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濡れ羽色に輝く片翼の戦士  作者: しゃもん
第二章 下界
18/40

18.王宮舞踏会

 メリルは王宮の舞踏会に来ていた。

 傍らにはドレスアップしたジェシカもいる。

 二人が連れだって会場に現れると周囲が騒めき出した。


「見まして将軍と副将軍ですわ。なんで将軍がこんなところにいるのかしら。」

 ヒラヒラした真っ赤な扇を手に持った中年の女性が隣の夫人に耳打ちした。

「まあ伯爵夫人。いいんじゃありません。たまには毛色の変わったものを見るのも珍しくってよ。」

 こちらは紫の扇にでっぷりした体をゆさゆさと揺らしながら小声で囁いた。

「まあさすが公爵夫人。いいことをいいますわね。」

 会場のあちこちから二人をうわべで歓迎する声とは裏腹に非難する陰口が聞こえてくる。


 メリルは扇を口に当て周囲にわからない様に溜息をつくと自分の副官に呟いた。

「まだ帰っちゃダメか、ジェシカ?」

「ここにいたくない気持ちはよーくわかりますが流石に着いた途端は不味いですよ。」

 ジェシカは細身のマーメイドラインのドレスに引き締まった体とドーンとした巨乳を周囲に誇示しながら答えた。

「そうだな。すぐには無理か。仕方ない。宮廷夫人が手を付けない料理を一通り食べてから退散するか。」

 メリルも細身の髪色と合わせた黒のドレスを引き締まった体に纏って隣を通った使用人から強いカクテルを貰うと水のように飲み干した。

「そうですね。ですがまずは料理よりも一応招待いただいた陛下に挨拶してから退散しましょうか。」

「来ているのか陛下は?」

「残念ながらまだなようですね。」

「なんだって、王宮のそれも舞踏会に呼びつけているのにか。あれか。この間王家の食事会を断った腹いせか?それとも王妃殿下と仲良く乗馬に行った仕返しか?」

 メリルは二杯目を手に今度は味わうように飲んだ。

「どちらもあるんじゃないですか。かなりその二件についてはブツブツ言ってましたから」

「心の狭い王だな。」

 二人が周囲に聞こえない様にしゃべっていると第一王子のテイタムと王宮魔術師長のビーンが周囲に黄色い声をまき散らしながらこちらにやって来た。


「やばいな。あれに捕まるとこちらの被害が甚大だ。逃げようジェシカ。」

「そうしたいところですがもう手遅れなようです。退路を防がれました。」

 見ると黄色い声援を受けながら確実に人込みを広げてこちらが会場の外に逃げられない様に用意周到に周囲を封鎖しながらこちらに近づいてきた。


「くそっ計られたようだな。」

「申し訳ありません、メリル様。」

「お前のせいではないから気にするな。」

 メリルは諦め顔で近づいてくる最重要危険人物を見ていると舞踏会会場に突然轟音と共に悲鳴が上がりガラスの破片が周囲に飛び散った。


 ジェシカがメリルを庇うように前に出る。

 メリルもドレスに隠していた短剣を抜いた。


 今まで周囲にいた貴族が避難した為か窓際には人っ子一人いなかった。

 二人は悲鳴が上がった窓側に視線を流すとそこには息絶えた竜と血みどろの兵士がいた。


 慌ててメリルがその兵士に近づいた。

「大丈夫か?」

 メリルが兵士を抱き上げると同時に横にいたジェシカに目配せした。

 ジェシカもすぐに兵士の傷を見てメリルに目配せすると首を横に振る。


「どうした。何があった?」

「隣国が攻めてきて砦も落とされました。」

 若い兵士はメリルの耳元でそう呟くとガクリと力尽きてその場に頽れた。


「よく知らせてくれた。」

 メリルは目を見開いたままの兵士の瞼を右手でそっと閉じさせるとドレスの上に羽織っていたシルクをそっと外して彼の顔にかけた。


「おいそこの衛兵。彼を丁重に運んでくれ。」

 王宮の舞踏会で警備をしていたものを呼び寄せそう命じると、二人は血みどろのドレスのままその場を立ち上がり会場の出口に向かった。


 途中、この成り行きを黙って見ていたテイタム王子とビーン王宮魔術師長である二人の前を通る時だけ彼女たち二人は宮廷式の礼をするとそのまま舞踏会の会場を後にした。


 血みどろのドレスを着ているせいか出口に行くまで誰も二人に近づくものはいなかった。

 それどころか人垣がきれいに割れてすぐに会場を後にした。

 二人は会場を出ると通路を真っ直に進んで王宮にある近衛隊の詰所に向かった。


「どう思いますかメリル様?」

 憂鬱そうに隣を歩くメリルに話かけた。

「今のところは何とも言えないな。ウソかも知れないし本当かも知れん。現場に行くしかあるまい。」

「そうですね。」

 二人としては王宮の舞踏会会場を抜け出せて良かったはずなんだが、なんとも言えない気持ちで詰所に向かった。

 詰所に着くとそこにはすでに情報が上がっていたらしく近衛隊の隊長が二人を待っていた。

「情報は届いているか?」

「いえ、まだ何も。」

「すぐに馬を回してくれ。用意出来次第国境の砦に向かう。」

「畏まりました。」

 その夜遅くに二人は王宮から真っ直ぐに王都守備隊の主要メンバーを率いて国境の砦に向かった。

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