員サラの後に続いた。
なんでメリル(ジェシカ)が捕まるんだ?
そんな強力な魔力を使える人間なんか地上にいるのか?
二人は前を歩いている三人について行きながら目線を交わした。
いったいメリル(ジェシカ)の身に何が起こったんだ。




