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秘密にしたまま、先生を好きになった。  作者: 雨月しずく


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第3話 触れた指先、消えぬ想い

放課後の校舎は、ひどく静かだった。

音もなく空が茜に染まり、窓ガラスに僕の影だけが映っていた。


誰もいない昇降口で、僕はひとつ息をついた。


帰り道。

制服の袖で、そっと指先をこすってみた。

あのとき、ふれてしまった手のぬくもりが、まだ残っている気がして。


何度こすっても、消えてくれなかった。


それは、先生の手の熱だった。

……それとも、僕の気持ちの残り火だったのかもしれない。


ただ、確かなのは。


もう、気づいてしまったということ。

あの一瞬が、僕の心に何かを落としたということ。


この想いは、秘密にしなきゃいけない。

でも、きっともう、僕は――


少しだけ、恋をしてしまっていた。





翌週、進路面談の日がやってきた。


教室とは違う、静かな空気の漂う一対一の空間。

先生と向かい合って座るだけで、どこか落ち着かなくて、

手のひらがじんわり汗ばむ。


「白羽、将来のこと、少しずつでも考えてる?」


先生の声はいつものように穏やかで、やさしかった。

まっすぐ見つめられて、視線を少しだけ外す。


「……まだはっきりとは。でも……」


喉の奥で、言葉がためらう。

けれど、ちゃんと伝えたかった。


「……ちゃんと、誰かに必要とされる人になりたいです」


ぽつりと落とした言葉に、先生は少しだけ目を細めた。

そして、ふわりとした声で言った。


「白羽は、優しいから大丈夫だよ。そういう人、きっと必要とされる」


その言葉に、胸がかすかに震える。

だめだ、と思いながら、気づけば声にしていた。


「……先生みたいな人に、なりたいです」


言ってしまった。

すぐに顔が熱くなる。


先生は一瞬だけ、目を見開いた。

けれどすぐに表情をやわらげて、ふっと笑った。


「ありがとう。そう言ってもらえるの、うれしいよ」


ただ、それだけだった。


先生の言葉は、いつだってまっすぐで、曇りがない。

なのに僕の中では、まっすぐすぎて、少し痛かった。


その日の帰り道、夕焼けの色がやけに濃く見えた。

先生の声が、風の中にまだ残っている気がして――

歩くたびに、胸の奥で何かが小さく揺れていた。





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