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【書籍化&コミカライズ】リーフェの祝福  作者: クレハ
1章

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ユイの力

 試合を見ていたルエル達は冷ややかな視線を

 気絶して伸びているガーゼスに向けている。



「本当バカねあいつ、あの程度の実力でユイに喧嘩売るなんて」


「あんなに噛み付いて来てたのに口だけだったみたいだね」


「何で皆そんな落ち着いてるの!?

 ユイちゃんAクラスの人に勝ったんだよ!!」



 思い掛けない結果にマルクは混乱する。



「マルク落ち着けって」


「別に驚くような事じゃないわよ。

 マルクだってユイが大会で八強まで残ったって知ってるんでしょう?」


「でもあれは棄権したり具合が悪くなる人がいて、一度も戦ってないって……」


「よく考えてみなよ、そんな事普通有り得ないと思わない?」


「だったらどうして」



 マルクは頭を働かせるが疑問で頭がいっぱいになる。



「今見たじゃない、ユイってかなり強いのよ。

 私ユイが負けた所見たことないもの。

 大会の予選戦った時もほとんどの相手を開始数秒で沈めてたし」



「一部の間じゃ有名なんだ。

 だから、プライドだけは高い奴らが格下に見ていたリーフェに何も出来ないまま負けるなんて無様な姿を晒すぐらいなら、棄権して負ける方がマシだって棄権者が続出したんだよ」



 そのせいでユイが疑われる事になったのだが、幸い棄権した者達の情けないとも言える理由が発覚した為、事なきを得た。


 しかし、棄権者達はそんな情けない理由だったと表に出すことも出来ず、周囲には何も言わなかった結果、ガーゼスのような理由を知らないで言いがかりをつける者が出てきてしまったのだ。



 ルエル達の話に信じがたいが実際勝ったユイを信じざるを得なかった。

 しかし、マルクはそこでふと疑問に思う事があった。



「でも確かガーゼスって人の話じゃ準決勝の時にユイちゃんが逃げたとかって言ってたよね。

 強いんだったら逃げる必要ないよね、どうして?」


「………………」



 マルクの素朴な疑問にルエル達の間に微妙な雰囲気が漂う。



「えっ、聞いたらだめだった?」


「あーいや、そう言う訳じゃないんけど……」



 言いづらそうに目線をそらすゲインに変わってルエルが口を開く。 



「準決勝の試合って13時からだったのよ」


「えっうん、時間がどうかしたの?」


「あの子13時ってのを3時と勘違いしてのんびりケーキ食べに行っちゃって………。

 総出で探して見つけて連れ戻したけど、当然その時には準決勝どころか決勝も終わった後だったのよね」


「……………」



 会場の近くにはユイが前々から行きたいと思っていたカフェがあった。

 準決勝まで時間があると分かると嬉々として行ってしまったのだ。

 しかも場所も言わずたった一人で行ってしまった為、時間を訂正する者もおらず、ルエル達が探し回りユイを見つけた時には呑気に五個目のケーキを追加注文しているところだった。

 その時には既に試合で不戦敗となった後だった。


 敗戦の理由に沈黙が落ちる。

 ガーゼスが知ったら別の意味でさらに怒り狂いそうだ。



「ユイってどっか抜けてるんだよね」



 フィニーがぽつりと呟いた言葉に全員が静かに頷いた。




「おかえり、ユイ」


「ただいま」



 戻ってきたユイに皆良くやったと声を掛けていく。



「凄いねユイちゃん!」


「でもなんか呆気なさすぎたわね」


「僕みたいにじわじわいたぶって、プライドをズタズタにしたほうが良かったんじゃない?」


「お前のはやり過ぎだろ!」



 すかさずゲインが突っ込む。



「それも考えたけど、これはただの試合じゃなくて試験でしょ。

 なら何も行動出来なくて負けた方がダメージ大きいと思って」


「なるほど、試験を判断する材料がなかったら点も出せないからね。

 きっと彼の試験の判定は最低だろうね」



 フィニーはニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、ユイも上手くいったと満足そうな表情を浮かべる。



「ほんと頭の良い奴って嫌だ……」



 確実に人の嫌なとこを突く頭の良い友人二人にゲインは頭が痛くなる。






 ユイとフィニーの実力を間近で見たトラヴィスは信じられない気持ちで呟いた。



「おいおい、どうなってやがる。

 何であんな奴らが俺のクラスにいるんだよ」



 フィニーは期末の試験では他のAクラスを差し置き二番。

 ユイもカンニング疑惑の時にかなり頭が良い事が分かった。


 そして今回の実技試験、ユイとフィニーは無傷でAクラスの生徒を負かしている。



 ユイは魔法を使う時に詠唱破棄をしている。しかもトラヴィスには何の魔法を使ったかは分からなかった。


 魔法は、魔力を練り詠唱して放つ。方法は他にもあるが普通はその一連の作業で発動する。


 詠唱破棄は通常より短い詠唱または無言で発動出来るのだが極めて難しく、学園でも五年になって初めて教えられるもので、とても一年で使えるようなものじゃない。


 二人の実力はどう見てもAクラスでも余裕でやっていける、とてもHクラスで埋もれている人材ではない。





「ユイ、良くやったね」


「流石俺達の妹だ」



 セシルとカルロが近付きユイを褒める、そんな兄達にユイも嬉しそうに顔をほころばせた。



「残念だけど試験もそろそろ終わるから、俺達は戻る事にするよ」


「うん、見に来てくれてありがとう兄様」


「お前たちも、またな」


「はい」


「さようなら」



 セシルとカルロは別れを告げると自分達の所に戻っていった。




 その後、試験も無事全てを終えると全校生徒か講堂に集められ終業式を行い明日から夏休みに入る。



「やっと夏休みだぜ」


「明日からたっぷり遊ぶわよ!」


「でもユイは合同合宿があるから、その間は無理だけどね」


「そうだったわね。一緒に行けないのは残念だけど、ユイお土産よろしくね」


「うん、沢山買い物して食べてくる」



 ユイはこれから始まる夏休みに思いを馳せウキウキと心躍らせる。



 最初は乗り気ではなかった合宿だったがお菓子の街に、フィリエルもいるということでさらに楽しみが増えた。




 ***



 ドンドンドンドン




 王宮の奥、王族の部屋がある場所の人通りのない廊下に何度も扉を叩く音が響き渡る。




「フィル!開けて!お願いだからここを開けて!」



 エリザは叩き過ぎて痛くなる手など気にせず何度も扉を叩き続ける。




 しかし、扉の内から返答は何もなかった………。




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