疑惑
「それにしてもユイは今回いつもより点数高いわね、どうしたの?」
「本当だ、いつもは平均より少し上ぐらいなのに」
「今回最終日に熱出してたから意識が朦朧としてて、最後の方あんまり覚えてないの。
点数からして多分最終日のは満点に近いかも………」
「朦朧としてたのに点が高いの?」
熱で朦朧としてたら逆に点数が悪くなりそうなのにとマルクは不思議な顔をした。
「ああユイはテストは毎回平均より少し上ぐらい取るように調整してんだよ。
コイツこう見えて頭良いから」
「え?なんでそんなことするの?」
「面倒臭い」
普通試験となればほとんどの者がより良い点数を取ろうと必死になっているというのに何故という疑問は、ユイによってバッサリ切り捨てられた。
「こういう奴だよユイは………」
ゲインが呆れたように言った。
「だって、中等学校の時は良い成績取ったら、そのたびにリーフェのくせにとかって一々文句言ってくるのが沢山いたんだもん。
ああいう人達面倒臭いから、目立つことしたくない」
フィニーは何か考えるように難しい顔をする。
「そうなると少しまずいかなぁ」
「何がまずいの?」
ユイが首を傾げる。
「だって入学してからずっと平均ぐらいだったのに突然最終日だけ急に点数が良くなるなんて、先生もおかしいって思うでしょ?」
「「あっ!」」
「カンニングしたとか言われかねないわね」
フィニーの懸念に全員が思い至り声を上げた。
「で、でもその教科だけ得意とか頑張って勉強したって事にしたら…………」
「ユイは中間試験も入学試験も平均ぐらいにしてるから得意は通じないし、
今回の試験は中間試験より難しく作られてるんだよ。
いくら勉強したからってそんなに急に上がるものじゃないよ」
「ど、どうしよう」
まるで自分が当事者の事のように慌てているマルクに、ユイは思わず小さく吹き出した。
「何笑ってるの、あんたの事考えてくれてるんでしょ」
「うっ、ごめん」
ルエルにたしなめられ、ばつが悪そうにした。
するとその時、廊下の向こう側から担任のトラヴィスが歩いてきた。
「おーい、カーティスちょっと良いか?」
「…………」
「早速来たわね」
トラヴィスはどこか言いづらそうにしながら話す。
「これから少し話があるんだ、ちょっと着いてきてくれ」
「………はい、分かりました」
恐らく試験の事だろうと全員が思った。
「………ユイちゃん」
「大丈夫だから」
マルクは心配そうにするがユイは自身は全く気にした様子もなくいつも通りだ。
「はい、これ渡しとくよ」
「…………何?これ?」
「一応念のためだよ、こういう時は絶対あいつが出しゃばって来そうだからさ………。
これちゃんとスイッチ入れといてね。
僕の方に転送されるようにもなってて万が一でも安心だから」
フィニーは何か企んでいる黒い笑みを浮かべ、ユイにある物を渡す。
渡されたのは手のひらに納まるほどの小さな魔具。
それを見たユイはフィニーの考えが分かり、必要にならないことを願いながら頷いた。




