いい湯だな「ア・ハハン」編 30 〜コガラの成長と龍皇一族〜
コガラの秘密に迫ります♪( ´θ`)ノ
「おお、やはりあの子のことが、心配なのじゃな」
零す神シロの言葉に、女神東雲が瞳を潤ませる。
「しかしゴクトーは、計らずでも幸運に恵まれているよな」
下界を覗くトランザニヤは、そう言って黒銀の目を細めた。
ーーその頃ゴクトーたちは、プレシャスからナガラの話を聞き終え、
寝床がある部屋へ移動していた。
◇(主人公のゴクトーが語り部をつとめます)◇
「こちらに、ゴクトーさんとノビさんがお休みください」
サリに案内され、俺たちは布団が敷いてある部屋に向かった。
薄暗い廊下を進む足音が、静かに小さく響いていた。
サリが障子をすーと開ける。
室内には整然と布団が二組並べられており、
柔らかい月明かりが窓から差し込んでいた。
ノビが目を輝かせながら布団を見つめながら、
「お、おお……ありがたいんさ」と嬉しそうにつぶやく。
その瞬間、愛らしい声が響く。
「ピピォ〜〜!」
振り返ると、
ミーアに抱かれるコガラが小さな羽をパタつかせ、こちらを見る。
その瞳が何とも言えない切なさを宿していた。
《「あるじー!」》
頭の中に直接響く念話に思わず笑みが溢れる。
そっと手を伸ばし、コガラを抱き上げる。
体温がじんわりと手に伝わり、なんとも言えない心地良さ。
その小さな体を布団の上に優しく下ろした。
そんな中、「おやすみなさい」とサリが穏やかに囁く。
「ああ、おやすみ」
答えると、サリは一瞬だけ柔らかな笑みを浮かべ、
続けてノビにも声をかけた。
「ノビさんも、おやすみなさいませ」
「おやづみなさ……ふぁっ、ふぁい……」
ノビは欠伸を堪えきれず、目を擦りながら返事をした。
一方で廊下から聞こえてくる仲間たちの声。
「ダー様、おやすみなさいませ」
「おやすみ、へんダー」
「ゴクちゃん、夜は長いのよ〜ん♪」
「リーダー、お疲れ様でございます」
「ご主様、ごゆるりとなさってくださいませ」
それぞれの声が個性豊かに響く。
揶揄い半分のものもあれば、礼儀正しいものも混じっているが、
俺の心には全てが温かく届いていた。
布団に横になりながら、コガラが小さな羽を動かして眠る姿を見守る。
「……いい夜だな」
「おやづみなさい、ゴクどーさん」
ノビが布団に入るなり、
『秒』で「スーピー…スーピー…」と規則正しい寝息を立てる。
寝つきだけは天下一品。
俺は小さなコガラを布団の上から抱き上げる。
その身体は羽毛のように軽く、ほんのりと暖かい。
コガラを抱えたまま、「ノビも、ああ見えて図太いんだよな…」とぼやく。
そのまま自分の布団の上に横になり、
胸の上に乗せるとコガラがこちらを見上げて小さく「ピピ」と鳴いた。
「コガラ、おやすみ」
その言葉にコガラは「おやちゅみって、なあに? あるじー」と。
小首をかしげるような愛らしい仕草を見せる。
だが次の瞬間には『秒』でスヤァと眠りにつく。
その無防備な姿に思わず口元が緩んだ。
俺は枕元の『明灯の魔導具』のスイッチをOFFにして、
ぼんやりと頭を巡らせる。
プレシャスの息子…『カブ』だったか。
どんな奴なんだろうな。
フロド翁の弟子入りしてるって話だがーー。
ミリネアも行きたがってたし、
討伐が終わったら『コリン聖教皇国』に行ってみるか……
シスターの顔も見たいしな。
そんなことを考えながら瞼を閉じた瞬間、
隣の部屋からミリネアの念話が飛び込んできた。
《「ご主様、ワタクシも是非お供させてください」》
《「ああ、わかってるよ」》
《「ありがとうございます、ご主様」》
