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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第2幕 転章。  〜魔性のロカベルとハゴネの旅〜

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いい湯だな「ア・ハハン」 編 29 〜アカリの語りとサリの意外な一面〜



 今回の主役はアカリちゃんです╰(*´︶`*)╯♡

 



 

「ナガラの行方か……」


 吐息とともに漏らしながら下界から顔を上げ、

 黒銀の目を細めたトランザニヤが問いかける。


「なぁシロよ、”ねじれ”にかかっていたナガラは、転生させたんだよな?」


 その言葉に神シロは頷き、白鬢を撫で付ける。


「そうじゃが、”輪廻転生”の宿命には抗えなんだ。神代の大神のご意志でな」


 その言葉を紡いだ刹那、神シロの表情は焦点が合わず、呆然と虚空を見つめる。


 一方で寄り添う妻、女神東雲が神シロの肩にそっと手を置き、


「あなた、創造神様のそれもご意志。ですが……双子の片割れに転生させるなど、一体何をお考えなのか……」


 そうつぶやき、彼女もまた遠くを見つめる。


 「トランザニヤ、オレの名を冠した国のーーそれが宿命なのかもしれん」


 とポツリと言の葉を落とすトランザニヤは、下界をじっと見据えた。




 ーーその頃ゴクトーたちは、

 ホビットの翁プレシャスに囲炉裏ばたの部屋で、

 ナガラについての情報を聞いていた。





 ■(神シロが語り部をつとめます)■


 


「わからないんだ……

 二年前、突然、刀も荷物も置いたまま消えて……それっきりなんだ」


 ゴクトーのその言葉にプレシャスと娘のサリが目を丸くし、息を飲んだ。


 囲炉裏の炭が”パチパチ”と音を立てる。


 ゴクトーが話し下手なのを察しているジュリが、

 然りげ無く視線でアカリに『頼む』とサインを送る。



 アカリはそれをすぐに理解し、小さく微笑んで軽く頷いた。


「ダー様は、言葉で説明するのが少し苦手なところがあるので……

 私が代わりにお話を。まあ、簡潔にですが……」


 そう言いながら、アカリは振り返ってゴクトーに視線を送った。


挿絵(By みてみん)


 ゴクトーは涙目でふっと微笑み、

 プレシャスがその様子に小さく頷くのが見えた。


 アカリは燗酒をぐいっと一口飲むと凛とした姿勢で話し始めた。


「私とジュリは、ナガラ兄様を探すために冒険者になりました。


 兄様の行方を追いかけていく中で、

 未踏のダンジョンを攻略して、SS級冒険者になったという話も耳にしました。


 しかし、その後の行方はやはりわらずじまいで……


 そんな中、ビヨンドの村に新しいダンジョンが出現したという噂をーー

 それを聞いた時、私は確信したんです。『兄様なら必ずここに現れる』と」


 彼女は何かを懐かしむように微笑んだ。


 そして少し間を置き、再び紡ぎ始める。


「そこで、私たちはビヨンドの村に向かいました。

 

 そして、冒険者ギルドで運命の出会いがあったんですーーダー様との。


 彼もまた、ナガラ兄様を探していました。

 その夜、宿屋の私たちの部屋でダー様と朝まで語り合いました。


 ナガラ兄様のこと、お互いの旅のこと、そして新たなダンジョンのこと……。


 まるで長年の友人のように話が弾んだのを、今でもよく覚えていますわ」


 アカリは、ふとゴクトーの方を見て頬を染める。



挿絵(By みてみん)



 (くっ……!思い出しちまった……赤三角な)



 そう思いながらも、ゴクトーは口には出さず平静を装っていた。


 囲炉裏ばたの炎が揺らめき、橙色がアカリの表情をさらに柔らかく映し出す。



 

 一方でサリが身を乗り出して「それで、それで?」と急き立てる。

 その言葉にアカリはお猪口の酒を軽く含み、乾いた喉を潤す。

 そして彼女は艶やかに光る唇を動かした。



「続けますね。


 翌朝、ジュリと私は買い物を済ませ、酒場のテラスで休んでいました。


 そこへ声をかけてきたのが、このパメラさんです。


 彼女がカルディア魔法学院の特別講師であると知り、

 その落ち着きと知識の深さに感服しました。


 その後、学院の生徒でビヨンド村に帰省していたノビとも出会い……


 彼は『どうしてもダンジョンに挑みたい』とパメラさんに懇願しましたが、

 最初は断られていました。


 危険を熟知している彼女の判断だったんです。


 でも、ダー様が説得してくれたことで、ノビの参加が認めらたのです」


 彼女の声は柔らかく、それでいて明瞭だった。

 話の進むごとに、皆が自然と耳を傾けていく。


「こうして、私たちは五人のパーティを結成しました。


 ギルドでパーティ登録を行おうとしたその時、

 偶然再会したのがアリーです。

 

