↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『妄想図鑑』がこの異世界を塗り替える! 〜英雄トランザニヤの末裔とその仲間たち〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第0幕 序章。 〜妄想図鑑と神代魔法士〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/302

赤三角編 2 〜赤三角の魔物とゴクトーの揺れる心情〜 



 桃色姉妹の部屋に呼び出されたゴクトーは、

 とんでもない妄想を引き起こします。Σ('◉⌓◉’)

 




「おい、バッカスの酒が手に入った。飲もうぜ。がはははは。見ろよ、黒銀の、あいつ、ドギマギしてる」


「ははは……見るも無惨な責められ方だな」


 神シロが面白そうに語る傍で、黒銀の目の友は苦笑いを浮かべる。


「ふむ……だが妙だな。あやつの妄想……わずかに現界に干渉しているぞ?」


「……神代魔法秘伝の亖(し)の芽か? まさか、まだ眠っているはずだが……」


「いや、あれは「見える者」にしか見えぬ現象よ。黒銀の、飲み過ぎるなよ。現と夢の境が曖昧になるぞ?」


 神々は酒を煽りながらどこか楽しそうに下界を眺めていた。






 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇




 アカリの『赤三角』に釘付けだった――その頃。


「集中してるみたいだけど、ナガラ兄様のこと、思い出したかしら?」


 その言葉に、俺の妄想心臓――『江戸っ子鼓動』がギクリと跳ねた。


「私は、アカリ・ミシロと申します。この子は妹のジュリ。聞きたいことがたくさんありますの。長良兄様のことで」


 彼女と目が合う。その淑やかな声が逆に緊張を高めていく。ここで彼女の動きの変化に不信感が募る。


 その態度どうなのよ? 急に変わったな。


 思うが口にはできない。

 落ち着き払い、品格を兼ね備えているような感じだ。


「ジュリもお茶、飲みなさい。ふふふ」


 言い終えるとアカリはヤマトの煎茶を啜る。 それも上品に。


 まるで揶揄うようだな、と俺は首を傾げた。


 悪戯っぽい目をするなッ!

 どうすればいい?

 この状況をどう乗り切る? 俺っ!


 思いながらも目のやり場には、相変わらず困っていた。

 

 アカリが淹れてくれたお茶が冷める。

 場には緊張感、目の前には『赤三角』。


 何か狙ってるような顔だなッ!

 怖いぞっ! な、なんだ。 


 思ったのも束の間――洗い立ての洗濯物、いや石鹸の香りが周囲に漂った。


 おいおい、アカリちょっと待てっ!


 焦りで喉が詰まり、声にすらならない。


 目の前のアカリが、美脚を少しずつ動かしながら「異世界の門」を開いた。


 ……ゴゴゴゴゴ!


 その瞬間、大気も震える――いや違った。俺が震えたんだ。それは俺の頭の中だけの世界の、はずだった。けれど最近、妙なことが起こる。

 

 血がたぎるような五感――視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚が鋭さを増している気がする。あり得ないはずの妄想が、現実に干渉してくるような感覚。まるで妄想が「具現化」されているかのような――錯覚に陥ることがしばしばある。


 これは錯覚なのか?

 ……まさか、俺の中の神代魔法の秘伝が「目覚め」始めているのか?


 その刹那、目の前はぐわんと歪み、カチッとした音が脳内に響く。時を待たずして、俺は自分の”癖”の世界へ入っていった――。



【妄想スイッチ:オン】


 ──ここから妄想です──


 俺の妄想眼“死線”が――黒い網の目の中の「赤い何か」を捉えた。

 それはまるで、艶のある白い樹々の隙間から獲物を狙う機械のようなレンズ。


 張り巡らせた網目から、ストロボのような輝きを放ち、無機質な笑みを浮かべていた。


 キラン✧


 神々しい赤い煌めきが、黒い網目を切り裂く。


「……っ!」


 真紅の魔獣機械体『非常用侵入グチ』が、"死線”を捉えた――。


 

 【妄想スイッチ:オフ】


 ──現実に戻りました──



 脳内の『妄想図鑑』に、真紅の魔獣機械体『非常用侵入グチ』がスッと吸い込まれ収まった――その瞬間、我に帰り、意識を取り戻した。


「っな! またかッ!」


 一瞬、瞼をしばたかせる。その俺の声に目を丸くするアカリとジュリの視線を感じる。

 俺を見つめるジュリの表情は「見過ぎよ、信じられない」と言いたげに眉を吊り上げ口元が歪んでいた。


「その目はなにっ!」


 言い放つジュリの語尾の圧も怖い。


 怒りと呆れってやつ? そんな顔だな。

 これ、不可抗力でしょッ!


 決して口に出せない俺は、何故か無性に腹が立った。

 アカリの隣に座るジュリが声を荒げたからだ。


 声もキィーって感じだよ。わかる?


 この姉妹の対比に、益々思考は困惑を深めた。


 だってそうでしょ? そんなに怒鳴る?  

 目、つり上げちゃって。

 いや、確かに……。 

 アカリさんの――『赤三角』は見ちゃってますけども。


 あなたは、足を投げ出した時だけだったでしょ?

 ほんのささやかな時間だったのにな。


 と俺は思ったさ。

 ジュリの圧に怯む一方で、内心軽口を叩く。

 どこか苛立つジュリから、思わず視線をそらした。


 口はへの字だし、目尻を上げ、細めたその目。その顔は「またやったの?」と。まるで俺に問いかけているように感じる。


 ジュリの眉、これでもかってな具合につり上がってるな。


 それって軽蔑顔でしょ? わかってます。

 ……ってか、妄想は俺の癖だからっ!


