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【書籍化&コミカライズ】リーフェの祝福  作者: クレハ
2章

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諸悪の根源

 結局その後、頬をつねったりくすぐったりしてみたがフィニーは何も喋らず、集合の声が聞こえた事で気が削がれてしまい、ただただユイが疲れただけだった。



 そのまま別室に移動し夕食を食べた後、各グループに二週間の間泊まる部屋の鍵を渡された。


 ユイを始めとした男女混合のグループの女子生徒からは、同じ部屋である事に難色を示す者が当然いたが、同じ部屋といっても、中にはさらに各自の個室があり鍵も掛けられるというので納得していた。



「………とは言っても同じ部屋である事には変わりないのに、随分すんなり納得してたよね」



 部屋への移動中、ユイは軽く疑問に思った事を口にした。


 同じグループになったといっても、初めて会う他校の生徒と組んでいる者もいた。

 一応お年頃の少年少女。

 特に貴族の女性は警戒心が高そうだと思うのだが。



「そりゃ、将来もかかったこの合宿で悪さする馬鹿はいないと思うからでしょ。

 もし何かあって問題になったら将来水の泡だからね」


「なるほど」


「それにこの合宿中には決めたグループ同士で対戦もあるから、誰にも聞かれない場所で安心して作戦会議ができるってのも大きいよ。

 その辺で話して作戦を聞かれたらどうしようもないからね」


「後、同じ部屋には学年の違うどこかのグループとも一緒だと言っていたからな、直ぐに助けが呼べる状況で自身の不利になるような事はしないだろ。」


「ふーん」



 自分で言い出しておきながらユイは全く関心が無さそうな返事が返ってくる。



 などと話し込んでいる内に部屋の前に到着。


 鍵を開け、次に扉を開ようとする一同に緊張が走る。


 部屋は普通と聞かされたが、ここまで来る道は相変わらずの恐怖を感じさせる

 造りで、誰もバーグの言葉を信用していなかった。



「あ……開けるよ?」



 誰かの息をのむ音を聞きながら勢い良くライルが扉を開けた。


 部屋を開けた瞬間、全員が感じたのは安堵。

 部屋は普通の白い壁紙に幾つかの家具が置かれた普通の部屋で、入って直ぐの一つの大きめの部屋にそれぞれの個室に繋がる扉があった。


 念の為各自の部屋も覗いてみるが、至って普通の部屋だった。


 ユイ達が一安心し胸をなで下ろした時、同室のグループの人が入って来て、ユイ達は動きを止めた。



「兄様っ?」


「おう」


「兄様達が同室の人?」


「そうだよ」



 駆け寄ってくるユイをカルロが軽く抱き上げ、ユイは兄と同室である事を喜んだが、列車でのカルロの鬼のような牽制が尾を引いていた男達は心からは喜べなかった。



「わあ、凄い偶然」



 無邪気に喜ぶユイに「そうだね」と優しい笑顔を向けるセシルだが、その真実をユイは知らない。


 男達と同室は心配だと、過保護を発揮したセシルはファンクラブの人間を使い、ユイと同室のグループの者を探し、圧力をかけ強制的に鍵を交換、そして何食わぬ顔でここにいるのだ。



