ワイバーン討伐編 7 〜天界の聴取〜
素敵な表紙を石上三蔵様に作っていただきました。
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素敵な表紙をありがとうございます☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
「この流れ、間違いなくーー黒龍はゴクトーと……」
下界から顔を上げるトランザニヤの黒銀の目が光りを増す。
その言葉に女神東雲がふと零す。
「これでパズルのピースは残すところ……」
その言葉に神シロとトランザニヤも黙って頷く。
三柱は天上からそっと耳を欹てる。
さらに女神東雲が「【聴取】♡」と唱え、
雲を耳の形に変えたーー。
ーーその頃ゴクトーは、
人型として姿を変えた黒龍に龍皇一族について、尋ねていた。
◆(女神東雲が語り部をつとめます)◆
「って、ことは……ここは黒龍の縄張りか?」
ゴクトーが黒龍に尋ねる。
その言葉に黒龍が握り飯をムシャッと頬張りながら答えた。
「いやいや、ここはオイラが旅をしながら見つけた場所だ。
あんまり深い意味はないぞ」
「なら黒龍の縄張りはどこなんだ?」
「『カイド』だ。巨人の国の……」
「『カイド』か……行ったことはないが、槍術が有名だよな。
しかし……なんで黒龍がこんな所にいるんだ?」
「親父がな、”あるモノを探してこい”って言いやがったんだ。
見つけるまで帰ってくるな、だとさ」
「あるモノ?」
「ああ、そうだ。緑龍がこの辺で見たって話をしてたんだが……
オイラがここらに入り浸ってたら、
そいつもどっか行っちまった。ったく、面倒な話だぜ」
黒龍は、ふと視線を遠くに向けた。
「そんなに貴重な宝なのか?」
「らしいな。『カイド』の国王に親父が勝負で負けて取られたとか……
情けねぇ話だよ。ったく、龍のプライドはどこ行ったんだ?」
「カイドと言えば槍術が有名だが……槍術で勝負を?」
「そうらしい。七星の武器のひとつ、
【趙槍ギャラクシー・スピア】ってシロモンだな」
その瞬間、聞いていたミリネアが"ピクッ”と長い耳を動かし、ゴクトーと黒龍の会話に口を挟んだ。
「あの……ご主様、少しよろしいでしょうか?」
「七星の武器のことか? いいぞ」
頷くミリネアは一歩前に進み、丁寧に頭を下げた。
「黒龍皇子殿、ワタクシは七星の武器について研究をしております。
ハイエルフ『八支族』のひとつ、
【ロカベル】族長の長女ミリネアと申します。
【趙槍ギャラクシー・スピア】以外に、
何か七星についてご存知ではないでしょうか?」
ミリネアの問いに眉をピクッと動かした黒龍。
彼は少し間を置いて、視線をミリネアに向けた。
「ハイエルフの『八支族』だと……?
……随分丁寧な挨拶だなぁ。
族長の娘ってことは……姫様か。
おまけにその横の子は妹姫か?
いやぁ、道理でエルフにしちゃ、美人だと思ったんだよな! ははははは!」
黒龍は頭を掻きながら、豪快に笑い飛ばした。
「悪ぃが、オイラは【趙槍ギャラクシー・スピア】が、
何本かあるってこと以外は、何も知らねぇ。親父なら知ってると思うがな」
「そうですか……」
ミリネアは少し肩を落としながら答えた。
黒龍から明かされたミリネアが姫だという真実に、
ゴクトーが目を丸くしながら口を開く。
「ミリネアも姫なのか? ってことは……。
ロカベル三姉妹って全員が姫 ……?
