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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第2幕 転章。  〜魔性のロカベルとハゴネの旅〜

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いい湯だな「ア・ハハン」 編 31 〜図太いノビと焦るミリネア〜



 ノビのファンが増えるといいなぁ♪( ´θ`)ノ

 イラスト多めです。

 

 




 「ガザグ龍王と名乗っておるのか……

 ワシが『ヤマト』の国を拓いた頃は、

 まだ鱗も生え揃わぬ若龍じゃったがの……」


 神シロは雲間から顔を上げるとポツリと零す。

 その言葉にトランザニヤが口を開く。


「下界じゃ古代(エンシェント・)(ドラゴン)と呼ばれているとはなーー」


 彼はどこか懐かしさを滲ませる声色で言った。


 二柱が顔を見合わせ口元を緩ませる中、

 女神東雲はどこか浮かない表情で下界を見つめ、


「コガラちゃん、寂しそうにはしておりませんが、

 子と離れる母の気持ち……

 わたくしの胸まで、その震えが伝わってくるようですわ」


 そう言って深く息をついた。





 ーーその頃ゴクトーは朝早くからプレシャス邸の露天風呂で、

 コガラの母との念話を終え、未だ複雑な心境に整理をつけていた。




 ◇(主人公のゴクトーが語り部をつとめます)◇







 露天風呂から上がる蒸気が朝日に照らされ、

 七色のプリズムを御影石に落とす。

 

 「チチチ」と森の奥からは黒鍵鳥ブラック・ロック・バードの雛のーー

 可愛らしい声が木々の揺れとともに、風に乗って運ばれてくる。

 卵の腐ったような硫黄の匂いとともに、ポコポコと湧き出す湯。



 「まぁ、気にしても仕方ないか……」


 ふと漏らしながら気を取り直し、木桶で身体に湯を掛けた。



「コガラ、かけ湯をしないとダメだぞ。湯に入る前の作法だ」


「かけゆ? それってなぁーに?」


 コガラが頭の上で"パタパタ”と飛びながら問い返してくる。

 その仕草が妙に可愛らしく、思わず表情が緩んでしまった。


「これだよ」


 俺は木桶で湯を掬い、優しくコガラの体に湯をかけた。


「あ、あちゅい!……あるじー、これがかけゆ?」


 コガラは湯を浴びると、"ブルブルブル”と体を震わせて水切りをする。

 その勢いで俺の顔に水飛沫が飛んできた。


 

 ……コガラや……可愛いけども……。


 

 苦笑いを浮かべながら顔を拭うと、

 コガラが得意げに飛び回り、湯船へ向かった。


「コガラ、湯に入る前はかけ湯を忘れるなよ!」


「わかったー!」


 俺の言葉に元気よく返事するコガラが、“ザブン”と勢いよく湯に飛び込む。

 その後は羽を畳み、湯の中を”スーッ”と泳ぎ始めた。



 そうか……コガラは妖精龍だったな。

 そりゃ、かけ湯なんて文化は知らないのも無理ないか……。


 

 心中で納得しながら肩まで湯に浸かる。


「HAHAHA」


 コリン語でひとり苦笑。


 湯船の中を気持ち良さそうに泳ぐコガラを眺めていると、

 自然と口元が綻ぶ。


「それ、泳ぐって言うんだぞッ!」


 俺の言葉にコガラは「ピ〜〜〜〜〜〜♪♬♪」と楽しそうに鳴いた。


「まぁ、いいか……こんな平和な時間もたまには悪くないしな」


 独り言ち、眠りについている女子たちの安らかな顔を妄想しながら、

 湯船に浸かっていた。


 波紋を感じ視線を向けると、コガラが気持ち良さそうに泳いでいる。


「へへぇーー」

 

 その姿を見ているだけで、不思議と心が和やわらいでいったーー。




 


 ■(女神東雲が語り部をつとめます)■


 


 そんな穏やかな時間が流れる中ーー

 ミリネアだけがゆっくりと目を覚まし、静かに身体を起こしていた。


 彼女は微睡みの中、背筋を一本の氷柱が滑り落ちた。

 

 ーー異様な【覇気】。


 それが空気の温度すら変えたように思えた。


「っ! 何事?」


 コガラの母とゴクトーが交わした念話の内容が、

 ゴクトーの内心を通じてミリネアに読まれていた。


《「龍皇〝ギャラン〟が、この子を迎えに来るでしょう。

 それまで、どうか、この子を貴方様に託させてください。

 妾の最後の願いでございます……」》


 その重々しい言葉の響きに、ミリネアは思わず息を止めた。

 

 彼女は仲間を起こさないよう気を配りながら、

 サンダルを履き、障子を慎重に開け廊下へと出る。


 異常を察した彼女は『アイテムボックス』から、

 愛用の錆鉄色の鞭を音も立てずに取り出した。


「急がないと、ご主様が!」


 即座に古代魔法【ロカベル】ーー「【プッキス:°トンレイ・サ】」と、

 静かに発動させ、魔法陣とともに、

 ほとんど足音を残さず廊下を一瞬で駆け抜ける。



 挿絵(By みてみん)


