ワイバーン討伐編 3 〜黒龍との対決〜
対決 ٩( 'ω' )و
「こりゃまた、厄介な奴が、現れたな」
黒銀の目を細め、ふと顔を上げるトランザニヤが漏らす。
その言葉に神シロもどこか気配を探るような素振りで口を開いた。
「うむ。あやつは龍王ガザグの……。
あの【覇気】からして、まず間違いないじゃろうな」
一方で女神東雲は目を爛々と輝かせ、顔をあげ指をパチン!
その動作の速さはまさに神速。
瞬く間に足元の雲をふかふかとしたソファに変えた。
「あなた。お菓子をお願いね」
そう”命じ”ながら彼女はソファにゆったりと腰を下ろした。
「シノや、甘い菓子は太るぞ」
神シロのその言葉に眉を吊り上げる東雲がそっぽを向く。
「ならポテチね、味は『コンソメパンチ』で、お願いできるかしら?』
そう言いながら彼女の額には、#の文字がくっきりと浮かんでいた。
そんな神々の会話など知る由もないゴクトーたちは、
ハゴネの崖上でワイバーンとの戦闘に、一区切りついた所だった。
◾️(女神東雲が語り部をつとめます)◾️
「黒龍にゃよ!!」
黒い点が徐々に大きくなる。
(コイツら……なんてことしやがる……オイラの縄張りを荒らすとは……)
黒龍は思いながら牙を光らせる。
大きく開かれた顎の奥で、どろりとした闇が渦巻き始める。
「ゴギャラオォォォンッ!!」
恐るべき咆哮とともに、黒龍がゴクトーたちに急接近してくる。
その轟く声に崖全体が震え、
大気がひび割れそうなほどの威圧感を放っていた。
「ぁわわ……ど、ど、どうじます?」
言いながら膝をガタガタと振るわすノビが慌てていた。
一方素早く立膝になり魔導銃を構え、照準器を覗くアリーがポツリ。
「僕の魔導銃で……!」
そんな中、黒い点がはっきりとその姿を顕した。
漆黒の大翼を羽ばたかせ、
空気を切り裂く轟音が、鼓膜を揺さぶる重低音へと変わっていった。
黒龍が近づく。その不気味に光る爪が輝きを増す。
羽ばたきが巻き起こす突風が、地上の者たちの呼吸を奪う。
全身鋼刃のような鱗に覆われ、その巨体が鈍く太陽の日差しを返す。
その姿はまるで鈍色の鎧を纏った死神が、
獲物を仕留めるためだけにーー
最凶の一閃を研ぎ澄ませているかのようだった。
「……ブラック・ドラゴンって……へんダー、これ、無理じゃない?」
「ダー様、撤退も視野に入れるべきでは……?」
ジュリとアカリが動揺する中、ゴクトーが一歩前に出て口を開く。
「何もしてないからな……俺が相手をするよ」
静かだが力強い声が響く。
少し怯えるコガラをミリネアに預け、彼は一振りの【桜刀】を握りしめた。
「へんダー、無茶しないで!!」
ジュリの声にゴクトーは軽く手をあげた。
ゴクトーを引き止められないミリネアが不安な表情で零す。
「ご主様……」
ゴクトーは黒龍を見据えて、その場で構えた。
「ゴギャラオォォンッ!」
咆哮が鼓膜を支配する中、黒龍が崖に降り立った。
巨大な翼を広げたその姿は、まさに災厄そのもの。
(笑わせるぜ……人間ごときがオイラに立ち向かうとはな……)
黒龍は胸中の怒りをぶつけた叫び声を上げる。
「ゴギャラ─ァッ!」
ガッと大きく開かれた顎の中では紅蓮の炎が渦を巻く。
その刹那ーー
"ゴォォォォォッ༅༄༅༄༅༄༅༄༅”
黒龍は嘲笑するかのよう紅蓮の火炎を吐いた。
その炎と熱風はゴクトーに一直線に向かっていく。
空気に入り混じる細やかな砂塵がキラキラと燃え輝く。
ワイバーンの死骸の焦げた匂いと煙が周囲に霧散する。
視界が悪い中、ゴクトーは熱風を肌で感じ、とっさに身を翻す。
そして、【桜刀・兼松桜金剛】を抜刀。
ビュンという風切り音とともに、
黒曜に光る刃が弧の字を描き、一瞬で鞘にカチンと収まる。
「【時雨金剛】!」
ゴクトーの声は崖に低く響き、雷と風を纏った斬撃が発動した。
巨大な竜巻と雷鳴を伴う斬撃が、黒龍の火炎を掻き消しながら迫る。
“≶ ≶ ≶ ≶ ≶ ≶ ≶ ≶ ≶ ≶ ≶”
“バリバリバリバリッ!”
