ワイバーン討伐編 8 〜次なる指針〜
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「良かったわ。ゴクトーくんたちは無事に龍皇一族の、
彼と無事、打ち解けたみたいですわね」
下界から顔を上げる女神東雲の言葉に、
神シロも白髭を撫で付け、ほっと息をつく。
一方、黒銀の眦を下げるトランザニヤは無言のままだった。
ーーその頃ゴクトーたちは、
討伐したワイバーンの回収に四苦八苦していた。
◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇
青空に浮かぶ雲ひとつなく、真っ青なキャンバスのような空の下、
ハゴネの山々が静かに立ち並んでいる。
その山々は、豊かな緑に覆われ、
時折見える岩肌が大自然の力強さを感じさせる。
崖の上から見渡す景色には、無数のワイバーンの死骸が転がっていた。
その数に、アカリが眉をひそめる。
「ダー様……このワイバーン、全部ギルド支部に持っていかれるのですか?」
透き通る声で問いかけてくる彼女の青い瞳には、
”いにしえ”の光が揺れていた。
「いや、肉の部分だけは半分、貰うことにしよう。
骨や鱗も使えるが、それはギルドに任せる」
崖下の死骸を見やりながら答える。
隣でパメラが手を腰に当ててつぶやく。
「でも……ゴクちゃん、これだけの量、どうやって運ぶのよん?」
誰もがその問題に悩む中、ノビが思いついたように手を挙げた。
「先生!! これ【ミニマム】の魔法をかければ、小さぐなるんさ!」
その一言に全員の目が丸くなった。
ノビが驚きつつも少し得意げに胸を張る。
一方でジュリが嬉しそうに彼の頭を撫でながら褒める。
「やるじゃん!ノビ!」
そんな中、パメラが早速魔法の準備に取り掛かる。
「……けど、こんな大量の死骸を相手にするなんて……初めてだわねん」
思わずパメラに魔力回復薬を十本手渡した。
「頼む、パメラ。俺たちが片付ける間、頑張ってくれ」
「了解よん、ゴクちゃん。任せてよ♪」
パメラが短い紅い杖を掲げ、指揮者のように振る。
そして杖が風を切るたび【ミニマム】の呪文を次々に唱え始めた。
巨大だったワイバーンの死骸が、
次々に手の平に乗るほどのサイズに縮んでいく。
アカリとジュリがその小さくなったワイバーンを『万能巾着』に放り込んでいき、アリーとミーアが『アイテムボックス』に素早く収めていく。
その間も、クロニクが『人型』の姿のままで紅蓮の火炎を吐き続け、
氷漬けになったワイバーンを溶かしていく。
コガラもクロニクの足元で小さな氷塊を溶かす手伝いをしていた。
「あるじーー! これでいいのーー?」
コガラが”コトバ”を飛ばしてくる。
その声には少しだけ誇らしげな響きがあった。
「ああ、コガラ。もう少しクロニクと頑張ってくれ」
「わかったーー!」
ふとクロニクの紅蓮の火炎が一瞬止まり、俺の方へ振り向く。
「兄貴、溶かしたぜ」
「いや、俺は兄貴ではないぞ!」
クロニクがコガラの頭を撫でながら報告してきた。
その様子を見たミリネアが一歩前に出る。
「ご主様……クロニク殿のあの格好、腰巻だけでは色々とまずいかと」
「ハッ」っとなり、ようやく気付いてクロニクに声をかけた。
「おい、クロニク! お前、その腰巻きしかないのか?」
クロニクがキョトンとした顔で答える。
「服なんかこれで十分だろ?」
俺は仕方なく、師匠が置いていった、
『スター◯ォーズのオビ◯ン』の装備一式を、
『アイテムボックス』から取り出した。
「これを着ろ。フードを被れば角も隠れるし、いいんじゃないか?」
クロニクが早速上着とローブを羽織り、
ミリネアが差し出す手鏡を覗き込んで、満足そうに微笑む。
「おお、これいいな! 兄貴、ありがとう!」
「ああ……これ、俺の師匠が着ていた服だ。
すまないが、コガラと氷を溶かすのをもう少し頼むぞ」
「はいよ、兄貴」
クロニクが軽く手を挙げ、コガラの元へ戻っていった。
その足取りにはどこか弾むような軽快さがあった。