いや、待てよ……。
趙槍ギャラクシー・スピア……ゴルバの記憶に確か……その名前……!」
ゴクトーは『アイテムボックス』から『ハルバード』を取り出し、
黒龍に手渡した。
「これ……【趙槍ギャラクシー・スピア】ではないと思うが」
黒龍はハルバードを手に取り、繁々と眺めた後、
少し残念そうに顔を曇らせた。
「そうか……」
だが次の瞬間、"ニヤリ”と笑って黒龍が言った。
「アンタ、このハルバード、ヒイロカネ製じゃねぇか。
こいつ、相当いい代物だぜ! 良かったら使わせてもらう。
……いや、貰っちまうぜ!」
「いいぞ」
「 やったぜ! オイラ、槍が一番得意なんだ、恩にきる」
ハルバートを握る黒龍の瞳に煌めきが宿った。
「よし、決めた!
オイラはアンタと【趙槍ギャラクシー・スピア】を探す旅に出る!
なぁ、この姿なら一緒にいても、目立たねぇだろ?
……オイラ、ちゃんと冒険者登録もしてあるんだぜ。
親父にキツく言われたからな。
龍の姿じゃ探しきれねぇって。
昔、親父もそうやって旅をしてたらしい」
「お前の親父が?」
「おうよ! その時に『カイド』の国王のおっさんと知り合ったらしいしな。
それと……ちなみにオイラのランクは『S級』だ!」
「「「「「「 えぇぇぇぇっ!!!!!!! 」」」」」」
ミリネアとコガラ以外、一斉に仲間が驚きの声を上げた。
「まあ、龍だからな……大概の魔物は倒せるよな……S級か。
……そりゃそうか。男も増えるし……パーティに二体も龍が……」
ゴクトーは口元を緩めながら零した。
相当嬉しかったのだろう。
そんな中、黒龍がワイバーンの肉を平らげ、指先をぺろりと舐めた。
「アンタの名前は?」
その言葉の後、黒龍がニヤリと口元を綻ばす。
「ゴクトーだ…」
「オイラは黒龍……だけど、それ以外の名はない。
冒険者登録も『黒龍』でしてるんだ。
良かったら、アンタが名付けてくれないか!」
黒龍の言葉に全員が一瞬静まり返る。
次の瞬間、皆クスクスと笑い出す。
「おい、なんで笑ってんだ……?」
黒龍は周囲の反応が気に入らないのか、眉をしかめた。
そんな中、パメラが半笑いで口元を手で隠しながらつぶやく。
「……ゴクちゃん、名付けって言ったら、『リリゴパノア』を思い出すわねん」
その言葉に、隣でノビがこっそりと笑いを堪え、小声で囁く。
「全員の名前の一文字だけ取っで、続けて読みあげたやづなんさ……」
「やめろ! 過去を掘り返すな!」
ゴクトーは声を荒げたが、アリーが尻尾を揺らしながら笑みを浮かべる。
「ゴクにぃのセンス、正直……ちょっと微妙だかりゃ」
「お前ら、言いたい放題だな!」
ゴクトーが軽く一喝すると、黒龍がミリネアに近づきーー。
「ミリネア姫……もう肉はないのか?」
「ええっ!? まだお腹が満たされませんか!?」
「もっと食わせてくれ……オイラ、こう見えて大喰らいなんだ」
ワイバーンの肉を平らげた黒龍が、物欲しそうにゴクトーを見上げる。
その仕草にミリネアが苦笑しながら、追加の肉を差し出した。
場の雰囲気が和らぐ中、益々日差しが強くなる。
ハゴネの山の風がどこからか新緑の葉を一枚運んでくる。
くるくると回る葉が、熱くなった石に落ちるとピシと音を立て丸くなった。
その様子を大人しく見ていたコガラが「ピ〜〜〜♬♪」と、
可愛らしい声を上げながら”コトバ”を落とした。
「あるじー! こわいのは、もうこわくなくなったの?」
「ああ、そうだ。黒龍はコガラの親戚みたいなもんだぞ」
「しんせきってなぁにーー?」
「おねえちゃんみたいなもんだ」
「おおねいちゃんたちと、おなじぃーーぃ?」
「そうだな。おねいちゃんたちと同じだ」
「クロにいしゃんだね!」
「黒龍が肉をせがんで、コガラはクロにいしゃんと呼ぶ……か……クロニクか…」
ゴクトーが漏らしたーーその瞬間。
黒龍の身体が突然【黄金】に輝き出した。
「「「「「「えぇぇぇぇっ!!!!!!!!!」」」」」」
驚きの声が全員から一斉に上がる。
眩しい光が収まり、黒龍は満足そうな表情で微笑んだ。
「すげぇな、力が漲ってるぜ!