黒龍は火炎を消され、慌てて空に飛び上がった。
(なんだこの威力は…火炎が効かないだと!?)
黒龍は一瞬不安になりながらも、
「ゴギャラオォンッ!」
叫びながら猛スピードで急降下し、鋭い爪をゴクトーに振り下ろす。
“ガッキィィィィンッ!”
ゴクトーは【兼松桜金剛】で最も簡単に爪を受け止める。
しかし、その衝撃で足元の地面が砕け、砂塵が舞い上がった。
「グゴッ!?」
黒龍はあまりにも普通に受け止めるその男の姿に、
目を見開いたーーその瞬間。
ゴトッ…
転げ落ちたのは黒龍の爪。
「ギャガェェッ!?」
悲鳴を上げる黒龍は、なんとも言い難い表情を浮かべる。
(オイラの爪が!? 人間の武器ごときに……何なんだ?あの刀…!)
信じられないといった思いで、黒龍は怒りに狂い、
凍えるようなーー氷の息吹を吐いた。
「“ゴギャララァッ”」
“ビョョョォォォョォッ”
”*─=≡.。o○❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄ ”
至近距離で吐かれた絶対零度の息吹がゴクトーを飲み込んだーー。
「ご主様っ!」
「ダー様、よけてくださいっ!」
「リーダーッ!」
「ピィーーーーーッ!」
「ゴクど─さんっ!」
「ゴクにぃっ!」
「ゴクちゃんっ!」
「へんダーよけてーーっ!」
ハゴネの崖に仲間たちの叫びが木霊した。
だが、黒銀の瞳を細めるゴクトーは口角を上げる。
「【滅咫・満・邏・存】!!」
【桜刀】に宿った神代の言霊が、碧い光となってゴクトーを包み込む。
一瞬でゴクトーの全身が、戦神のように研ぎ澄まされた。
「グオォォオオオオオ!!」
”*─=≡.。o○❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄❄”
黒龍の咆哮とともに吹き荒れる氷嵐。
地面も空も、ただ白い凍気に呑まれていく。
だがゴクトーは動かない。
パキ……パキ……!
やがて、凍てついた氷の中から光が漏れ始めた。
そして嵐が止むーー。
霜のような膜をうっすら纏ったゴクトーが、氷の中心に立っていた。
「ちょっと寒いけど……効いてない。こりゃ使えるな」
そう零すゴクトーはピンピンしていた。
黒龍が目を見開く。
(な……なにィ!? 絶対零度でも凍らねえ!?)
黒龍の目に焦りが浮かぶ。
(くそっ……なめやがって。頭から噛み砕いてやるぜ!)
「ゴギャラォォォォォォン!!!」
怒りを込めた咆哮とともに、黒龍が突進する。
巨大な顎が再びゴクトーを狙う。
「吠えたって、状況は変わらないぞ」
牙が迫るその瞬間、ゴクトーは左手の【兼松桜金剛】を振り上げた。
ガキィィンッ!
牙と刃の衝突。
衝撃でゴクトーの足元が地面に沈む。
ゴトッ……。
先程と同じように地面に転がる一本の牙。
「"グャッギッェェ─ェ”!?」
黒龍の悲鳴混じりの怒声がハゴネの山に反響する。
(痛ェェェーー! )
黒龍はあまりの痛みに悲鳴を上げ、暴れ回る。
「たかが、牙一本ぐらいで、そんな騒ぎか…… ?」
ゴクトーは右手に【桜刀・黄金桜一文字】を握ると、”シュン!”
白い輝きを一閃させ、黒龍の首元に狙いを定めた。
ズシャッ!
鋼刃のような鱗が豆腐にようにーー
スパッと切れ、緑色の血液が迸る。
間髪入れずーー「ギャギャァァァァアッ!」と、
黒龍は暴れながら悲鳴を上げた。
「痛ェェェッ!」
その人間の言葉は黒龍から発せられた。
ポタッ…ポタッ…
黒龍の血液が地面に滴り落ち、崖の斜面を緑色に染め上げたーー。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
「なんなんだお前、化け物か!? 痛いって言ってんだろうが!
