16.巷のうわさ
「その将軍と副将軍とはどんな人物なんだ?」
天空でも食べたことがない料理に興味を惹かれて、ヒューは酒を片手に商人のリーダーに話を振った。
「そうですね。俺達商人が聞いた噂だと将軍は小柄でこの辺りの人間じゃ珍しい漆黒の髪をお持ちだそうです。でも剣の腕はすごいそうで神懸ってるってもっぱらの評判ですよ。」
隊商のリーダーは酒を片手に陽気に話し出した。
「そうそう将軍っていえば副将軍もすごいんですよ。将軍とは正反対で結構大柄で、でも剣技は繊細だってもっぱらの噂でさぁ。」
他の商人も話に加わってきた。
「ほう。それはぜひ実際に顔を見てみたいね。」
クリスのリクエストに商人が立ち上がって積んであった荷物をガサゴソと掻き回すと何かのカードを出してきた。
「ここに将軍と副将軍の絵姿がありますよ。」
そう言って二人に見せてくれた。
「メリル!」
「ジェシカ!」
二人は思わず同時に叫んでいた。
「どうかしたんですか?」
二人がいきなり叫んだのでカードを見せた男が訝しげに問いかけてきた。
「「いやなんでもない。」」
二人は大きく息を吐き出すと心の中で同じ言葉を自分に言い聞かせた。
落ち着け俺。
「そのー良かったらそれを買わせてくれないか?」
ヒューが商人が見せてくれたカードを手に切り出した。
「へっこんなんでいいんですか。ならそれ子供用のおもちゃなんでどうぞ持って行って下さい。」
「「子供用のおもちゃ?」」
二人は同時にそのカードを見せてくれた男に問いかけていた。
「はい。」
男はそう言うとカードを広げて絵柄がある人物の説明を始めた。
「これはこっちの国で流行っている”カード遊び”っていうもので結構現実に即したものなんですよ。一番強いカードが将軍の絵柄で次が副将軍。そしてこっちの王子の絵柄が将軍と一緒に並ぶと威力が二倍になるんですよ。もちろん副将軍もこっちの魔術師長の絵柄と並ぶと威力が二倍になります。でっこうやっていろんな絵柄を集めてカードを出し合って遊ぶものなんです。」
商人の男は懇切丁寧に説明してくれた。
「なるほどルールは理解したがなんで王が将軍と一緒に並ぶと威力が二倍になるんだ。」
何の気なしにヒューが商人の男に話しかけた。
「たぶん王子が将軍に結婚を申し込んでいるからだと思いますよ。」
商人の男も別段気にしないで噂話を聞かせた。
「結婚だと!」
ヒューの顔がこわばった。
クリスは気の毒そうにヒューを見た。
その後、商人のリーダーの次の発言で他人事がわが身に降りかかってきた。
「そうそう魔術師長も副将軍に求婚してるっていうのが二人の絵柄が二倍になる理由だそうです。」
「ジェシカに求婚だと。」
クリスは怒りのあまり持っていたカップを握りしめてヒビを入れてしまった。
翌朝。
昨日の砂嵐がうそのように晴れ渡った砂漠を荷馬車を引いた商人たちと王都を目指した。
しかし二人の心には昨晩聞いた商人の話が渦を巻いていた。
取り敢えずメリル(ジェシカ)を捜すぞ。
ヒューの目線にクリスも頷いた。
そうしましょう。
そして見つけたら思い知らせてやる。
二人は同時にそう考えてニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。




