異世界!?
今回から、異世界に入りまーす
side ユリウス
目の前には、私が呼び出してしまった二人が横たわっている。
「ど、どうしよう」
まさか本当に召喚できるなんて、思ってなかったわ。
「おいおい、ユリウス。お前が呼び出したのかよ、この二人」
後ろから声を掛けられた。
振り返ると、オルヴァ兄さんがいた。
「……」
そうだ、兄さんのせいで、この二人を呼び出してしまった。
そう、兄さんが悪いんだ。いっつもノックしてって言ってるのに。
ノックもせずに入ってきた兄さんが悪いんだ。
「ん?どうした?」
そう思うと、なんだかムカついてきた。
「アイスバウンド」
「ぶへらっっ!!」
とりあえず、兄さんには氷塊をぶつけておいた。
なんだか、すっきりした。
その時だった。
「まだ死にたくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
私は、驚きの声もあげれなかった。
side out
「まだ死にたくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
って、あれ?何処ココ?
本が山のようにあるんだけど……?
「書庫……?」
思いついたのは、映画とかに出てきた書庫だった。
あたりを見回すと、目の前にいた女の子と目があった。
その女の子は、綺麗な白髪と碧眼という、日本人とは思えない容姿をしていた。
「……」
「……」
お互いに見つめ合ったまま、言葉を発しなかった。
というより、どう声を掛けたらいいのか、わからない。
「……」
「……」
き、気まずいぞ。
と、とりあえずここが何処なのか聞こうではないか。
「あ、あの~」
「……」
あっれー、おかしいなー。
「あの~」
「……」
「……」
「……」
こうなったら、仕方ない。
「あのっ!」
「は、はいっ!?」
あ、よかった。無視されてた訳ではないようで。
「ココはどこ?」
「こ、こ、ここはっ、ラファイエ城です……」
「あの?」
「は、は、はい?な、なんでしょう?」
なんでしょうって言われても。
近くの本棚に半身隠していらっしゃるのは、何故でしょう?
「あぁ、いや。つーか、ラファイエ城?日本に、んなモンあったっけ?」
たしか、俺は静香と学校から帰っていたはずなんだけど……?
そういや、静香はどこ行った?
あたりを見回すと、俺の真後ろに倒れている静香がいた。
「静香?」
肩を揺すってみると、すぐに反応があった。
「はっ、三途の川が……」
「ダメッ!渡っちゃダメッ!それ渡ったら、死んじゃうから!!」
立ち上がってフラフラと歩き出したから、急いで止める。
「あれ?ナギ?どうしたの?っていうか何処ココ?」
「一気に質問すんなよ」
それより、今はあの本棚に隠れた女の子に話を聞かなければ。
「えーと、ちょっといいか?」
「は、はいぃ」
なんで泣きそうなんだよ。
「ここって日本?」
「に、ニホン、ですか?」
「ああ」
「に、ニホンっていうのが、な、なんなのかは、わ、わかりません。
けど、こ、ここは、フェルナですよ?」
フェルナ?なんだその横文字は。
静香も?マークを浮かべている。
「あ、あの……」
「ん?」
突然、どもりまくりの女の子が声を掛けてきた。
「あ、あああなた達を、私のせいで、その、呼び出してしまったんです!!すいません!!」
え?呼び出した?どういうことだ?
