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途方にくれて

「本当だ。」

 その日時雨は忍んで朝市に出かけていた。

「広報なんて滅多に目を通さねぇからなぁ。まさか本当に資格剥奪とは。」

 当然その事実をすぐに飲み込むことなんてできるはずも無い。区とは大陸統制のこの国においても一つの国のようなものを成していた。そこを統制する神ともなれば、事実国王のようなもの。その資格を剥奪された上に国から永遠に追われる身など簡単に理解できるものではなかった。

「まいったなー。」

 骨付き肉を頬張りながら時雨はそう呟いた。

「まぁ、ここで狼狽うろたえててもしょうがねぇ。とりあえず歩いてみるか。」

 無理矢理身体を動かし時雨は歩き始めた。あてが無かった訳ではない。ただこの国いても危険に晒されるだけ。この国は大陸周辺の離島も含めて支配していた。ただそんな中でもこの大陸の近くに唯一支配されていない小国があった。大陸の最南部に位置する『れん』と呼ばれるその国は小規模ながらも一大陸であるこの『装燐そうりん』と対等の軍事力を有していた。

「久しぶりだな。錬に帰るのは。統一が進んでから帰るに帰られなかったもんな。」

 装輪で神をしながらも、生まれも育ちも錬。しかしながら決して亡命した訳ではない。装輪が大陸を統一を成し得るために錬に戦争をしかけたため対立状態が続いていたのである。休戦とはなったものの両国の交流は一切ない。故郷に帰ることができなかったのである。

 錬国へ向かい十里程歩いたところで時雨は衝撃の光景を目の当たりにした。

「なんだこりゃあ。」

 村であることは分かるが辺り一帯は遺体や死にそうな人ばかり。倒れていた女性を起こし時雨はすかさず尋ねる。

「大丈夫か。一体ここで何があった。」

「……」

 女性は何も答えない。

「何故答えぬ。一体ここで何があった。俺は第一の神、時雨透だ。訳あってこの村を訪れた。臆することはない。」

「……!?」

 戸惑いながらも女性は静かに口を開く。

「飢えで…ございます。辺りの者は皆…飢えで倒れて…おります。」

 途切れ途切れだがかすかに聴こえる。

「飢えだと。何故だ。このところはよく雨も降り、目立った飢饉もなかった。ないし田は無事ではないか。」

「そうでは…ございません。いくら作ろうと…税となるのでございます。」

「なるほどな。事情はよく分かった。もう一つ尋ねる。ここは第何区だ。」

「だ…い……な…な…」

「おいっ、しっかりしろ。おいっ。」

 言い終えることなく女性は息絶えた。

「ありがとな。よく頑張ってくれた。出会ったのも何かの縁。せめて供養しておこう。さて、第七区か。七といえば、あいつだな。」

 目的を変え時雨は第七区一等居住区を目指す。よく見ると腐りかけた遺体もある。

「相当長い間苦しめられたみたいだな。」

 しばらく歩き一等居住区に着いた。

「貴様どこの者だ。ここをどこと心得る。ここは我らが神邸なるぞ。」

 門番に尋ねられ時雨はこう答える。

「悪いが元とはいえ、神はお互いさまだ。俺は元第一の神、時雨透だ。空奈師くなしをだせ。俺はあいつに話を着けにきた。」

「ここで待て。今空奈師様に確認をとってくる。」

「急げ。俺は今猛烈に機嫌が悪いんだ。」

そう言い残し門番は建物の中へ入っていった。

「空奈師様の許可が下りた。ついてこい。」

「なんだ。敬語じゃねぇのかよ」

「図に乗るな。貴様はもう重罪人。通報しないだけでもありがたく思え。」

「なんだよそれ。」

 長く伸びる廊下を進み時雨は第七の神、空奈師美穂菜くなしみほなへと会いにいった。

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