《「ミリネアも疲れただろう。ゆっくり寝てくれ」》
《「おやすみなさいませ、ご主様」》
《「いろいろありがとうな。おやすみ、ミリネア」》
念話を終えると、いつの間にか深い眠りに落ちていったーー。
■(神シロが語り部をつとめます)■
「皆様、こちらでお休みください」
サリの声は静かだが、どこか優しさを含んでいる。
障子をすーーと開けたその先には、六組の布団が整然と敷かれていた。
「皆様……それでは、おやすみなさい」
サリの挨拶にそれぞれが笑顔を浮かべながら応じた。
障子がトンと閉められると、部屋には穏やかな静寂が訪れた。
外の風が窓を揺らし、彼女たちはそれぞれの夜を過ごす。
「にゃしゃ〜い」
アリーは布団の上で猫のように丸まり、静かに寝息を立てる。
その隣ではミーアが布団に横になり、
アリーの寝顔を〝♡〟の目でじっと見つめていた。
「アリーちゃん…可愛い…でも、抱きついたら嫌われちゃうよね… 我慢、我慢…」
ミーアは小声で漏らしながら、愛おしそうに微笑んでアリーを見つめる。
やがて自分の布団に顔を埋め、目を閉じた。
ミーアの隣ではミリネアが横になっていた。
彼女の顔には穏やかな微笑みが浮かんでいるが、
瞼は閉じられたままーーまるで眠っているのか、起きているのか、わからない。
「ミリネア教授…こんな感じで寝るの?ちょっと怖いわね。
あーあ、ゴクちゃんとは別々の部屋ね」
隣でそう零すパメラが簪と帯留めを外しながら、諦めたようにため息をつき、布団に潜り込んだ。
「ナガラ兄様の冒険の話、凄かったな。アリーの寝顔はいつ見ても可愛いわ…」
頭から布団を被りつぶやくジュリは"ニヤニヤ”と笑みを浮かべたまま眠りについた。
そのさらに隣ではアカリが簪を丁寧に外し、枕元の『明灯の魔導具』のスイッチを「おやすみなさい」と言ってOFFにする。
アカリの表情にはどこか物思いに耽った影があった。
「ナガラ兄様…今どこで何を…」
零しながらも隣のジュリの寝息を聞きながら安心する。
アカリは外の風に乗って微かな鐘の音が聞こえた気がした。
「なんだろう、今の音……」
思いが胸を巡りなかなか寝つけない。
だが静かに夜は更けていったーー。
◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇
障子越しの光が、まるで夢の名残をなぞるように差し込んできた。
朝日の柔らかな光が部屋を包む。
胸に感じる妙な重みに目が覚めた俺は、寝ぼけた頭を掻きながら思う。
何だ、この違和感……。
目を擦って胸元を見ると、驚きの余り息を呑む。
「!!!」
昨日まで兎サイズだったコガラが、
かなりの大きさに成長しているではないか。
コガラは目を開け、欠伸でもするかのような表情を浮かべる。
「おはよう、コガラ」
俺のその言葉にコガラが目を丸くして返してくる。
「あるじー、おはようって、なあに?」
その無邪気な問いに胸が締め付けられるほどの愛しさを感じる。
「おはようは、朝起きた時の挨拶だよ。おやすみは寝る時の挨拶」
「ふーん、わかったぁ!」
嬉しそうに返してきたかと思えば、
コガラは背中の羽をゆっくりと広げ始めた。
まだ柔らかそうなその羽が、朝日を浴びて虹色に輝く。
……ミーアの言う通りだ。綺麗な羽だ……これで、飛べるのか?
感心しながら眺めていると、コガラが羽をパタパタと動かし始めた。
「ノビがまだ寝てるから、あんまり羽を動かすと起きちゃうぞ」
「わかったぁー」
素直に羽を畳んで、胸の上で丸くなるーーコガラの本当に小さな声。
その仕草に思わず目尻が下がる。
でも、これ本当に飛べるのか?