そしてクロニクが深く息を吸い込んでから、
渾身の力で紅蓮の火炎を吐き出した。
炎は勢いよく氷を包み込み、瞬く間にその大部分を溶かしていく。
一方、俺は食事で残った、ワイバーンの解体作業に集中していた。
解体はこれまで何度もこなしてきたが、
今回のように巨大な獲物は骨が入り組んでいて難易度が高い。
慎重に【桜刀】、【黄金桜一文字】を骨の隙間へと滑り込ませるが、
骨に肉が残るのは避けられない。
「まあ、仕方ないか」と苦笑しながら、
羽根や脚部を丁寧に『アイテムボックス』に収めた。
「兄貴! 氷が溶けたぜ!」
「あるじーー! とけたーー!」
クロニクとコガラ声がハゴネの山中に響く。
小さな”相棒”を優しく撫でながら満足げにこちらにくる。
そんな中、ワイバーンの小型化に尽力するパメラに指示を飛ばす。
「パメラ、頼む!」
「任せてよん! ゴクちゃん!」
俺が振り返ると、やや『爆弾』が小さくなったパメラが、
パチッとウィンクを一つ寄越して、
ノビと一緒に溶けたワイバーンの方へ向かった。
彼女の家系は魔力を消費すると胸が小さくなると聞いた。
納得しないわけにはいかなかった。思わず苦笑する。
日差しが丁度傾き始める頃。
ハゴネ山中の冷たい風が少しづつ和らいでいく。
雲ひとつない晴天の中、
艶っぽい赤大魔導師と、小さな緑の戦士の影が崖の斜面に落ちる。
「【ミニマム】!【ミニマム】!【ミニマム】……!」
パメラの魔法の詠唱が次々と響き、
巨大なワイバーンの体が見る見るうちに小さくなっていく。
細やかな動作で、ミニチュア化したワイバーンをせっせとノビが持つ『アイテムボックス』に、パメラが収める姿が微笑ましい。
手間取るかと思ったが、
崖の上に散らばっていた巨体の片付けは順調で、終わりが見えてきた。
俺は次の行動を考え、仲間たちを集めることにした。
ひと仕事終えた彼らだがその表情は明るい。
良い仲間たちだと思いながら口を開く。
「ギルド支部に行ったら、やることが多いよな……?」
俺の問いかけに補佐役のミリネアが前に出る。
「そうですね、ご主様。先ずはワイバーンの討伐報告と解体依頼。
そしてコガラの従魔申請、それとクロニク殿のパーティー登録も必要かと」
そう言いながらミリネアがクロニクの様子を窺った。
さすが【ゴット・スキル】と、呼ばれるだけのことはあるミリネアだ。
次に何をすべきか彼女の中では、既に弾き出されていたのだろう。
そんな中、クロニクのオッドアイが爛々と輝きを宿す。
その様子に仲間たちも口元が緩んでいた。
俺は確認のためにもクロニクに尋ねた。
「クロニク……お前、本当にうちのパーティーに入るのか?」
「もちろんだぜ、兄貴が断ったって、オイラは絶対入る!」
そう言って自信満々に胸を張る。
その無邪気さに思わず苦笑するしかなかった。
仲間たちも嬉しそうに無言で頷く。
その様子を見ながら次の目的地を話した。
「討伐報告が終わって、落ち着いたらカルディアに行こうと思ってる」
「ご主様、ありがとうございます。
学院の研究施設で『機械銃』の弾を精製すれば、
格段に成功率が上がります……!」
間髪入れず答えたミリネアの横から、一歩前に出たパメラが目尻を下げた。
「あら、嬉しい! ゴクちゃん、あたいも帰るわん!」
その言葉にノビがしっかり喰らいつく。
「しだっけ、オラも学院に帰るんさ!」
仲間たちが次々と賛同の声を上げる中、クロニクに視線を向ける。
「それでもクロニクは、いいのか?」
「もちろんだ! ギャガン叔父上にも、挨拶できるしなッ!」
「そうか…… アカリとジュリはどうする?」
「ダー様に、ずっとついていきます」
「もちろん、ネーと一緒についていくわ」
桃色姉妹の二人が頬を朱に染めながら答えた。
アカリが俺の腕を掴み、ジュリは俺の肩を”ボン”と叩く。
相も変わらずの姉妹の反応に胸中は複雑。
彼女たちの気持ちが、
心読スキルで読み取れてしまうのが厄介でもある。
……ジュリの拳が重かったように思えたが、気のせいか?