「そう言えば他のグループの人は?」



 兄達以外に人の姿が見えない事を不思議に思ったユイが問い掛ける。



「俺達の他はフィリエルとルカとジークだよ」


「えっ!殿下もこちらの部屋にいらっしゃるのですか!?」



 頬を紅潮させ興奮するライル。

 他もライルのようにあからさまではないが、そわそわと落ち着きがない。

 相手が同じ学生とはいえ、至高の存在たる王族なのだからライル達の反応も致し方ないのだろう。



「いや、残念ながらフィリエルと後の二人は別室だよ、警護の問題があるからね」



 目に見えて残念がる一同だったが、ユイだけは違った。


 フィリエルの名が出た瞬間、僅かにユイの体に緊張が走り、別の部屋と聞くと緊張が解かれたのを、抱き上げていた為に敏感に感じ取れたカルロは苦笑を浮かべた。



 しばらくは談笑しながら過去の合宿の内容などをセシルとカルロが話をし、ユイ以外はこんな機会はないと喜びながら真剣に話を聞いていた。



「さて、明日も早いしそろそろ休もうか」


「ユイ、久しぶりに一緒に寝るか?」


「うん」


「よし、折角だからセシルのベッドも移動させて三人で寝よう!」



 カルロの提案で、全員でベッドの大移動が始まった。

 ベッドを運ぶのをただ見ていたユイは悪戯心が働き、運ぶベッドの上に飛び乗り、バランスを崩したイヴォに怒鳴られたりと大騒ぎ。

 そのせいでバーグが駆け付け、凶悪顔をさらに怖くさせながら怒られてしまった。




 ***




「疲れたー」



 大騒ぎした後にこってりバーグにお説教をされ、心身共に疲れ切って各々部屋に休みに行き、ユイも移動させたベッドの上に倒れ込む。



「いくら慣れてるとはいえ、あの凶悪顔で怒られると流石に怖いよな」


「夢に出そう……」


「なのに奥さんむちゃくちゃ可愛いんだぞ。

 あの凶悪顔で脅したんじゃないかって噂が出たけど、実際は奥さんの方が先に好きになったっんだってさ」


「学園七不思議の一つだよ」



 性格としてはバーグは確かに良い分類に入るだろう。

 だがしかし、笑えば何故か凶悪さを増し、街を歩けば自然と周りから距離を空けられ職務質問される事もしばしば。

 そんな相手と結婚は絶対無理だなと、ユイはかなり失礼な事を思った。



「……………ユイ、魔具が反応しているよ」



 少しうとうとと眠気を感じていた時セシルにそう言われ、寝る為に外していた通信用魔具を見ると、魔具が僅かに振動し淡い光を発していた。



「こんな時間に誰だろ」



 合宿に出掛ける時に、たった二週間だと言うのに今生の別れのように泣きながら見送られた光景が過ぎり、おそらくレイスだろうなと思いながら魔具を起動させる。 



『おおユイか?』


「……テオ爺様?」


「テオ爺?」



 予想と違う相手の名にセシルとカルロも反応しユイを窺う。

 ユイは二人にも聞こえるようにし、ベッドの上に魔具を置いた。



「いつの間にユイと連絡取るようになってたの、テオ爺」


「フィリエルが聞いたら怒られるぞ」


『おお、お前達も一緒か。

 すでにユイが魔具を買った当日に、悔しがるあやつの前で楽しくお喋り済みじゃ』



 さも楽しいと言わんばかりのテオドールの高笑いが部屋に響く。

 顔は見えなくともその声で、今どんな顔をしているかは容易く想像出来た。



「それよりテオ爺様、連絡してきたのはあの件の事?」


『そうじゃよ、例の件はきちんと手配しておいたから報告しておこうかと思ってのう。

 近衛の者には話をしておいたから、その日になったら話をすると良いぞ』


「うん、ありがとうテオ爺様」



 例の件という言葉で話を進めるユイとテオドールに、セシルとカルロは首を傾げお互いに知っているかと視線を合わせるが、共に何も分からない。



「例の件?」


「……どういう事、ユイ?」


「この前パパに誕生日のお願いしたって言ってたでしょう?

 その協力をテオ爺様に頼んだの、ちょうど王宮での一件のお礼をくれるって言うから。

 後は内緒」



 ユイはそれ以上教えるつもりはないようだ。



『その日になってからのお楽しみと言う事じゃな、ふぉふぉふぉ』


「凄く気になるんだけど」


「父さんだけでなく、テオ爺も協力してるって、かなりの事出来るだろ」



 頼んだのがユイなので、さほど難しい要求はしていないだろうが、魔王と恐れられる大国の宰相と未だ影響力劣らぬ先王。

 この二人の力を合わせれば相当な無理難題も解決出来るだろうから凄く恐ろしい。



 …………しかし、真に恐ろしいのは何の駆け引きもなく只の「お願い」で二人を動かしてしまうユイかもしれない。



『それはそうとお前達は今バーハルの軍の訓練所に来ておるのじゃろう。

 どうじゃ、楽しんでおるか?

 そこはわしの在位中に作った建物でな、普通の訓練所では面白くないからと色々工夫をこらした力作なんじゃよ。

 名付けて悪夢の要塞!

 当時の側近達もノリノリでの、皆普段の議会では見せない白熱した議論をしておったのう』



 ……………。



 まさかの惨劇の舞台を作った犯人が判明した。

 いったい何をやっているのかとツッコミを入れたくなる。

 しかも王だけでなく、それを止めるはずの側近までやる気満々とはどういう事なのか…………。




「なんて突っ込みどころ満載な。

 国の上層部がそれで、よく国が機能してたよ」


「テオ爺が諸悪の根源かよ!」


『諸悪の根源とはなんじゃ、失礼な。純粋な遊び心じゃ!』


「その遊び心のせいで他の生徒達だけじゃなく、ユイもすげぇ怖がってんぞ」


『なんじゃと!

 喜ぶと思ったのに…………。

 そんなに嫌じゃったか、ユイ?』


「うん、もう二度と来たくない」



 バッサリと切り捨てるユイ。

 テオドールの声はとたんに落ち込んだように暗くなる。


 本気で喜んでいると思っていたのだろうが、この要塞を喜ぶのは悪霊と犯罪者ぐらいのものだ。



『そんなに不評か………。

 当時の側近達の間では好評だったのじゃが………。

 それなら東部にあるスルベルの魔境の砦や、南部にあるカグッセンの灼熱地獄の塔や、西部にあるチェルシーのからくり仕掛けの屋敷とかの方が良かったかのう』


「他にもあるのか………」



 どういう場所かは分からないが、来年の合宿場所にはなりませんように………いや、そもそも二度と合宿には参加したくないとユイは激しく思った。



「どうして普通の訓練所にしないの!」


「後の事考えて作れよ!」



 学園を卒業したら軍に入る予定のセシルとカルロには切実な問題だった。

 軍の訓練所となれば後々確実に利用する事になるだろうからだ。



『まあ、若気の至りじゃ。何せ100年以上前の事じゃしのう』


「若気の至りで済ませんなよ」



 この世界での平均寿命は80歳前後だが、魔力の強い者はその影響を受け寿命も長くなる。

 魔力の強い者が多い王族、貴族では200歳前後。

 これもあくまでおよそであり、魔力が強ければそれだけ長く生きる。


 王族の中でも魔力の強いテオドールは250歳以上は生きるだろうと医師からもお墨付きをもらっている。


 テオドールの現在の年齢は183歳で、寿命から考えるとまだまだ現役といえ、それ故に退位の時には早すぎると反対者が多くいたのだ。



『まあ、施設の機能は確かじゃから大丈夫じゃ。

 それと庭園は自信作で、ユイが好きそうな所じゃから行ってみる価値はあるぞ』


「うん、行ってみる。ありがとうテオ爺様、色々と」


『なあに、あれぐらいのお願いなら軽いものじゃ。

 ではな、またゆっくり話そう』



 それぞれおやすみと言葉を掛け、通信を切る。



 そうして合宿初日はなんとか終了した。








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