ラストール魔法学園
ユイの住むガーラント国は古い歴史があり、昔から強い魔術師を多く輩出している。
それにより魔法研究も盛んで、多くの魔具や魔武器が開発され、強大な軍事力を誇る。
軍事力だけに留まらず、国内の肥沃な大地から多くの農作物が取れ、他国へも輸出されている。
その為、近隣の国々の中でも強い力と発言力を持っている。
一昔前まではその強さ故、度々争いが行われていたが、先代の国王テオドールにより近隣諸国との間に和平がなされ、現国王ベルナルト治世においては平和そのものだ。
ガーラント国内には一般教育の学校はいくつか有るが、魔法を勉強するための学校は国内で三つしかない。
東にあるダイン、西にあるセレスト、そして王都にあるラストールで、ユイはラストールに通っている。
入学資格は中等学校卒業以上で試験を合格すれば入学出来、そこから五年間勉強する事になる。
ラストールでは試験などの評価で能力の優秀な順に、
A~Iとクラスが決められ、最も優秀な人材が揃っているAクラスでは卒業後、軍やギルド、教会など能力が優れた者しか入れない職業に就く者が多い。
その為、その職業に就くかは別として、貴族達は魔法学園を卒業する事をステータスと考え、多くの貴族や金持ちの子息や令嬢が通っている。
学園へと到着したユイは、もう入学して三ヶ月になり見慣れた学園を見渡し、その大きさにいつ見ても感心してしまう。
国内でも三つしかない魔法学園なだけあり、学生の数も多くA~Cは北棟、D~Fは東棟、G~Iは西棟と別々になっている。
東棟・西棟は普通の校舎なのだが、実力があり将来有望な人材が揃っている北棟の校舎は設備や食堂まで豪華な造りになっている。
幼い頃から英才教育をされている貴族の子供が多いからというのも一つの理由だが。
他に校舎だけでなく、講堂や模擬戦を行うコロシアム、魔法の授業や個人練習を行う施設など学園の敷地は広大だ。
それ故、入学したての者は広すぎる敷地に迷子になる者が続出し、最初の一ヶ月は教師が巡回するのが恒例になっている。
三ヶ月過ぎた今では迷うことなくユイは西館に入り、自分のクラスのHが書かれた教室に入る事が出来るのだが、広過ぎて校門からクラスまでが遠く辟易してしまう。
「おはよ~ユイ」
「おはよう、ルエルちゃん」
教室に入ると、ユイの友人ルエル・イーデンがいち早くユイに気付いた。
ルエルは髪を頭の上の方で一つに結んだ勝ち気そうな女の子。
「おう」
「おはよう」
ルエルの側には短髪でやんちゃな印象を受けるゲイン・クーレー、
真っ直ぐな髪でニコニコと人当たりの良さそうなフィニー・バルカスも一緒にいた。
魔法学園に入るまでに学校は初等学校・中等学校とあり、ルエル、ゲイン、フィニーの3人はユイとは中等学校時代からの付き合いだ。
その他にも周囲から挨拶する声が飛んできて、それぞれに返しながらユイは席に着いた。
Hクラスは下から二番目のクラスで優秀ではない分類に入るのだが、その分クラス内での団結力があり皆仲が良いのだ。