そんな思いを胸の奥に沈めながら口を開く。
「アリーは?」
「僕もゴクにぃに……ついていくにゃ!」
「ミーアは?」
「うちは、ベルマがいるから……」
ミーアが不安げな表情を浮かべる中、
ノビが値千金のアイデアを思いつく。
「しだっけ、ミーアさんは、
先生に【メガント】と【ミニマム】を……教わればいいんさ。
小さくしたり大きくできれば、なんとがなるんさ!」
そのビックアイデアに、ジュリが飛び上がった。
「ノビーー凄ーーい! それならなんとかなるね!」
嬉しそうにジュリがノビの頭を撫で廻すと、
顔を赤くしてパメラの顔を覗き込む。
一方のパメラもハッとしたのか、目を丸くしたがーー。
「貴様も……たまには役にたつな」
と漏らしながら頬を赤くした。
次の瞬間、「ピ〜〜〜〜〜〜〜♬♪」と、可愛らしい鳴き声を出し、
「なるんさーー」と、コガラがノビを真似た無邪気な”コトバ”を飛ばす。
「だから!」
俺の言葉にコガラが羽をパタつかせ、”空”を使うように笑った。
それぞれの声を聞き、じんわりとした温かさが場に広がっていく。
ミーアが及ぼした微妙な空気が一気に消えて、
全員が”ゲラゲラ”と笑い出した。
ミリネアが優しく微笑みながら、コガラの小さな頭を撫でている。
「ふふっ、賢くなったわね、コガラ」
その言葉にクロニクとアリーが顔を見合わせて”ニッコリ”と笑った。
俺はそんな光景を見ながら腕を組んだ。
「そうか……いずれコガラは、人型になるんだよな」
「兄貴、コガラの人型の特訓は、オイラに任せとけ!」
クロニクが胸を叩き、自信満々に笑ってみせる。
その頼もしさに自然と頷く。
「クロニク……すまんが頼む」
「任せとけって!」
クロニクの返事を流しつつ、ふとノビの提案を思い出す。
「さっきのノビのアイデアだが……パメラ、その魔法って難しいのか?」
「そうねぇ……でも、ミーアちゃんだったら、きっとすぐ覚えられるわん!
ミーアちゃんも魔力量は、たっぷりあるし、大丈夫よ!」
嬉しそうに答えるパメラに、ミーアも決心したように頷く。
「なら、うちもリーダーについていく!」
「ヨシ、それなら方針は決まったな!」
俺が指示を出すと、ぐびぐびっとパメラが魔力回復薬を飲み干し、
一歩前に出た。
いきなり『爆弾』が弾けるようにーー胸が大きくなった。
「ちょっと待ってねん。
ジュリちゃんが転移魔法を使う……その前に……【マジック・ヒーリー】!」
パメラが杖を掲げて、ジュリに魔力回復、癒しの魔法をかける。
赤い魔法陣の眩い光がジュリの身体を包み込む。
ジュリが満足げに笑顔を浮かべながら零す。
「ありがとう、パメラさん……へんダー!帰るよね?」
「ああ、頼む」
ジュリが深呼吸して杖を掲げると風が変わり、
彼女の身体は白い光に包まれる。
「【アストラル・ゲート】!」
詠唱とともに杖の先端が光を放つと、空間に白い魔法陣が浮かび上がった。
白い光が渦を巻き、【転移の門】が現れる。
白い輝きは、崖の頂上に幻想的な雰囲気を漂わせていた。
光の輪郭が明確になるにつれ、空気が張り詰める。
魔法の力が空間をねじ曲げる音が鼓膜に触れた。
「凄いな……毎回思うが、転移魔法ってのは、壮観だな」
俺の言葉などお構いなしにジュリを先頭に、
その【転移の白い門】へと足を踏み入れた。
【門】に入る瞬間、パメラの腕をノビが掴んで一緒に【門】を潜る。
その様子が微笑ましく、思わず目を細めてしまう。
初めて転移魔法を体験するクロニクが、そわそわと落ち着かない様子だったが、頭を撫でると少し安心したようだった。
肩に乗ったコガラが、なんだか嬉しそうにじっと見上げてくる。
その小さな体から伝わる温もりが、心を少し穏やかにしてくれた。
【"シュ ーー ーー ン”】
白い光が一瞬強くなり、そして色とりどりの光が、
俺たちの頭上を通り過ぎていったーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




