11.下界
次の日。
ヒューとクリスは下界で生活していく上でのもろもろの荷物を詰めた袋を持って、リチャードと彼が率いる近衛兵たちの前に現れた。
「忘れ物はないか?二人とも。」
「「ない(ありません)。」」
二人の返事を聞いて飛び立とうとした瞬間、王宮からアン女王が飛んで来た。
「待ちなさいリチャード。何をしているの!」
険しい顔をしたアン女王がそこにいた。
「何をと申されましても翼をもたぬ者の護送です。」
「何を馬鹿なことを言っているの!ヒューは白竜を倒した英雄なのよ。なのに犯罪者の様に下界に追放なんておかしいでしょう。」
「ですが法は法です。翼をもたぬ者は翼の国より追放する。これは破ってはいけない女王が自ら定めた法です。」
「それは・・・でも・・・でも・・・ヒューは英雄なのよ。」
アン女王は唇を噛みしめながらリチャードに迫った。
「私が白竜を倒して英雄になるなら、黒龍を倒したメリルも英雄なので翼の国に戻せるのでしょうか?」
ヒューの問いかけにアン女王は口を噤んだ。
「それが出来ないのなら私は犯罪者で結構です。メリルがいる下界に行きます。」
「ヒュー。」
アン女王はそれっきり彼を睨み付けるように見るだけで動かなかった。
リチャードは話の決着がついたようなので目で自分の部下に合図すると、ヒューとクリスを連れて下界に向かった。
「よく我慢したな、ヒュー。」
リチャードはヒューが今にも女王に殴りかかろうとしていたのを拳を握りしめて我慢していたのに気づいていたようだ。
「殴って下界に降りるのが遅くなれば、メリルに会うのも遅くなるからな。」
「そうか。」
リチャードは顔を下界にいる恋人を捜そうと無意識で目を細めているヒューに向けた。
「早く会えるといいな。」
ヒューの体を抱えて茶色の翼で飛びながらリチャードはちょっと陰った茶色の瞳で呟いた。
「すぐに探し出すさ。」
ヒューはそう言いきった。
「当然。」
クリスも横で近衛隊の副隊長に抱えられながら会話に加わるとこちらも無意識に恋人の姿を捜して下界に目を凝らしていた。
しばらく下降するとメリルたちを下した時の村に着いた。
「ここがメリルたちを下界に送った時の場所だ。」
「助かったよ、リチャード。」
ヒューは従兄から離れると荷物を詰めた袋を彼の部下から受け取って歩き出した。
「大したことはしていないよ。それよりこれを渡しておく、宰相からだ。」
リチャードはヒューに手紙とお金が入った袋を渡した。
「父から?」
ヒューは訝しげな顔でそれを受け取った。
「ああ、まあ落ち着いたら読めよ。じゃ俺達はもう行く。」
「リチャード。」
「なんだ?」
「いろいろありがとう。父には・・・何も言わなくていい。」
リチャードは少し笑うと
「わかった。俺の方から宜しく言ってやるよ。」
リチャードは飛び上がりながらそう言うと、近衛兵の部下を連れて天空に戻っていった。