「なぁ、地図あるか?」
「えっ?」
「地図だよ、地図」
「は、はい」
そう言って、女の子は奥に小走りで消えていった。
そして、一分もせず、帰ってきた。
「ど、どうぞ」
「ん、サンキュ」
どれどれ。
「……」
やっぱり、見たこともない地図だった。
最近、友人が押し付けてきた本の内容が、ちょうど今の俺達と同じだった。
ちなみに、その本の内容は、異世界に呼び出されるって感じだった。
つまり。
今の俺たちは、この女の子に異世界とやらに呼び出されたのだろう。
「って、なに一人で納得してんだぁぁぁぁぁ!!!」
突然、今まで固まっていた静香が怒鳴りだした。
つか、なんで俺の心が読めんだよ。
「つまりなに?私達はこの子に呼び出されて、異世界に来たってこと?」
「そうじゃねーの?だって、ほら。地図が全然違うだろ」
「そうだけどっ!どうしてナギは落ち着いてられるのよ!?」
だって、そりゃねぇ。
「面白そうだからだな」
「はぁ!?」
「まぁ、落ち着けって。落ち着かないと、碌なことにならないぞ?」
「だーかーらー!落ち着こうにも落ち着けないっての!」
はぁ、もう放っておこう。
「でだな」
「ちょっと!?無視すんの!?」
「他にも幾つか聞きたいんだが?」
「ムキーッ!!」
しばらくして、静香は暴れ疲れたのか、今は落ち着いている。
その間に女の子に聞いてわかったことが幾つか。
この子の名前は「ユリウス・ラファイエ」であるとか。
フェルナっていうのは大陸の名前で、ここの地域は「ラファイエ」っていうとか。
この書庫があるのは「ラファイエ城」で、ユリウスはラファイエ城の王の娘であるとか。
後ろのほうで気絶しているのは、ユリウスの兄「オルヴァ・ラファイエ」であるとか。
ユリウスはいつもここで魔法の練習をしていて、その一環で俺達を召喚してしまったとか。
あと、俺がユリウスと話していて感じたことは、ユリウスが極度な人見知りであること。
まぁ、今では最初のように隠れることはなくなったが、まだ多少どもっている。
「はぁ、はぁ、疲れたわ」
「お疲れさん」
「まったく、ナギはお気楽すぎ」
「褒めんなよ」
「褒めてないよ!?」
さて、静香も復活したことだし、これからどうするか決めないとな。
「ねぇ、私達って元の世界に戻れるの?」
「そ、それは……」
「今のままではわからないってよ」
「えっ?」
そう、帰り方がわからないのだ。
あるにはあるんだろうが、なんせ、俺達を呼び出した魔法自体がかなり昔のものらしい。
「てことは、帰れないの?」
「いや、今はわからないってだけで、帰る方法がない訳ではないらしいぞ」
「そ、そうなんだ」
静香はホッとした表情になった時だった。
「おぉっ!なんて美しい黒髪だ!」
声がした方を見ると、オルヴァさんが立っていた。
「そこのあなた、私の妻にならないか?」
「え!?私!?」
いや、お前しかいないだろ。
つーか、いきなり「妻にならないか?」っておかしいだろ。
「そう、あなただっ!お名前は?」
「し、静香です。神崎静香」
一気に静香に詰め寄り、名前を聞くオルヴァさんに、若干気圧されている静香。
「静香さん!!私の妻に「おい」……なんだ、貴様?」
俺は静香に「助けて」と目で訴えられたので、割って入ったんだが……。
何この違い?いや、仕方ないと思うけどさ?これはひどくないか?
「いや、静香が嫌がってんだろ」
「何を言うか!!静香さんが嫌がるわけないだろう!!」
うお、こいつナルシストかよ!めんどくせぇー。
「いやいや、静香をちゃんと見ろよ」
「見なくてもわかる!嬉しさのあまり泣いているのだろう?」
ちげーよっ!!!!
あぁ、こりゃこのままだと平行線のまま、時間が過ぎていくな。
「だからさ……」
「貴様、それ以上邪魔をするというなら、我が剣の錆にしてくれるぞ?」
「あぁ?」
なーんか、カチーンと来たな、今のは。
「できるもんならやってみろよ」
「ほぉ、この俺にそんな大口叩くとはな」
あ、やば、なんかトラブル臭がプンプンして来た。
「いいだろう、ならば、静香さんを賭けて、決闘だ!!」
あぁ、俺の予感が見事的中。
決闘とかめんどくせぇぇぇ!!
はい、今回はちょっと長めだったかな?
次回に向けて戦闘フラグ、ビンビンに立ててやったぜ! (´∀`)ヒャッハー
感想などありましたら、バッチコォォォイ!!