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8歩進んで計画




「あー、もう描けない!」




持っている羽ペンを灰色の紙の上に投げ出す。

はい、癇癪です。癇癪起こしてなにが悪い!


絵が上手く描けなくなってる。

その事に気づいたのは随分前、することがなくてファイの家で絵を描いた時だ。

小さい手で慣れない羽ペンを握った。

絵は壊滅的なぐらいヘタになってた。歪なラインを描く幼児の絵。


私の唯一の特技が無くなった…!

私から絵を描くことを取ったら何も残んないって!

どこ行った私のアイデンティティー。


ショック過ぎて泣き出しちゃったんですよね。

急に泣き出してファイを困らせたことはとても悪かったと思ってる。眉毛を八の字にして右往左往するファイは可愛かったよ!

どんな奴でも幼少期は天使だよ。



また、あの頃の絵を描けるようになるためにひたすら何もしない1人の時間はこうして絵を練習してる。




「今日はやーめたっ!」




こういう時は諦めが肝心なのだ。


羽ペン用のインクの蓋を閉じて薄いピンク色のシーツが張ってある自分のベッドに転がった。

窓から広がる昼間の空と活気のある声が聞こえる。





そういえば、私は魔獣についてもこの世界についても知らないことが多いな。


正確に言うと知ろうとはしなかった。

自分のことでいっぱいでこの世界のことに興味が持てなかったんだよね。

中身はいい大人なのになんてこった。


魔獣の存在だってこないだファイに聞いてやっと認識した。

まだ、魔法は見てないからピンとこないけど。



でだ、そろそろこの世界に馴染んできた頃だし色んなことに目を向けてみようじゃないか!

悪友が作ったストーリーも気になるけど何よりこの世界を楽しみたい。


魔法なんてまるでおとぎ話だ。

どんな魔法が使えるのかワクワクする。

あ、でも魔獣が居ないと使えないってファイが言ってたっけ?

私が思ってる魔法とこの世界の魔法は大分違うかもしれない。



この世界の知識が無さすぎる。

調べようにもパソコンや通信機器なんて便利なものはこの世界にはないしなぁ。

やっぱりベタに本を読んで知識を養うのが一番いいのか。幸いこの世界の字は日本語だ。


本買って貰おうかな…でもなぁ…



両親は子供にとても甘い。それはもうケーキに蜂蜜をこれでもかと掛けたような甘さ。

だから大抵のものはねだれば買ってくれる。

最初のうちはラッキー!とか思ったけど、よく考えると幼女補正がついてるから良いものを中身が大人じゃ両親にねだって買って貰う親離れ出来ない駄目人間だよ。


何か恩返し出来ればいいんだけど。




「その前にこの引きこもりニートのような生活をどうにかするべきだよね…」




外に行くって言っても事故のせいでまだ1人で遊びに行ったりさせてもらえない。

ファイと遊ぶのでさえ室内を余儀なくされる。


これでは世間知らずの女の子になってしまう。

どこぞの国のお姫様ってか、似合わねぇよ!

外で元気に遊ぶ普通の子になろうよ!


それだけではなく、シュイナール学園に入るまで友達はファイだけっていう可能性がある。

なにそれ嫌すぎる。


ファイが嫌いなわけじゃないよ。イタズラ好きでやっかいなとこもあるけど私の唯一の友達なんだから。


将来ファイは攻略キャラを勤めるぐらい甘い顔のイケメンになる。

学園に入れば周りはほっておかないでしょ。

ファイのことを好きになる奴だって現れるはず!

何て言ったてファイを描いたのは私だ、断言できる。


それは別にいいんだけどこの世界は乙ゲーなんだよ。モノにもよるけど王道ゲームは主人公に死亡フラグが立つのは当たり前。

イベントを起こすためにクラスメートが犠牲になんてよくある話なんですよ。


皆さんもある可能性にお気づきでしょう。

ゲームの中のキャラである私に降りかかってくるかもしれないんですよ。

ストーリーを知らないからあくまで可能性だけど。

悪友のストーリーもっとちゃんと聞いておけばよかった!