今日からオイラは『クロニク』を名乗ることにするよ。
良い名前をありがとうな、兄貴!」
「いやいや。俺はお前の兄貴じゃないからな!」
「ははは! 照れるなって!
でも、名付けてもらったからには、兄貴とはこれからどこまでも一緒だぞ!」
黒龍、いや、クロニクが満面の笑みを浮かべる。
一方でコガラが「ピ〜〜〜♬♪」と鳴き、続けて”コトバ”を落とす。
「クロにいしゃん コガラだよーー」
「コガラか……お前の叔父に当たる身分なんだが……まぁいいか。よろしくな」
「よろちく。ピ〜〜〜〜♬♪」
コガラも嬉しそうに可愛らしい鳴き声を上げた。
見ていたアリーが、モフモフの尻尾を振りながら声を張る。
「かっこいい名前にゃ!クロニク兄ぃ、
獣人オブニビア一族のアリー・ココロ・オブニビアにゃ!」
「オブニビア長老の血縁か……
うちの爺様、古代龍と、
肩を並べる神獣フェンリルの連れだよな。
なるほど、通りで魔力の量が多いわけか……よろしくな」
「へぇーーそうにゃんだ。よろしくにゃ!」
一方ミーアも頬を朱らめ、一歩前に出る。
「うちはミーア、ミリネア姉様の妹。クロニク皇子、よろしくお願いします」
「美人姫姉妹か……ミーア姫はオイラの嫁にしてやってもいいぞ!
ははははは!」
照れながらまんざらでもなさそうなクロニク。
彼の頬はやんわりと朱に染まっていた。
一方、ゴクトーの隣の席から立ち上がるアカリが口を開く。
「『ヤマト』の国、巫代家の長女アカリと申します。
この子は妹のジュリ。
良い名です、クロニク皇子。よろしくお願い致します」
そう言って深く頭を下げた。
その態度は清々しくもあり、凛としていた。
きっと、”蛮行”事件のことが、彼女の頭にはあるのだろう。
「『ヤマト』の巫代か……ってか、
神代将軍家の血筋じゃねえか……
ここにも美人の姫姉妹か……兄貴、選び放題じゃねぇか!」
「ゴホッ!んんっ……」
慌てながら咳払いで誤魔化すゴクトーを他所に、
パメラも負けじと名乗りを上げる。
「わたくしはパメラ・ルシーヌ・カルディア。
カルディア魔法学院に勤めております。
ミリネア教授とは同僚ですわ。
良い名前ですわね、クロニク皇子。どうぞよしなに」
そう言ってミニスカートの裾を掴み、上品にカテーシーをみせた。
「……ギャップがすげぇな。
大人の色気“ムンムン”の美人さんだ!
カルディアってことは、王族だよな? ったく……こっちも姫様かよ……!」
そんな中、ノビがしどろもどろに続ける。
「オ、オラはパメラ先生の生徒で……ノビ……ケロッグ・フロッグでづ。
……実家はパン屋で……」
「貴様は余計なことを言わんでいいっ!」
パメラが一喝すると、お約束の『恒例行事』の光景を見て、
全員が笑い出した。
空は澄み渡り、心地良い風が頬を伝う。
「クロニクもすっかり馴染んでるな。これからが楽しみだ……」
漏らしながらゴクトーは、
どこか満ち足りた気持ちなのか、"ニタリ”と笑ったーー。
「ピィ!(ちゅぢゅく)」
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




