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『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第1幕 交章。 〜明かされていく妄想と真実〜

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秘密の話はノビ抜きに!

 









「しかし焦ったいのぅ」


 神シロは、白い顎鬚を撫でつける。


「まぁ、焦ったいよな。

 だが、ゴクトーは目覚めつつある。自分のその力にな」


 黒銀の目の友こと、トランザニヤは顔を上げ、神シロに答えた。


「ワタクシは、見ていてドキドキしますわ。この感覚、何百年ぶりかしら」


 女神東雲は笑いながら、下界を再び覗き込む。


 吊られるように、神シロとトランザニヤも慌てて下界を注視した。


 


 その頃、ゴクトーたちは宝箱の山に埋もれていた。



 


 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇






 宝物を数えながら声に出した。



「*魔石は、 大42個、中126個、小388個……だな。

 【*白金貨 75枚】 、 【金貨 678枚】 、 【銀貨 1846枚】だ」


 アカリが宝箱を覗き込む。


「黒のローブが2枚ね、白のローブも2枚あるわ」


 彼女の声にそっと近づくアリーは、垂れ耳をピンと立てる。


「わからにゃい、これガラクタかにゃ? 魔導具 、4個にゃ」


 アリーの横から顔を出すパメラも、宝箱を覗いて取り出し始めた。


「ミスリルの胸当て、1体と、ミスリルのレイピア(細身の剣)が1本あるわねん。

 それと、七色に輝くこの指輪……これは……」 


 仲間たちがその指輪は注目する中、俺だけはまだ宝箱の中身を数えていた。     


「宝石の散りばめられた王冠が3個だな、同じようなティアラも4個だ」


 そんな俺を見て、苦笑いするジュリも宝を取り出す。


「青宝玉の付いてる長い金杖が1本、紫宝玉の付いた紅い短杖も1本ね」


 彼女は杖を神妙に眺めて並べる。 


 そして、俺がラストスパートをかける。    


「まだまだあるぞ。宝石が付いた金の首飾り12本、

 宝石が付いた金の指輪が26個だ……」


 ダイヤ・サファイア・ルビー・エメラルドーー

 宝石類も多数宝箱に入っていた。


 俺は疲れて、数えるのを途中でやめた。

 肩をすくめながら仲間たちを見やる。


 目が合うと笑みを浮かべながらアカリが口を開く。


「さぁ、どうやって分けましょうか……ダー様?」


 彼女は頬を朱く染めてどこか、いじらしくそう言った。


「ん?……ダー様って……その言い方は何?」


「何って?……私がつけた呼び方ですわ……そう呼びたいんですの」


 そう言ってアカリは瞳を揺らす。


 おいおい、その目ッ!

 ジュリもっ!パメラもっ!睨んでるでしょ!


「HAHAHA……」


 思わずコリン語が出たーー苦笑せずにはいられなかった。


 一度大きく心呼吸して提案する。


「みんなが欲しい物を取ればいいと思うが?」


 言い終えるとすぐに、モフモフの尻尾が俺の視界に入った。


「それでいいにゃ!」


 アリーが垂れ耳をピンと立て、尻尾で目をこする。

 相変わらず可愛い仕草だ。

 俺の思い同様に、仲間たちの顔にも自然と笑みが溢れた。

 

 他方、ジュリがニコッと勢いよく七色の光り輝く指輪を掴む。


「じゃあ……わたし、これーー!」


 アカリが冗談混じりな悪戯っぽい声色を出す。


「私も……欲しいものがありますわ」


 そう言って彼女が白い指で俺を指差す。


 耳まで赤くなったが、それはさておき、山分けだ。

 アカリから向けられる視線を逸らしながら口を開く。


「今、冗談はそのくらいで……宝は、みんなが良ければ……」


 俺の言葉に仲間たちが頷いた。

 だが、アカリだけは頬を膨らませたいた。


 一番にジュリが笑みを浮かべ指輪を嵌める。


「ありがとう!!!」


 その瞬間ーー

「あなたなら、私の力にも負けない魔力(マナ)と勇気、

 そして優しさと愛があるわ。

 ふふふ。この『ガンダルフの指輪』ーー私を使いこなしてみなさい」


 どこか悪戯っぽい女性の声が俺の脳内に響く。

 どうやら仲間たちには、聞こえてない様子。

 