 かつて私たち姉妹が一緒に冒険したことがあった彼女に話しかけられ……


 気づけば、彼女もまた仲間として迎え入れることになりました。


 そして、その六人で挑んだビヨンドのダンジョンを、無事に踏破したのです」


 流暢に話すアカリは一息つき、再び燗酒を口に運ぶ。


 ゴクトーを見て「続きをお話ししてもよろしいでしょうか?」と尋ねる。


 その言葉にゴクトーは無言で頷いた。


 一方の聞き耳を立て笑顔を見せるサリは興味津々。

 その傍でプレシャスも酒を飲みながら楽しそうに耳を傾ける。


 アカリは場を見渡し、再び口を開いた。


「ハゴネ地方に向かう途中、ダー様が偶然ロカベルの三姉妹ーー

 ミンシアさん、ミーア、そしてミリネアさんと出会いました。

 

 ダー様が、「パーティに入ってもらった」と、突然ミーアを連れてきたのです。


 その後、ミリネアさんはパメラさんの同僚という縁もあり、

 私たちのパーティに加わることに。


 そして、ハゴネ山中で偶然見つけた崖のワイバーンの巣で、


 私たちは硫黄と卵を回収しました。

 その時、偶然生まれたのがこの子ーーコガラなのです」


「ピ〜〜〜♪♬」


 挿絵(By みてみん)


 突然の起き上がったコガラの鳴き声に場が和む。


 部屋に流れ込む風とともに、ガサガサとした葉の擦れた音が耳に入る。

 囲炉裏ばたの炎もどこか楽しそうにメラメラと揺れる。

 それはまるで、火の精霊たちがーー紡ぐ物語を祝福しているかのようだった。

 

 

 アカリは笑みを浮かべ、静かにまた語り始めた。


 彼女の声は柔らかく、それでいて一言一言が耳に心地良く響く。


「……コガラが生まれた直後でしたーー

 

 ダー様が生まれたばかりのコガラを抱いて微笑んでいる隣で、

 ミーアと少しだけ話していました。


 でも、突然、大きな影が空を覆いました。


 ーーワイバーンです。そいつが山頂に現れ、容赦なく私たちを襲ったんです」


 ミーアがそっと頷き、「あのときは大変だったわよね」と小声でつぶやく。


 頷くアカリの声に、一瞬緊張が走る。


「最初に反応したのはアリーでした。


 すぐに攻撃を仕掛けてワイバーンの動きを止めたんですけど、

 ダー様とミーアがワイバーンに捕えられてしまいました。


 そしてーー暴れるそいつの影響で、投げ出され落下してしまったのです。


 ミリネアさんが鞭を伸ばして必死に助けようとしましたが、

 二人と一緒に川へ転落してしまいました」


 話ながらもアカリの声は僅かだが震えていた。

 

 目を見開いたサリは手で口を押さえる。

 傍でピクッと長耳を動かすプレシャスは、”グビッ”と酒を煽る。


 そんな中、アカリは静かに口を開く。


「川の激流は、私たちが思っていた以上に速く、容赦なく……


 私たちは崖の上で必死に叫びました。


 でも、無力でした。

 結局、三人の姿は激流に飲まれーー見失ってしまいました」


 その言葉にアリーが涙を浮かべ「僕のせいにゃ……」と零し、肩を丸くする。

 黙っていたパメラとノビのーー『師弟コンビ』が声に出した。


「アリー、あなたのせいじゃないわよん」


「そうなんさ!アリーさんは助けようとしただけなんさ!」


 二人の言葉に場がしんとなる。

 部屋の空気が少し重くなり始めたーーその時。


 一息つき、アカリが淡々と紡ぎ出す。


「崖に取り残された私たちは、なんとかして崖を降りようと考えました。


 そこで頼りになったのがーー

 普段はニヤニヤしてる癖に、こういう時に限って頼りになるノビでした。


 彼の『甲羅の胸当て』を使った大胆な発想と、

 パメラさんの【補助魔法】で……なんと『甲羅船』を作り上げたんです。


 それに乗り込んで、私たちは間欠泉を利用して、

 奇跡的に崖の下までた辿り着くことができました」


 その話に、プレシャスとサリが目を丸くした。


 挿絵(By みてみん)