 そのスピードは人智を超えるスピード。

 彼女が【ゴッド・スキル】と呼ばれるひとつの理由でもあった。

 

 瞬く間に露天風呂の男湯前に辿り着いたミリネアは、

 色違いの布暖簾を注意深く確認し、引き戸を慎重に開けた。


 脱衣所に踏み入ると、鞭を構えながら鋭い声を放った。


「ご主様! ご無事ですか!?」


 風呂場のガラスの引き戸を勢いよく開けたミリネアの目に映ったのは、

 湯船で楽しそうに泳ぐコガラと、湯船から出たゴクトーの姿。



 挿絵(By みてみん)

 

 

 目の前の状況を理解した瞬間、彼女の凛然とした表情が一転し、

 耳まで真っ赤に染めながら目を逸らしたーー。





 ◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇



「……見知らぬ【覇気】を感じたのですが……?」


 そう言うミリネアの視線を避けながら念話で伝える。


《「ミリネア、今は内緒にしてくれ。後で説明する」》


 ミリネアは無言で頷き、念話を返してくる。


《「ご主様……古代(エンシェント・)(ドラゴン)のことは、

 のちほどワタクシが知る限りのことを……》


《「ああ、頼む」》


 彼女の念話を受け、一先ず俺は安堵した。

 

 一方ミリネアは深く息をつくと、鞭を『アイテムボックス』にしまい、

 恥じらいを浮かべた表情で口を開いた。


「あのぅ……ご主様。よろしいかったらご一緒しても?」


「ん?」


 意外な申し出に一瞬驚きながらも答えた。


「お、俺か? か、構わんよ。コ、コガラは、ど、どうだ?」


 喉を詰まらせる俺の言葉に、コガラが嬉しそうに言った。


「おおねいちゃん、だいちゅき! いっちょに、はいる!」


 

 その言葉にミリネアは照れくさそうに笑みを浮かべると、

 ゆっくりと帯をほどき、浴衣を脱ぎ去った。


 湯気に透ける朱玉のようなその肌には、黒いレースが張り付きーー

 それをすべて、タオルとともに蒸気の中に溶かしていった。


 挿絵(By みてみん)


 

 その瞬間ーーカチッとした音が脳内に響き、『妄想図鑑』が開かれた。


 

 「ぐっはっぁああ!

 き、昨日とは、ち、違うインナー……黒は似合ってるから良いが、

 か、かなり、き、際どいぞッ!? これが主の好みなのか?」


 スッと現れ動揺する”死線”の言葉に俺は息を呑んだ。 

 

 「んな訳あるかッ!早く引込めええええ!」


 次の瞬間、”死線”はひとつ目のまなこをパチっと閉じ、

 吸い込まれるように図鑑に消えた。



挿絵(By みてみん)

 

 

 我に帰る俺の顔をじっとみながらミリネアが苦笑を浮かべる。

 どうやらミリネアには『妄想図鑑』がはっきりと見えるらしい。

 言葉には出さないが態度と彼女の思考でわかる。



 そんな俺を他所にミリネアは脱いだ浴衣を籠に入れると、

 恥じらいながら一礼して風呂場に足を踏み入れた。



 「失礼いたします」


 彼女は引き戸を静かに閉め、バスタオルを物干しに掛けると、

 俺の横で木桶に湯を汲み始めた。

 その動作は優雅で、どこか洗練された美しさがあった。


「あるじー! おおねいちゃんが、かけゆちてる!」


 コガラが嬉しそうに声を上げる。

 それに気づいたミリネアが微笑み優しく語りかける。


「コガラ、そうよ。お風呂に入る前にはかけ湯をするの。よく知ってるわね……」


 彼女のその柔らかな微笑みに、

 俺もどこか心が温かくなるのを感じたーーその時。


 静けさを破るようにーーピシッ、と何かが空気を裂いた。


「あるじー!」

「ご主様!」


 コガラと焦るミリネアの声が同時に風呂場を満たし、

 俺は反射的に背後を振り返った。


 次の瞬間、ガラッ!


 ガラスの引き戸が勢いよく開いた。


挿絵(By みてみん)


「ゴクどーさん! 起きたら居なかったんで探したんさ! やっぱりこごに…」


 現れたのは腰にタオルを巻いたノビだった。

 その訛り混じりの声と慌てた様子は、どこか憎めない。


「ピー!」


「ノビくん」


 コガラとミリネアが安心したように声を漏らした。

 そんな中、空気を読めない男が口を開く。


「コガラおめぇさ…泳げるの? すんごいなぁ〜!」


 楽しげに言いながらも彼の目は泳いでいた。


 コガラが湯の中を小さな体で泳ぐ姿が目に入ったのだろうか。

 

 予想はビンゴ! 次の瞬間、ノビの視線がミリネアへ。


「あれ? ミリネア教授……なんで男湯に?」


 そう言ってノビは頭を傾げたが、すぐにその疑問の答えを見つけたらしい。


「あぁ! そうか……ミリネア教授も、

 ゴクどーさんの彼女に立候補してたがらか! 積極的で良いんさ!」


 一方のミリネアはノビに裸体を見られたことなど気にする様子もなく、

 優雅に湯船へ浸かって振り返る。


「ノビくん、君は良くわかっているわね。

 ワイバーンの討伐が終わったら、一度学院に参りますので、

 考古学の単位を、こっそり差し上げておきますわ。ふふふ」


 そう言ってミリネアがパチッとウィンクを飛ばすと、

 ノビの顔が一瞬でパアッと輝いた。


「しだっけ! オラ、卒業単位も取れっしー、『A級』にも上がれるんさ!