 その瞬間、ジュリの身体が桜色に光った。

 仲間たちはそれすらも気づかない。

 どこかジュリが大人びた感じが否めない。

 それに【覇気】も以前とは段違い、一回り、いやそれ以上に感じる。


 俺は不思議に思った。


 しかし、ジュリを見る仲間たちの様子に、

 変わったところは微塵も見えない。

 俺の妄想か……と、有耶無耶にしながら心に沈めた。


 そんな中、紫の髪をポーニーテールに結いながら、パメラが口を開く。


「あたいは別に財宝目当てじゃないから……最後でいいわん」


 彼女が俺を一瞥し背を向けた。


「カルディアのお姫様だもんな、宝には興味ないのか……?」


 俺の問いにパメラが勢いよく振り返る。


「……そうじゃないの!」



 ブルルルン


 『爆弾(ダイナマイト)』の胸が揺れ動き、そこから爆風が生まれた。


 ひらーーアカリが躱す。


 ふわーー避けたアリーの尻尾。


 さっーージュリが頭を下げる。


 ペターー俺は伏せた。



 

 ジャラジャラガシャーンッ!


 だが、ノビが宝物と一緒に吹き飛んだ。


「いでで……」


 

 ピョン。


 すぐさま戻ってきたノビ。


「緊張で、反応がおぐれたんさ……」


「ふっ……貴様はまだ修行が足らんな……」


 ノビとパメラの『恒例行事』に仲間たちはクスッと笑った。


 俺も苦笑しながらノビに声をかける。


「ノビ、お前も欲しいものがあれば、言っていいんだぞ」


「い、いや、オラなんて……なにもしでねぇのに……ゴクどーさん、

 のこったもんで十分でづ。ありがどうございまづ」


 ひどい訛り口調でノビが顔を赤くしながら俯く。


 そんな中、紫髪がふと俺の目の前で揺れたーー。

 パメラ艶っぽい声を出す。


「ゴクちゃんが、適当に分けてよん」


「ヨシ、仕方ない……分けるよ」


 そう言って俺は、全員の顔を眺め、戦利品を配りはじめた。


「ノビ、お前、欲しそうな顔してたからな」


 ノビには、ミスリルのレイピアと胸当て。さらに王冠をひとつ差し出す。


「い、いえ……そんな……ありがどうございまづ!」


 ノビが潤む瞳に涙を浮かべ、震える手で受け取った。


 続けて、戦利品を配る。


 パメラには紫の宝玉の紅い杖と白いローブ。


 黒のローブはアカリとジュリに一枚ずつ。


 ティアラは女子たち全員に。


 アリーにはさらに王冠を二つ配った。

 受け取った彼女が声に出して喜ぶ。


「お金持ちにゃ!」


 メタリックブルーの瞳を煌めかせ笑顔を見せる。

 一方、紫のタンクトップ、『爆弾(ダイナマイト)』が俺のすぐ目の前に。


「ゴクちゃん、ありがと……」


 パメラの灰色の瞳の奥が一瞬閃く。


 (欲しいのは、こんな財宝じゃないの。違う……お宝なのよん……)


 彼女の内心が俺に伝わる。つくづくこの心読スキルに嫌気がさす。

 パメラが眉を寄せながら俺を見据え、ため息をついた。


 ゾワ


 一瞬だが、背中に何か、冷たいものを感じた。

 パメラの表情には、何か思いつめた様子が見て取れるのだが。


 紫の宝玉の紅い杖、白いローブじゃ、

 物足りなかったのかッ! ダメじゃん俺っ!


 思いながら今度は、俺がため息をつく。


 だが、他の仲間たちの表情には笑顔が見える。


 ま、仕方ないかっ!


 そう思い諦め、宝を配り続けた。


 白金貨や魔石、アイテム類もーー全て配り終えた。


 山分けが終わった瞬間。

 ノビが身体を少しこわばらせながら「ごれ、持っでがえれないんさ……」と、

 レイピアと胸あてをじっと見つめつぶやく。


 ノビのジトッとした態度に業を煮やし、俺は口を開いた。


「ノビ、中サイズだが……『*アイテムボックス』だ。

 これに入れて持って帰れよ。……お前にやるよ」


 半ば呆れながら、そう言ってノビに手渡した。


「ゴクどーさん……ごんな……ごんな良い物……したっけいいの?」


 ノビが、かすれ声で目に涙を浮かべる。


「ありがどうございまづ」


「礼はいい。さっさと持って帰れ」


 ノビが大事そうに『アイテムボックス』に収め、

 頬に流れる涙を拭っていた。


(オラ、絶対、次は、やぐに立っでみせるんさ!)