 声を大にして叫びたい。

 だが思うだけで口には出さない。

 もどかしさで頭が変になる。 

 

 俺の最もダメなところだ。


 視線をどこに置けばいいのか――わからなくなってきた。


 好きで見ているわけでは、ないんだが。 

 でも、この姉の思考が読めないのは確かだ。


 ここは観察だ。   

 

 必死だよ。当然だろ。

 誰だって見たらわかるだろ?

 この状況だぞっ!


 思いながらもふと誰かに見られているような気がして――天を仰ぐ。

 その瞬間、額から冷や汗が滲み出てきた。

 目線を下げた俺と目が合うアカリが、唇の端を微かに上げた。


 やめてくれ.....!そのしてやったり顔。 見てないフリ.....続けるにも限界だ。

 どうしても目に入るんですけども.....と、思いながら俺はうろたえるばかりだった。

 そんな中、アカリが背筋を伸ばし、凛とした声を響かせる。


「兄様は旅に出てから、それっきりで、長い間、行方がわからなくて......」


 彼女は言い終えると寂しさを漂わせた。どこか憂いも滲んでいる。


 だが、その目の奥に爛々と閃く、何かが宿っているようにも俺は感じた。

 ジュリの瞳にもアカリ同様の何かが蠢(うごめ)く。


 だから......その何かが怖いんだよ。

 誰か教えてくれっ!


 この状況からなんとか逃れたい――俺の心の叫びはきっと天には届いている。

 しかし、サラッとした桃髪を掻き上げ、アカリが真顔で唇を噛む。


「――兄様の行方を知っていたら、教えていただけませんか……?」


 彼女の一言は、「真剣の刃」のように俺の胸に突き刺さった。


 ヒヤリとした感覚が背筋を襲う。


 喋るのは苦手だけども――ここは話をしておかなきゃな。


 そう思った俺は、なんとか答えようと喉を開き、声を絞り出した。


「師匠とはそうだな、二年くらい前だ。俺が『A級』になった頃に突然だった。

 【桜刀】と装備一式を置いて、姿を消したんだ。それからずっと……俺も探しているんだ」


 そう言うと姉妹の表情がいきなり曇る。彼女たちはため息をつき、肩を落とした。

 ふと、師匠との突然の別れが頭をよぎる。


 あの時、まだ我慢できたんだ。「用を足し」に行かなければ、師匠を見失う事なんて――きっとなかったんだ。


 俺は後悔しながら、苦い思いを振り返った。


 部屋にしんとした沈黙が漂い、しばし無言の時を刻んだ。


 そんな中、静寂を破るように口火を切るアカリがその艶やかな唇を動かす。


「二年前、突然ですか……」


 そう零すとジュリと目を合わせ、食い入るような眼差しをこちらに向ける。


 不安げな表情だな。 

 焦らんでも今、話すよ。


 思ってたのも束の間、次の瞬間――ジュリを一瞥し、 アカリが真剣な表情で、ゆっくりと美脚を開き始めた。


「……っく!」


 黒編みタイツの奥――『赤三角』が俺の目に飛び込む。


 まるで「こんばんは〜」と挨拶してくるように。


 妄想がチラリと脳を掠め、思わず目を擦る。


 今、説明しようとしたとこなのに、集中ができない。


 困惑中にも関わらず、アカリが足を閉じ、一気に畳み掛けるように言ってくる。


「そうだったのね……あなたも、突然、閉ざされたら驚くでしょう?」


 そう言って、彼女はうっすらと笑みをこぼした。


 そりゃ驚くよ。だって、赤パンツ丸見えなんだぞッ!

 見せる、あなたに驚くんだが? わざとやってるだろっ! 


 俺は思いながら目線のやり場に困り、奥歯をギュッと噛んで瞼を閉じた。


「ふふふ」と、アカリの笑い声が聞こえる。


 俺の妄想心臓――胸の『江戸っ子鼓動』は爆発寸前。その音が胸から漏れてないか、少し不安になる。

 

 場には混沌とした重い空気と緊張感が漂い、無音の中、俺はまだ瞼は閉じたままだった。


 間髪入れず、早口で話すジュリの小声が微かに聞こえる。


「なんで急にいなくなっちゃうのよ! 愛想尽かされたの!? ……へんたいだから?」


「ジュリ。言葉が悪いわよ。……ふふふ、せっかちね。そんなこと言っちゃだめよ」


 続けてアカリの艶っぽい声も、耳に飛び込んでくる。

 俺は瞼をゆっくりと開けて状況を確認。 


 よかった。足、閉じてるな。


 「ふぅ」


 思いながらも息をついた。


 だが次の瞬間、アカリの目の奥がギラン✧と閃き、俺を射抜く。

 すかさず名付けた彼女の眼――『妖艶な虎ギラン✧』がこちらを睨む。


 固唾を呑み、微かな震えとともに膝が笑う。


 一方で、ジュリが何か言いたげに口を真横に結んだ。

 彼女の眉が僅かに動く。


「ちょっとーー! さっきからずっと――ネーの脚の間ばっかり見てるじゃないーー! 」



 俺の妄想眼”死線”には、可愛らしい桃髪の小さな妖精が、透明な羽をぱたつかせ、叫んだように見えたんだが……。







 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
目の前に美人姉妹! 師匠の妹!? 何か狙ってるような瞳! しかも赤三角見えちゃってます! どうする!どうするの俺! ――妄想スイッチオン という某CMの流れを考えてひとり笑ってました=
ジュリを捉えるゴクトーの感性、表現が軽快で読んでいて面白かったです。割合に赤三角を見せられていないだけ、ジュリに対しては、冷静なのかな、などと想像して読めました。今回もとても面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。