女神の姪編 1 〜交錯する運命の歯車〜
華ちゃん再登場╰(*´︶`*)╯♡
それはーーゴクトーたちがホビットの里を出る前日の出来事。
三柱がゴクトーたちを見守る中、
ハゴネの山中では、彼らの知らない運命が動き出していた。
「にゃんだ、ワイバーンなんて気配すら感じないにゃ」
ーーここはハゴネの森の奥深く。
彼女は両手に愛用の魔導銃を携え、音もなく木々をすり抜けていく。
世界の喧騒とは無縁の静寂。
「グギャギャー!!」
突如、くぐもった鳴き声とともに森が闇に包まれる。
一気に夜に放り込まれたような錯覚。
見上げた空には巨大なワイバーンと格闘する八頭のペガサスが旋回し、
まるでペガサスが制空権を占拠しているかのよう。
木々はガサガサと擦れ合い、背筋も凍るような冷気が吹き抜ける。
その瞬間、足元に伝わる地響きとともに、
ティグルの柔らかな獣耳が、”バタン”とした轟音を捉えピクッと動いた。
「ん?……あれはエリナ・エイマスたちにゃ。とどめを刺したにゃ。
にゃらも負けてられにゃい」
縦長に光る琥珀の目を細め、断裁するようにつぶやく。
エリナ・エイマスーー
【七つの大罪】にしてLustの【美神】とも言われるS級冒険者。
同じく本部からレイド(依頼)を受けた、ライバルの一人。
有名クランーーGODDESS(女神)のリーダーでもある。
魔導銃を握る手にじとりとした汗を滲ませながらも、
その口角は微かに上がっていた。
”キィィィィィィィン……”
低く唸るような駆動音を響かせる魔導銃を構え、
彼女は”真の獲物”が姿を現すのを待つ。
S級冒険者、ティグルは未知の運命に踏み込もうとしていた。
一方上空ではーー。
「ヒヒーン」
「グギャギャーーー!」
ハゴネの山中を飛び交うペガサスの群れは、
一頭の巨大なワイバーンを仕留めていたのである。
ワイバーンを『アイテムボックス』に収めた妹が声をかける。
「エリナ姉様、この付近にワイバーンの気配をもう感じません」
「わかったわ。とりあえず本部に戻るわよ」
その言葉を皮切りに、ペガサスの群れはハゴネの山間を滑空していった。
エリナたちのペガサスの羽音が遠ざかり、
ハゴネの森に不気味な静寂が戻る。
だがーー。
「ギャーギャー」
夥しい鳴き声とともに森が闇に包まれる。
ふと見上げた空にはーー
黒鍵鳥の大群が上空を旋回、
何かに怯えているようにも見える。
ティグルの琥珀色の目は、まだ虚空を睨み据えたまま動かない。
「……あいつの目は節穴にゃ。雑魚を散らしただけで満足して帰るなんて、
おめでたい奴らにゃ」
鼻をひくつかせ、空気に混じった「格上」の臭いを嗅ぎ取る。
ティグルが狙っているのは、先ほど墜とされたワイバーンなどではない。
一糸乱れぬ黒鍵鳥の旋回。
あれを裏で操っている、魔物たちの真の王。
「とっておきの獲物……。独り占めさせてもらうにゃ」
二丁の魔導銃の駆動音ーー
キィィィィィィィンとした魔力がこめられる音が、
さらに高い周波数へと跳ね上がる。
銃身に刻まれた魔導回路が青い燐光を放ち、
彼女の周囲の空気がチリチリと震え始めた。
その時、静寂を切り裂いて、
森の奥から地響きさえ置き去りにするほどの「真の咆哮」が響き渡った。
だが次の瞬間、いきなり背後からかけられた澄んだ声。
「ふふふ、待ちなさい」
「誰にゃ?」
ティグルの類まれな気配察知のスキルでも、気づかない。
それはまるで空気、いや自然にも溶け込むような未知の殺気。
ティグルが弾かれたように振り向くと、
そこには炎に照らされたような夜の闇の中、
抜刀したまま静かに佇む半エルフの美女がいた。
銀色の髪を高く結い上げ、背中には見事な鳳凰のTatoo。
和装を思わせる着物を見事に着こなすその姿は、
ハゴネの森の異質な静寂にあまりにも馴染みすぎていた。
「……あんた、エリナ・エイマスの仲間じゃないにゃ。
その身のこなし、ただ者じゃないにゃ」
ティグルは魔導銃の銃口を向け、身体の毛を逆立てて警戒する。
銀髪の彼女は視線をティグルから外さず、
だがその意識はさらに奥ーー
森の深淵で息を潜める「真の王」へと向けられていた。
「私はただ伯母様の神託に従い、エリナ・エイマスを追ってきただけ。
ふふふ。撃ってごらんなさい」
その言葉に、ティグルはニヤリと口角を上げる。
その挑発が空気に溶け込んだ瞬間、ティグルは反射的に引き金を絞った。
バァーーーン!!