 ノビの静かな決意が俺に伝わる。

 そんな彼の背中をパメラは、笑みを浮かべながら見つめていた。

 その姿はまさにーー泣き”カエル”。


「したっけ!」


 ノビはジャンプしながら、宿泊している宿屋へと帰っていった。


 ノビを見送った後、少しだけグレーの瞳が潤んでいるパメラが俺に問う。


「ゴクちゃん……あたいたちの部屋に泊まるの? うふんっ」


 部屋に帰る素振りを見せない俺をパメラがいじる。


「ち、違う……パメラが姫って話をしてたから、ちょっと……」


 慌てて答えた。 


「なんだ……そんなことなの……つまらないわねん……」


 肩をすぼめたパメラの言葉にはーーどこか憂いが滲んでいた。


 次の瞬間、眉をひそめるアカリが口を開く。


「私たちも聞きたいですわ……なぜ王族の姫が冒険者に?」


 ジュリとアリーがアカリの方を見てうなずく。


 さっきまでの賑やかな雰囲気が一変。

 部屋は無音になり、どこか黄昏た空気が漂う。

 その雰囲気を察したのか、パメラが遠くを見つめ紡ぐ。


「『*カルディア魔法国』の王族って言っても、

 あたいと妹は、側室の子なのよ。 

 

 ーー正室の王女様には皇子が二人、姫が二人。

 それに、他にもう一人側室がいて、まぁ、父には沢山の子供がいるわ。

 公式の場に顔を出すことはあるけど、基本はね……」


 口調を変えた彼女のその声には寂しさが滲む。

 まるで何かを諦めている感じだ。


「それで、なんでパメラは冒険者になったんだ?」


 不思議に思い尋ねてみた。

 彼女は「ふっ」と軽く肩を落とした。


「側室の子ってね、王宮には長くいられないのよ。特に女はね。

 

 王宮を出た後は、それぞれ好きな道を選ぶの。

 

 あたいは冒険者の道を選んだの。魔法学院の講師にもなったしね……。

 もし『S級』冒険者になれたら、正式に教授にもなれるのよ……」


 言い終えるとパメラが肩をすくめた。

 

「それで、このダンジョンに来たってわけか?」


 続け様に俺は聞いてみる。


「そうよ、このダンジョンを攻略して、名声を得るためにね。

 あたいと違って妹は、もっと真っ当な道を選んだわ。

 

 自慢の妹なのよん。カルディアの魔法省で働いているの」


 パメラがほんの少し、口角を上げたのが印象的だった。


「どこの国でもそうなのか……?」


 またしても俺の口からは疑問が漏れる。


「ええ、正室、側室の子供、

 それに姫……ほとんどが政略結婚を強いられる運命ですわね」


 俺の疑問に、アカリが静かに答えてくれた。


 そんな中、ジュリが悪戯っぽい声で、揶揄うように口を開く。


「ネーも後、三日遅れてたら、嫁に行かされてたんだもんねー!」


「「えええええええっ!!」」


 パメラとアリーが目を丸くして声をあげた。


 彼女たちその表情は、あれだ。

 口をパクパクとさせる、魚人のようだ。


 俺は腹の中で苦笑。

 そんな俺を他所に、アカリが真面目に答えた。


「でも、行かなくて、本当に良かったわ。

 相手がタイプじゃなかったから……」


 彼女が少し、はにかみながら俺を一瞥する。


 一方、聞いていたパメラが口を挟んだ。


「大体、どの国でもそんな感じよ……」


 彼女は目を伏せながら続けて紡ぐ。


「あ、今の話はノビには内緒にねん。ここまでは話していないのよん」


 パメラのその言葉に、一瞬の静寂が部屋を包み込んだ。

 部屋の窓ガラスからは、三日月が微笑むように薄光を注ぐ。

 

 ふと、思い立ったようにパメラが艶っぽい唇を噛む。


「”お宝”の話も良いけど……

 ゴクちゃん、あたいが明日、もっと素敵なもの見せてあげる……」


 彼女が言ったーーその瞬間。

 ただならぬ緊張感が部屋に漂う。


 な、なんだそれ……と、思っていた矢先。


 パメラが口元を緩め、胸が揺れないように押さえた。

 そして、彼女が小声で囁く。


「明日こそは、ゴクちゃんを……!」

















 







 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )



 




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― 新着の感想 ―
なんであれ、ものの分配って難しいですよね。公平にしようにも現物のままでは。基準が無いと。貨幣経済を考えた人は偉大だと思います。今回もとても面白かったです。
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