後悔先に立たずとはこの事なんだね。


しかも、ストーリー始まる前にファンにフルぼっことかありえそうだよね…




うー、と枕にボスっと顔を埋める。




簡単な話、死にたくなきゃ私がシュイナール学園に入らなきゃいい話なんだけどせっかくこの世界に居るのに勿体無いんだよね。

危険を避けて楽しみ逃すより少しの危険でもアタックして楽しみたいっていう欲望があるんだよ。


死ぬ気はないけどね!


そこで打開案、せめてファイ以外の友達を作ろう。



四面楚歌だからツラいわけでみんなから頼れる人気者になればフルぼっこなんてないでしょ!

っていう安易な考えです。




これからの目標は3つだ。


1つ目、魔法について知ること。


2つ目、ファイ以外の友達を作ること。


3つ目、両親に恩返しすること。







「名付けて、駄目人間脱却計画始動じゃ!」



何の変鉄もない木目の天井に拳を突き上げた。








「メノウ、こっちにフランスパン持って来てくれるか」


「はーい」



お店から指示された通りフランスパンのカゴを抱えて急ぎつつ転けないように歩く。商品の入れ替えですね。

あ~いいにおい、朝ごはん食べたのにお腹空いちゃうなぁ。



お家のお手伝いをしとります。もうかれこれ3ヶ月やってる。




え?駄目人間脱却計画はどうなったかって?


1つ目の目標達成には本当は本でも何でも読み漁るべきなんだろうけど、よく考えたら4歳の子供が難しい本を読むわけがないことにきづいちゃってんだよね。

これだと周りの大人に怪しまれてしまう。

エリートな子供を紹介するの番組に出れちゃうよ。

テレビなんてこの世界にはないんだけどね!


2つ目の目標達成に友達を作りるために両親に内緒で遊びに行こうと思ったけど1人だと心細くて結局実行出来てない。

ヘタレなのは自覚してるよ。

だけどさ、この世界って1人で歩くには治安わるいんだって。

だが、打開策はあるから安心してくれたまえ。



挫折に挫折を迎えた結果、親孝行してます。

3つ目の目標は達成したよ、ヤッタネ。

っていうか、これしかすることがありません!


もう、残りの2つは気長に達成するしかない。

長期戦は苦手なんだよなぁ。

私って諦め早いんだよな。でも、ここはグッと我慢我慢。



工房に入るとパンを作る作業に没頭しているパパの姿があった。

小麦粉特有の匂いが立ち込める工房は1人で作業するにはとても広い。




「はい、どうぞ!」


「ありがと、じゃあ、棚に置いといてくれるか」




言われた通りに木製の棚にフランスパンのカゴを置いた。



前にも言った通り私の家はパン屋さんをしている。

だから朝食に出てくるパンはいつも美味しいんだよね。

けして、贔屓目じゃない。

私の家のパン屋さんはシュイナール学園の近く。

シュイナールの生徒さんも去るとこながらシュイナール学園に用がある人など様々な人が行き交う。


ちなみに構えてるところはシュイナール学園の正面玄関の大通りだ。必然的にお店が多くなる。


つまり私の家はお店の激戦区である。

パンを朝早くに起きて焼かなきゃいけないし多くのお客さんをさばくのも大変。

おかげで毎日が忙しいけどやりがいのあるものになってる。

まだ、4歳だからさせてもらえることは少ないんだけどね。




「これ、ママに渡して来てくれ」


「はーい」




パパからクッキーが入ったバスケットを貰う。

お昼過ぎはクッキーとかおやつもパンと一緒に購入されることが多いからだ。


工房でパンを作るのはパパ、お客さんをさばくのがママと今日は休みだがお手伝いさんで分担して仕事をやっている。

たくさんのお客さんが来るのにたった3人でお店を切り盛りできてるのが不思議でしかない。

今まで怠けていた分働きます!力に慣れたらいいなぁ。



カランコロンと店のドアのベルがなった。

あ、お客さんじゃないか。


渡されたバスケットを落とさないように工房を抜けて走る。




「いらっしゃいませー!」





駄目人間脱却計画!

1つ目の目標クリア。

そのまま遂行せよ!!




お久し振りです(*´ω`*)


今回はファイが出せませんでした(´д`|||)

と言うか、全体的に絡みが少ない。


次回はファイでます!

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