オイラが龍じゃなかったら、もうとっくに死んでるぞッ!」
黒龍が悶絶しながら愚痴を零す。
普通に人間の言葉を話すが、コガラで免疫はついている。
その声を無視し、冷静に次の一手を考えた。
……ちょっと懲らしめてやるかな。
俺は軽やかにジャンプして黒龍の背中に飛び乗った。
勢いよく、【兼松桜金剛】を再び抜刀し、
容赦なく、背中を走りながら背鰭を削り落としていく。
ペリペリペリペリッ!
背鰭が鱗ごと剥がれ落ち、地面に散らばった。
黒龍は必死に体をくねらせ抵抗するが、俺の攻撃は止まらない。
「やめろ!やめろぉ!背鰭はやめてくれぇぇぇぇぇ!」
その声にもお構いなしで。
「ぬぉぉぉっ!」
力を込め【兼松桜金剛】を両手で握り、
そのまま黒龍の背鰭に沿って、横一閃に斬りつけた。
ベリッ!
一枚の大きな背鰭が宙を舞った。
「やめてって、言ってるだろおおお!(涙目の黒龍)」
黒龍の悲鳴がハゴネの山間に響く。
背鰭と鱗が剥がれ落ち、緑色の鮮血が地面に飛び散った。
ふと気配を感じ、仲間たちに目を向ける。
すると、安堵する者もいれば、目を覆う者もいた。
崖上の黒龍がバタバタと羽を動かす。
その突風は仲間たちの髪を靡かせた。
「降参か?」
「お、おい!待て!もうやめてくれ!
降参する!降参するからぁぁぁぁ!」
黒龍は必死に訴えかけてくる。
俺は【兼松桜金剛】をヒュンと一振り、パシッ!と鞘に収め、
この黒龍、また暴れ出したら困るしな……。
思いながら「【イサナ:°シシ・イセ・°カムイ】!」と。
【ロカベル】の【加無為】を唱えた。
魔法陣から飛び出した金鎖が黒龍を拘束、
その動きを完全に封じ込める。
「動けねぇ!?なんだこれ!おい、アンタは一体何者なんだ!?」
黒龍が焦りの色を濃くした声で問いかけてくる。
「向かってこなければ、こんな目に遭わずに済んだんだ」
俺は冷たく言い放つ。
「……なんで、オイラはこんな化け物じみた奴と喧嘩したんだ?
いや、違う……最初に襲ったの、オイラだけどさあああ!!」
黒龍は変なテンションでそう言って、黙り込んだ。
タイミングを見計らったように仲間が駆け寄ってくる。
「ダー様!」
「リーダー!」
「ゴクちゃん!」
“むにゅっ”。 ”むにゅにゅ〜ん”。 ”ブルンブルン”。
三段活用の柔らかい感触が俺の身体に伝わった。
これは心臓に悪すぎる。
戦闘直後の俺は高揚を抑えきれずーーカチリ。
脳内に響くスイッチ音。
無論『江戸っ子鼓動』が黙っちゃいない。
「旦那、あっしに負担をかけないでくだせぇ!」
そう言い放ち、鼓動が『妄想図鑑』に消えるように収まった。
「ピィ─ッ!」
そんな中、柔らかさと格闘中の俺を他所に、
コガラが甲高い鳴き声を上げて、安心したのかーー
肩に飛び乗り、甘えるように頭をつける。
「ダー様、……お怪我は?」
少し赤くなった目元を伏せながら、それでも凛とした声でアカリが言った。
桃色の髪を軽く抑え、知性を宿した瞳が俺を見つめる。
彼女の中には、常に『次の一手』を考える癖が染みついているようだ。
そんな彼女は俺の腕をしっかりと胸に畳み込む。
「……アカリさんや、みんな見てるでしょ?
そんな崖のギリギリに立ってたら、危ないぞッ!
……その……柔らかいのは嬉しいけども……」
頬に熱が籠る俺が答えると。
「あら、初めて褒めてくださったの? すごい嬉しいですわ、ダー様!」
そう言いながら、彼女の青い瞳が『猛虎キラン✧』に変わっていくのを、
俺は見逃さなかったーー。
「ピピー♪(ちゅぢゅく♪)」
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




