女神の姪編 3 〜黎明一閃〜
華ちゃんの特別友情出演エピソード3 ♪( ´θ`)ノ
《「何かあったの?華!返事をなさい!」》
女神東雲が”神託”を送るが一向に返事はこない。
不安になった彼女は位置を変え、メデルザード王国の上空に座った。
下界を覗いたーーその瞬間。
声も出せず、女神東雲の顔面が蒼白になった。
一方、妻の異変に気付いた神シロも下界を覗き、「ちっ!」と舌打ちをした。
その僅かな音に反応した人柱、トランザニヤの瞳が黒銀に閃くーー。
「まずいな、よりによって奴が……」
ーーその頃、下界の華はギルド本部で【桜刀・黄金桜大文字】を抜いた。
カツ…カツ…カツ…
階段を降りてくるドミナス公爵の残像が、碧い燐光となって霧散し、
ーー現れたのは夜の闇を凝縮したようなーー
黒のドレスを纏う、圧倒的な美女。
彼女は周囲の戦慄を愉しむように薄く微笑んだ。
彼女は華やティグル、そして呆然と立ち尽くす冒険者たちを見据えると、
しなやかな所作でドレスの両端を指先でつまみ上げ、
片脚を斜め後ろに引いた。
「私自身で名乗ることは少ないのだけれど、
初めましての方々に、少しご挨拶を――」
背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま、膝を静かに折り曲げて深く腰を落とす。
それは、王宮の舞踏会でもこれほど完璧なものはないと思わせるほど、
優雅で美しい『カーテシー』だった。
「魔王様の配下、四天王がひとり、北のドルサードと呼ばれていますわ。
どうぞご贔屓に!」
顔を上げた瞬間、金虹の煌めきを宿す瞳が妖しく細められた。
挨拶という名の『死の宣告』。
その優雅すぎる振る舞いが、かえって彼女の異質さと、
逆らえば一瞬で塵にされるという圧倒的な格の差を際立たせる。
”バァァァン!!”
耐えきれなくなったティグルが魔導銃を放つ。
だがドルサードは、カーテシーの姿勢から立ち上がる流れのまま、
まるでダンスのステップを踏むかのように、無造作に躱した。
放たれた魔弾がーーパキィィィン!と、
高い音を立ててギルドの壁を貫通する。
「ふん、蚊が飛んできましたわね」
彼女はドレスの裾を持ち激しく翻す。
一階のフロアにまで届くほどの碧い呪詛が渦を巻き、
ギルド本部の石造りの壁が、その圧力だけでミシミシと悲鳴を上げ始めた。
「華しゃん、この魔族……”つおい”にゃ……」
ティグルの声が震えている。
「ふふふ。可愛らしい子猫だこと」
鈴を転がすような美しい声を出すドルサード。
だが、彼女が瞳を細めた瞬間、ギルド内の温度が氷点下まで急降した。
「……あ、あ……」
最強の女戦士、エリナ・エイマスが膝をつく。
彼女の斧を持つ手が震え、
金属が床に触れてカタカタと情けない音を立てた。
その刹那、震える手でティグルが反射的に放った光弾は、
空気を切り裂く轟音とともにドルサードの眉間を狙う――。
だが、ドルサードは視線すら動かさない。
しなやかな指先を伸ばし、飛来する魔力の塊を、
まるで羽虫でも捕らえるかのように優しく包み込んだ。
”パキィィィィィィン……!!”
結晶が砕けるような鋭い音が響き、ティグルの渾身の一撃はーー
ドルサードの掌の中で無残にも握りつぶされ、
ただの光の塵へと還っていった。
「退屈ですわね。……せっかくのご挨拶ですもの、
この街ごと『更地』にして差し上げますわ」
ドルサードが腕を広げた刹那、
彼女の背後に、世界を焼き尽くすほどの質量を持った碧い呪詛が渦巻く。
ギルド全体を呑み込むほど、碧い呪詛は膨れ上がり、
空間がミシミシと悲鳴を上げる。
だが、その破滅が解放される直前。
「……させないわよ。その穢れた呪詛魔術、
この空間ごと閉じ込めてあげるわ――神代の檻に、収まりなさい」
その声は、静謐でありながら世界を震わせる響きを持って放たれる。
「――明けの明星よ、九重の天より降り注げ。
東雲が統べし黎明の光、我が刃に宿りて闇を灼け。
顕現せよ、不浄を排する神代の結界。
荒ぶる魔の蠢きを、一筋の光の檻へと収束せん!