鼓膜を突き刺すような爆音。
銃口から放たれた魔力の光弾が、森の闇を一瞬だけ青白く焼き払う。
驚いた黒鍵鳥たちが悲鳴のような鳴き声を上げ、
クモの子を散らすように上空へ逃げ去っていく。
風がその銃声を森の隅々まで運び、静寂が戻ろうとしたーーその時。
ティグルは、背筋を駆け上がるようなゾクッとした寒気に襲われた。
「……っ!?」
視線を落とせば、自分の首元に白い刃がギラリと冷たく光っている。
いつの間に背後に回られたのか。
気配すら、風の音さえも感じなかった。
S級冒険者として修羅場を潜り抜けてきた彼女の膝が、
屈辱的にも諤々と震え始める。
「あんた……にゃ、にゃにものにゃ……!」
喉の奥が引き攣り、ティグルは詰まる声を絞り出すように押し出した。
「ああ、私? 私の名は華、華ちゃんと呼んでね♡」
「……にゃ、にゃめるにゃあッ!!」
首元に冷たい刃を突きつけられながらも、
ティグルの野生は死んではいなかった。
諤々と震える膝を、残った全魔力で無理やり押さえつける。
ーー人生で2度目の恐怖。
だがS級冒険者のプライドが、ただ観念することを許さない。
「近距離(ゼロ距離)なら、避けれにゃいッ!!」
ティグルは体をひねり、
首元の刃を紙一重でかわすと同時に、
二丁の魔導銃を華へ向けた。
銃身の魔導回路が限界を超えて青白く発光する。
「【オーバーブースト】!!」
”バァァァーンッ!”
渾身の一撃。
至近距離での爆発的な魔力弾が、
華の全身を飲み込むーーはずだった。
だが華は眉一つ動かさない。
彼女が左手を静かにかざした瞬間、
ティグルの放った魔力弾は、
華の目の前でガラス細工のように砕け散ったのである。
「……嘘にゃ……」
ティグルの琥珀色の目が、驚愕に大きく見開かれる。
魔導銃の最大出力をただの手かざしで……
霧散させるにゃんて。
それは物理法則も、魔力の概念も超越した圧倒的な”力”。
格の違いを見せつけられた。
砕け散った魔力の残骸の中で静かに、
だが絶対的な威圧感をまとって銀髪の彼女は佇んでいる。
その姿は、まるでこの森そのものが意思を持ったかのような、
神々しくも恐ろしい存在だった。
「あなたの意地は認めるわ。……でも、私の目的の邪魔はさせない」
彼女は静かに告げると、詠唱を紡ぎ始める。
「天啓を与えし神代の大神よ……我は、力なき大地を歩む儚き存在……
その比類なき根源を、我が魂に宿し給え……」
その周囲に古代の文字が刻まれた、黄金色の魔法陣が展開される。
「ーー【霊獣換装】!」
それは現代の魔法体系には存在しない、失われた神の時代の魔法だった。
魔法陣から放たれた光がティグルを包み込む。
「にゃ、にゃにこれ……体が、熱いにゃ……!」
ティグルの体が、光の中で急速に膨れ上がっていく。
オレンジ色の髪は硬い体毛へと変わり、
衣服は弾け飛び、二丁の魔導銃が地面に転がった。
「ガルァァァァァァッ!!」
光が収まった後、そこにいたのは、かつてのティグルではない。
体長5メートルをゆうに超える巨体ーー美しくも凶暴で巨大な虎。
その琥珀色の目だけが、辛うじてティグルの面影を残していた。
華は巨大な虎となったティグルの鼻先に、静かに手を触れる。
「一時的な魔法よ。私の魔力が尽きるか、私が解除すれば元に戻るわ。
魔導銃は私が預かっておく……それまでは、その姿で私の『足』になってもらうわよ」
巨大な虎は、華の圧倒的な魔力の前に、
もはや抗う気力も失っていた。
S級冒険者としてのプライドは、神代魔法の前にーーあまりにも無力だった。
彼女は観念したように、華の前で静かに巨体を伏せ、その背へと華を促す。
華はティグルの背へと軽やかに飛び乗ると、森の深淵へと視線を向けた。
「さあ、行きましょう。……あの方、ゴクトー様を救いに」
巨大な虎となったティグルは、華を背に乗せ、
未知のネームドが待つ森の奥へと、静かに歩みを進めた。
こうしてーー予想だにしない形で、
二人の奇妙な共同戦線が幕を開けたのである。
そしてゴクトーは、この二人に窮地を救われることとなる。
お読みいただき、ありがとうございます。
このエピソードは仲良くしていただいております、
『桃源 華』様をモデルにしたーー彼女に特別友情出演していただきました。
Xアカウント @hana_tougen @Tougen87
華ちゃんはカクヨム、アルファポリスサイトで人気のファンタジーも掲載してます。
https://kakuyomu.jp/users/tougen_hana
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/817268736
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