「しだっけ……あれは」


「シー!今いいところなのに、貴様は黙ってろッ!」


 小声のパメラとノビの『恒例行事』に、ゴクトーの口元が緩んだ。


 クスッと笑ったアカリは話を続ける。


「そこからがまた大変でした。

 ダー様たちの落ちた川に甲羅船で乗り込み、流れに乗って下っていきました。


 ジュリがダー様の【覇気】を探し、アリーが匂いや痕跡を追い……


 広い河原に流れ着いた時、

 アリーがダー様のテンガロンハットと火を焚いた跡を見つけたんです。


 それを見た瞬間、希望が湧き上がりましたわ」


 興奮気味に、立膝になったアカリはそっとジュリを見やる。



挿絵(By みてみん)



「テンガロンハットは、流されてしまったはずのもの。


 でも、それを見つけたアリーが匂いを辿り、

 ジュリが【覇気】を追って……こうして私たちはダー様の痕跡を追い続け、

 森を抜け、この里に辿り着いたんです。


 そして、ここでタミちゃんに出会い、翁の屋敷まで案内してもらいましたの」


 話を終えたアカリは、一息つくように燗酒を口に運んだ。


 彼女の話を聞いていたサリの瞳は、

 まるで星空のようにキラキラと輝いていたーー。



 



 ◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇




 

 ーーあれは、あの夕方だった。

 ミリネア、ミーアと肩を寄せ合って火を囲みながら、兎を食べたあの時。

 テンガロンが、飛ばされて……もう見つかることはないと思ってた。



 どうしても気になり尋ねる。


 「お、俺のテンガロン……見つけたのか……」


 すると何かメモを取っていたジュリが微笑んで、

 腰の『万能巾着』を示した。


「ここにしまってあるよ、大丈夫」


 ジュリの穏やかな声に、ほっと息をつく。


「……良かった、本当に見つかったんだな」


 つぶやきながら、ミリネアに念話を飛ばす。


 

《「言う通りだったな」》


《「ご主様、見つかって良かったですね!」》


 念話を返すミリネアが優しく微笑む。

 

 その表情に安心した俺は、ふとサリに視線を向けた。


「サリ、師匠の冒険の話を聞かせてくれないか?」


「はい! 喜んでお話します!」


 サリは興奮気味に頷きながら、新たな物語を紡ぎ始めた。

 

 その間、プレシャスが杯を傾けながら静かに聞き入って、

 笑いながらたまに口を挟んでいた。


 語られる物語に耳を傾けながら、俺はあることを思い出していた。



 待てよ……あの時、ダンジョンで山分けした魔導具って……。



 頭を掠める宝箱の記憶。

 気づいたものの、そのことについては口に出さず、

 黙ったままサリとプレシャスの話に耳を傾けた。


 その時、プレシャスが静かに口を開いた。


 「ナガラさんの強さは、ワタシも存じております。


 昔、遠くから一度だけ……それはそれは、見事なお手前でした。


 きっと、ひょっこり戻って来られることでしょうーー。


 ほっほ。 あの方は、“そういう方”ですからね。


 それにしても……運命の悪戯でしょうか……

 これはミーアさんのお陰ですね。


 ワタシに何かお力添え出来ることがあれば、

 遠慮なくおっしゃってください。ほっほ」


 その言葉に場が和み、皆が笑顔で頷く。


 そんな中、アリーが欠伸をしながら目を擦り、

 頭を小さくコクッとさせ、立ち上がった。


「眠いにゃ〜」


 そう言いながらふらつく。



 挿絵(By みてみん)


 

 一方でプレシャスが微笑みながら立ち上がる。


「夜も更けました。今日はこれぐらいでお休みください。


 明日の朝は、ゆっくり露天風呂でも楽しんでいただければ……。


 外の源泉も……お好きにどうぞ。サリ、皆様を寝床に案内して差し上げなさい」


「はい、皆様、こちらです」


 サリは名残惜しそうに杯を飲み干しながら、立ち上がった。


「ご案内します!……あっ、でも飲みすぎたかも〜っ」


 陽気に零すーー少し千鳥足になるサリだった。


 こうして、"思い””想い”を胸に俺たちは、それぞれの部屋へと向かっていったーー。

 

 歩きながらアリーがつぶやく。


「はぁーーーあ。つ・づ・くにゃ……むにゃむにゃ……」










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― 新着の感想 ―
仲間たちの旅路がひとつにつながっていく心地よさと、最後に見せるサリの意外な一面がたまりません。 あたたかさと続きへの期待が同居した、実に『いい湯だな』な一話でした(^^♪
アカリちゃん!なんて大胆な! |ω・`)ジー ゴ、ゴホン! テンガロンハット見つかって良かった~!(*´ω`*) やはりあれがないと。 続きも楽しみです!
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