  ありがどうございまづ、ミリネア教授!」


「”ありがとうございます”だろ、ノビ」


 俺のツッコミなど気にしない、彼の図太さを羨ましく思う。


 そんな中、コガラが「ピ〜〜〜〜♪♬」と可愛らしく鳴き、「ありがどう ございまづ」と小声で零す。


「コガラ、訛りは覚えないの!」


「あるじーー なまりって なあぁに〜?」


「ノビの喋り方を真似しないの、わかったか?」


「わかっだぁーー!」


 肩に飛び乗ったコガラに俺は軽くため息をつく。

 

 一方その横でノビは、全く気にする様子もなく、

 腰に巻いていたタオルを頭の上に乗せ、木桶で掛け湯を始める。


「ゴクどーさん、一緒に入りまじょう。コガラもオラと入るんさ!」


 一切躊躇なく湯に飛び込むノビに、思わず目が丸くなった。


「ぴょこぴょこ〜〜♪ ちゃぷちゃぷぅ〜〜♪」とコガラが続いて湯に入る。


 小さな体でノビの肩に寄り添うように近づき、「いい子いい子」されていた。


「きもちいいんさ!」「ピピ〜〜〜ピ〜〜♬♪」と続け様に鳴き声を飛ばし、気持ち良さそうなコガラにノビが叱る。


「コガラ、“んさ”はいらないんさ」


「いらないんさ!」


 片足を湯に入れ咄嗟に反応した俺はその時気づく。


「"ハッ”」


 

 ……やってしまった、つられた…。


 ノビとコガラの訛りが伝染ってしまった俺に、

 コガラが小さく跳ねるように湯の中で浮かび、

「わかってるんさ! あるじーー!」と揶揄うように言葉を投げた。


 湯の中で顔に熱が籠る俺を見て、ノビが首を傾げた。


「ゴクどーさんの顔さ、ずいぶん赤いけど…鼻血出ないの? 大丈夫?

ミリネア教授のあの姿見でも、なんどもないのぅ?」


「俺にとってミリネアは……家族みたいなもんなんだよ」


 俺が軽く答えると、横でミリネアが鼻で笑うように言葉を挟んできた。



「たかがーーワタクシの裸如きで、

 ご主様が鼻血など出すわけもありません。


 ご主様に家族同様と思っていただけるだけで、

 ワタクシは十分幸せ者なのですから……」



 (そう、ワタクシはあくまでご主様の盾……期待してはいけない愛……けれど……今は、これで十分なのです……)


 

 ミリネアの気持ちが伝わってくるのは嬉しいがーー。

 あろうことか、

 俺もミリネアの思考をいつの間にか読み取るのが癖になっていた。


 一方で真っ赤に頬を朱らめるミリネアはノビの方へ視線を向ける。



 挿絵(By みてみん)



「ところでノビ君? 君はこの姿を見ても……平気なんですよね?」


 その言葉にノビは躊躇いもなく、真っ直ぐな目で答えた。


「オラはパメラ先生一筋なんさ。他には目もぐれないんさ!」


 その訛り混じりの言葉に、ミリネアが軽く笑いながら肩をすくめた。



 本当にノビの奴、

 パメラが好きなんだな。それは応援するよ。


 

 思いながら"ニタリ”と口元を緩める。



 「ノビ君……ルシーヌ、いえパメラ姫様はハードル高いでしょうけど、応援しますわ」


 「ありがどうございまづ!」


 ノビはミリネアの言葉に深く頭を下げながら、コガラを撫で続ける。


 その一途な様子に俺は心の中で”タフな奴だな”と思わず感心した。


 他方コガラは「ぷはぁっ! コガラ、しあわせなんさ〜」、「ありがどう ございまづ」とぶつぶつ。


「おい、コガラ。わざとだろ!」


 俺が突っ込むと、コガラは「ピピ〜〜〜ピ〜〜♪♬」と無邪気に鳴く。


 ーーこうして、妖精龍と教授と田舎者。

 ひとときの湯けむりは、なぜかとても温かった。



 挿絵(By みてみん)





「ピェックション!(ちゅぢゅぐんさ!)」







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ミリネアさん……健気すぎます(´;ω;`) コガラちゃん……可愛すぎます(о´∀`о) 今日もイラストたっぷりで読みごたえありました~! 次も楽しみにしてますね!
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