ちょっと試してみるか。
思いながらそっとコガラを抱き上げ、障子を音を立てないように開けた。
確か、プレシャスが露天風呂はいつでも使っていいと言っていた。
風呂場なら広いし試せそうだ。
廊下へ出て、朝のひんやりとした空気を感じながら屋敷の奥へ向かう。
男湯と女湯をわける色違いの暖簾をくぐり、引き戸をそっと開ける。脱衣所に入ると、コガラを板の間に降ろした。
「ここなら、羽を思い切り動かしても大丈夫だぞ」
「あるじーー、わかった!」
コガラは一生懸命羽を動かし始めた。
"パタパタパタパタパタパタパタ”
「!!!」
「 へへぇー 」
驚いたことに、緑の魔法陣が現れコガラの体がふわりと浮かび上がる。
さらに不思議なことは俺はその魔法陣が読めた。
古代文字のようだが、『龍皇一族ーーコガラ・ピクシー・ガザグ』と書いてある。
龍皇一族……プレシャスが口にしてたな……。
胸中は複雑。だがとり間コガラを褒めようと口を開く。
「コガラ!凄いぞ!それが飛ぶってことだ!」
「これ、とぶ? ちゅきー!」
コガラの喜びが伝わってきた。
その姿に思わず口元が緩む。
「良くできまちた!」
赤ちゃん言葉で返すと、コガラは嬉しそうに羽を動かした。
「さて、風呂に入るぞ」
俺は曇りガラスの引き戸を静かに開け、
飛び回るコガラを先に風呂場に通した。
"パタパタパターーッ”
コガラが飛んでいくのを見届けてから、脱衣所で浴衣を脱ぎ、
風呂場の曇りガラスの引き戸をトンと閉めた。
外の冷気と合い混じり、
湯気が立ち込める風呂場は、心地良い温かさに包まれていた。
「さて、コガラ。朝風呂を楽しむぞ!」
湯気の向こうで羽ばたくコガラの姿は、
朝の光を受けてまるで神秘的な幻獣のようだった。
愛らしさと美しさが入り混じるその姿に、思わず胸が一杯になる。
「コガラ、お前、本当に凄いな…これからも、成長が楽しみだ」
俺はそう零しながら、湯船に浸かる準備を進めた。
湯気が立ちこめる静かな露天風呂に足を踏み入れる。
突然、背筋に走る鋭い緊張感。
それは言葉では言い表せない『気配』、いや、【覇気】だった。
咄嗟に湯船を見渡す。
「だ、誰だ!?」
震える声が風呂場に響く。
目を凝らすと、湯気の向こうに長いグレーの髪を垂らし、
肩まで湯に浸かった女性の姿があった。
なぜ男湯に……?
顔に熱が籠りながらも胸中は動揺していた。
そこから自然と目を逸らす。
だがその瞬間、コガラの声が聞こえた。
「あるじー どうしたの?」
「コガラ……?」
コガラの声と同時に“もう一つ誰かの声”が重なった気がした。
湯気の中にいたのはーーまさか、コガラなのか?
慌ててもう一度湯船を凝視すると、そこに女性の姿はどこにもなかった。
湯気の中で、羽ばたきながら宙に浮かぶ小さなコガラだけがいる。
いや、待て……
確かに見たんだぞッ!
信じられない気持ちで目を擦りながら問いかける。
「コガラ……今、ここに女の人がいた気がしたんだが……」
《「コガラだけだよー」》
コガラの純粋な返事が念話で返ってくる。
気のせいなのか……?
いや、確かに横顔や肩のラインは見えたはず……。
でもコガラが気配を察知しないはずがない。
頭の中で混乱しながらもーー
「疲れで幻覚でも見たのか?」と零しゆっくりと湯船へ近づく。
「ピ?」
羽ばたきながらコガラが首を傾げ、見つめてきた。
その愛らしい仕草に、思わず息が漏れる。
次の瞬間、背後から鋭い【覇気】を感じ、俺は咄嗟に振り返った。
しかし湯気の中、誰の姿も見えない。
「旦那、用心を!」と『江戸っ子鼓動』が『妄想図鑑』から飛び出し、
耳を澄ます。
だが、何の物音もしない。
湯船から湧き出す、ポコポコとした音だけが風とともに消えていく。
ふと、頭に直接響く、柔らかくも気品のある女性の声が飛び込んできた。
《「コガラと名付けて下さったんですね……」》
「……誰だ!?」
戸惑う俺の脳内に、再び声が響く。
《「この子をどうか、よろしくお願いします」》
だが、その声には深い安らぎと、どこか悲しげな響きがあった。
コガラが全く気づかないなんて……
そんなことがあり得るのか?