女神東雲が真名に代わりて命ず――。
奥義! 神代封殺――【黎明一閃】!」
本来なら街ごと吹き飛ぶはずのドルサードの呪詛魔術と、
華の天変地異さえ起こす神代の金光が衝突したーーその瞬間。
黄金の光を帯びた華の【桜刀・黄金桜大文字】が、
その破滅の予兆を真っ向から切り裂いた。
さらに華は【桜刀・黄金桜大文字】を虚空へ向け、
黄金の魔法陣を展開する。
ドルサードが解き放とうとした破壊の奔流が、
まるで見えない重力に引かれるように、
黄金の魔法陣がそれらすべてを「檻」の中に包み込む。
膨大なエネルギーがギルドの壁一枚傷つけることなくーー
華の掲げた魔法陣の中心一点へと吸い込まれ、凝縮されていく。
片手で魔力弾を握りつぶしたドルサードが、
自分の魔術を「握りつぶされた」ことに驚愕し、
その妖しい琥珀の瞳を見開いたーー。
黄金の魔法陣が吸い込んだ魔術の雫が、華の指先でパチンと弾けて消えた。
あとに残されたのは、耳が痛くなるほどの静寂と、
氷点下までさがったギルド内の冷気。
そして、完璧な絶望をーー
「無」に帰されたドルサードの凍りついたような微笑だった。
「……あら。私の『ご挨拶』を、
これほど無作法に……握りつぶしてくださるなんて」
ドルサードの碧い髪が、怒りか、
あるいは初めて覚えた高揚かーー
生き物のようにうねる。
金虹の瞳が細められ、
獲物を定める蛇のような鋭さを帯びた。
「にゃ、にゃんて力にゃ……」
ティグルが腰を抜かしそうになりながらも、魔導銃を構え直す。
彼女の野生の勘が叫んでいた。
今、目の前で起きたことは、
この世界の魔法体系を根底から覆す「神の業」なのだと。
その時、二階の奥から、低く、だが地響きのような声が響いた。
「そこまでだ、ドルサード」
ハンニバル・スミスが、ゆっくりと階段の縁まで歩み寄る。
そのツルツルの頭は、先ほどまでの滑稽な輝きを失い、
今はただ静かに、重厚な魔力を湛えていた。
「ギルド本部で、これ以上暴れるなら、この老骨に鞭打って、
お主を『ガーランド』へ塵にして送り返さねばならんが……
どうするかのぅ?」
「ふふ、ハンニバル本部長。
……今日はこのあたりで、お暇させていただきますわ」
ドルサードは、何事もなかったかのようにーー
再び優雅なカーテシーを見せた。
だが、その視線はハンニバルではなく、真っ直ぐに華へと向けられている。
「東雲の姪御さん……。
あなたのその『光』、魔王ガーランド様への良い手土産になりますわ。
いずれ、我が国でお会いしましょう。
……招待状は、地獄の業火で焼いたものをーーお届けしますわね♡」
碧い燐光が、微笑するドルサードの姿を足元から飲み込んでいく。
「待ちなさい!」
華が【桜刀・黄金桜大文字】を構え直すが、
その瞬間に碧い光は爆散し、ドルサードの気配は完全に消失した。
「ま……魔族……」
転げ落ちた受付嬢の震える声だけが、静まり返ったフロアに響く。
「……嘘、でしょ……」
階段の途中で、エリナ・エイマスが膝をついた。
ワイバーンを仕留めた自分たちの誇りが、この数分間で粉々に打ち砕かれた。
エリナは震える声で、傍らに立つハンニバルへ縋るように告げる。
「……本部長、聞いて。……私が、ハゴネの山中でワイバーンを討ったとき、
感じたのは魔族の気配だけじゃなかった。
もっと……もっと神々しくて、冷徹なまでの『格』の違い。
あれは、魔族なんてものじゃなかった……」
エリナの脳裏には、ワイバーンという雑魚の背後に潜んでいた、
世界の理ーーそのものを塗り替えるような、黄金の覇気が焼き付いていた。
「魔王四天王」の絶望すらも「収束」させてしまう華の背中を見て、
エリナは悟る。
自分が戦っていたのは、この世界の表層に過ぎなかったのだと。
そして、気丈な彼女らしからぬ態度をギルドに晒した。
力なく階段にヘナヘナと横たわる姿に、ギルド内が騒つき始めた。
エリナ・エイマスは折れたプライドを抱えるように、
ただ華を見つめていた。
「……あなた、一体、何者なの……?」
その問いに華は、刀を鞘に納め、銀髪を掻き上げた。
彼女の視線は、もはやギルド内にはない。
遥か天上、自分を見下ろしているであろう「伯母様」と、
そしてこの世界の異変の元凶へと向けられていた。
「私はただの、お節介な姪よ。……ティグル、行きましょう。
まだ、鼻を効かせなきゃいけないーー『ネズミ』たちが残っているわ」
ーーここは魔族の国『ガーランド』の王宮。
その様子を水晶に映し出しながらーー
奥の玉座で微笑していた男の肩が、不意に小刻みに揺れた。
やがてそれは、広大な謁見の間に響き渡る高笑いへと変わる。
「ははは、あのドルサードがな。はははははは!」
ーーひとしきり笑い終えると、王宮は再び、凍り付くような静寂に包まれた。
第2幕完
お読みいただき、ありがとうございます。
このエピソードは仲良くしていただいております、
『桃源 華』様をモデルにしたーー彼女に特別友情出演していただきました。
Xアカウント @hana_tougen @Tougen87
華ちゃんはカクヨム、アルファポリスサイトで人気のファンタジーも掲載してます。
https://kakuyomu.jp/users/tougen_hana
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/817268736
華ちゃんありがとう♪( ´θ`)ノ
これにて第2幕は完結です╰(*´︶`*)╯♡
引き続き第3幕もよろしくお願いします・:*+.\(( °ω° ))/.:+