思いながらも念話に応じるべく、俺は静かに意識を集中させた。
《「もしかしてだが、コガラの母親か?」》
《「はい……ひと目だけでも、この子に会いたくて」》
その言葉に、俺の胸が騒ついた。
《「ここにコガラがいるのが、よくわかったな」》
《「この子には生まれながらのーー【龍皇覇気】がございます」》
《「龍皇覇気……?なんだ、それは?」》
《「妾の一族が持つ特別な力。
周囲の空気を揺るがせるほどの気配を発するのです。
この子は妾の龍皇一族にとって、大切な跡取りなのでございます」》
《「跡取りって、龍皇一族? 何者なんだ!?」》
《「妾の一族は古代龍ーー
ガザグ龍王の血を引いております。コガラはその直系なのです」》
《「ガザグ龍王……? いや、待て……
古代龍だと?
そんな話、聞いたことがあるような……
それに……さっき湯船に入ってたのもあんたか?人の姿だったが……」》
《「はい。妾の一族は、固有の力で人の姿に変わることができます。
湯に浸かり、身体を癒しておりました。
人の姿の妾を見られたのは、貴方さまが初めてです。
きっと妾の力が衰えている証拠なのでしょう。
妾の命はもう、長くはありません」》
その言葉には、諦念と僅かな寂しさが滲んでいた。
《「それなら余計にだ。
もう一度コガラの傍に来てやれ! まだ間に合うだろう!」》
《「……妾が母と知れば、この子は妾について来てしまうでしょう。
妾の元にいれば、この子の未来を狭めることになるのです」》
その言葉に、俺は苛立ちを覚えた。
《「だとしてもだ! 今だけでも傍にいてやれ!」》
短く強い念話を飛ばす。
だがその瞬間ーー温かい涙が一滴、俺の頬に落ちた。
母親は少し間を置いて念話を続けた。
《「この子の祖父は〝ギャラン〟といいます。
ガザグ龍王の息子で、五龍皇子の一頭です。
いずれピクシー・ドラゴンの長、
龍皇ギャランが、この子を迎えに来るでしょう。
それまで、どうか、この子を、貴方様に託させてください。
妾の最後の願いでございます……」》
母親の気配は薄れ始めていた。
《「ちょ、ちょっと待ってくれ!まだ聞きたいことが……!」》
慌てて念話を飛ばすが、返答は無かった。
まるで一陣の風が去るように気配、
いや、【覇気】そのものが掻き消えていた。
……龍皇一族? ガザグ龍王? 五龍皇子? ギャラン……?
チンプンカンプンーー知らないことだらけだ。
師匠なら、これらの話を知っていたかもしれないが……。
混乱する頭を整理しようとするが、すぐには追いつけない。
ただ、湯船のをスーッと泳ぐコガラの無邪気な姿だけが目に映った。
俺と母親の念話を知る由も無く、
気持ち良さそうに湯に浸かるコガラ。
コガラ……お前は、ただ泳いでるだけでいいんだよ。
思考を沈め深い息をつきながら、
師匠との思い出を頭の中でぼんやりと巡らせていた。
コガラを任された重責と少しの戸惑いが胸にのしかかる。
やれやれ……。
どうなる事やら……まぁ…なるようになるさ。
まずは、コイツを無事に育て上げなきゃな……。
外の景色を眺めながら「ふぅーー」と深いため息をつき、
肌に染み渡る湯の温もりに身を委ねる。
朝の静寂だけが、湯煙の中に満ちていたーー。
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