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妄想図鑑が世界を変える?【異世界トランザニヤ物語】  #イセトラ R15    作者: 楓 隆寿
第0幕 序章。 〜妄想図鑑と神代魔法士〜

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三人の視点。 赤三角劇場。 (『赤』シリーズ前編)










 「こりゃいかん」


 神シロが口をへの字に曲げる。



「ああ、大丈夫か?奴は?」


 黒銀の目の友が肩をすくめた。



 神々は興味津々といった表情で下界を覗く。







 ■(まずはジュリの目線で……)■



 さっきから何よ、デレデレと、目尻下げちゃって。でもわかってるの。


 男の人は美貌とスタイル、いや違うわね。大きな胸で選ぶってこと。


 さっきからネーにばっかり気を取られてるけど、わたしだって足には自信があるんだからね。

 

 わたしはドアに寄りかかった。


 トントントントン… 


 イライラして(かかと)を何度も踏んだわ。


 腕を組んでゴクトーをじっと睨んでやったわ。



 ネーが彼にお茶を差し出す。 その仕草、何?


 そのわざとらしい、お淑やかな振る舞いが気に入らないのよ。


 あ、また、そんな目でわたしを見る。


 顔は赤くなってないわよ。さっきちょっと見られて恥ずいけど。


 わたしの顔を見てネーがニヤッと笑った。


 きっと、何か魂胆があると思うの。


 優しいネーが豹変するってことは、これは本気ね。


 わたしの直感は当たるの。


 この時、わたしにネーが言った。


 「ジュリもお座りなさい」


 はいはい。わかりました。


 わたしは不貞腐れながらもソファに座ったわ。


 思いっきり、自慢の美脚を差し出してやったわーー。







 ●(ここはアカリ目線で)●




 私は不貞腐れる妹を見て思う。

     

 ジュリの顔ったらないわね、恥ずかしがってるのね。

 でも、それもまた、可愛いわ……って。


 私は口元が緩んで"ニヤリ”、思わず口角を上げちゃったわ。

 

 気づいちゃったかしら、私の顔。


 「私の好みのタイプです」って、出ちゃってたかしら?


 それはそれで……この機を逃すもんですか。

 

 ふふふ。今、誰が見ても私の顔って怪しいわよね。

 わかってるわ。

 ジュリの目がそう語っているもの。

 いいわ。ここで軽くジャブよ。


 私は次の一手をどうすべきか考えた。


 とりあえず、実家から持ってきた……そうそう、これで間を繋がなきゃ。


 「粗茶ですが……どうぞ」


 私はちょっと鼻にかけた声を出したわ。


 ふう、まずは良かったわ。

 煎茶が気に入ったみたいで。


 ……ジュリが気にしてるの、ちゃんと分かってる。

 でも、私は私のやり方で、見せたいの……

 この人が“見る価値のある男”かどうかって……。

 

 勇気がいるけど。

 それはそれ、まずは反応を見ないとね。


 よーし、行くわよ。

 覚悟なさい、ゴクトーさん? ふふふ。


 

 ふふふ……やっぱり見てるわね。

 

 殿方は本当にーーこういうのが好きなんだから……ふふふ。







 ◇ここからゴクトー目線で◇




 その仕草には、どこか凛とした雰囲気が漂うな。

 まるで、さっきまでの人物とは別人のようだ。


 

 俺は思いながら、アカリの動きに注視していた。

 アカリが湯気の立つお茶を静かにテーブルに置く。



 このギャップ、どういうことだよ。

 

 口には出さず、取っ手のない素朴なカップを見る。

 中身は鮮やかな濃い緑色。


 漂う香りにどこか懐かしさを感じつつ、手を伸ばす。



「あっつ! フー…フー…」



 息を吹きかけ、一口飲む。

        


 なんだこれ、口の中に広がる渋みと、ほのかな甘さ。 

 

 驚くほど、さっぱりとした余韻が……喉を通り抜けるな。



 思いながらお茶を啜った。



「……美味いな、これ」


 思わず感嘆の声が漏れた。




「『ヤマト』の煎茶よ。ふふ、美味しいでしょ?」



 アカリは満足げ自分のカップにも手を伸ばす。

 湯気越しに笑みを浮かべるアカリにつられて、俺も口元が緩む。



 アカリがジュリに声をかけた。

 

 凛としながらも柔らかく、まるで姉姫が優しく、妹姫を宥めるようだと思ってしまう。

 しかし、その言葉にやや不機嫌そうにしながら、俺と姉のアカリを睨みつつ、ジュリがソファの方へと歩み寄る。

 彼女はソファの対面、俺の目の前に座り美脚を伸ばす。



 アカリはジュリの横顔を見て、口元を緩めニヤリとした。


 優雅に座っているアカリの美脚が少しずつ開いていったーー。



 ゴクリ


 固唾を呑み込んだよ。

 アカリの動き方に敏感に反応したんだよ。 

 そりゃそうでしょ。どうしたらそうなるんだ? はい?

 パンツ丸見えですけども?


 思いながら耳まで赤くなるのがわかる。

 速攻で視線を床に落とした。


 その時、部屋の空気が変わったなと感じた。

 

 彼女たちを見ながら、なぜこうなったか思考を巡らせる。

 

 居心地の悪さに耐えきれず、思わず目を床に落とす。



 その瞬間、俺の脳内に衝撃が走った。

 【妄想スイッチ】がオンになる予感がする。

 目の前はぐわんと歪み、俺は独自の”癖”の世界へーー入っていった。



      


 【妄想スイッチ:オン】

 

 ──ここから妄想です──


 幕が上がった。

 

 ♪チャララ〜〜ン…… チャララ〜〜ン……!


           

 垂れ幕【第二次心理戦勃発】


     

 ジャジャジャン! ジャジャジャン!

 

 ジャジャジャジャ〜〜ンッ!


 BGMが流れーー

 

「おひけぇなすって! てめぇ、生国と発しますは──ヤマトの生まれでござんす!」

 

 「流れ流れて、縁あって……ビヨンド村へと流れ着きやした。

 

 姓は赤絹、名はシタギーー以後、お見知りおきを」


      

 

 挿絵(By みてみん)

(※彼女の衣装はゴクトーの妄想をベースにした特注のバトルコスチュームです。※デザイン上の露出はありますが、下着ではありません)

 



 「黒編みタイツの、その隙間から、まがりなりにもチラリと見せる、

 情熱のルビー色、通称ーー『赤三角』とは、あっしのことでござんす!」

   


 スッと幕が下がった。

     

 ブーー!    

         

 「ようこそ、お越しくださいました。

 本日は誠にありがとうございます。

 どうぞ、ご退場ください」



 垂れ幕ー【妄想劇場終了】



【妄想スイッチ:オフ】


 ──現実に戻りました──



 その直後、俺の脳内に『妄想図鑑』と古代文字も鮮やかな分厚い、赤い本が浮かぶ。 なぜか俺はその古代文字が読めた。

 

 次の瞬間ーー『妄想図鑑』に赤絹シタギは吸い込まれていった。


 現実に引き戻された俺の胸が、ズキリと痛む。


「ハッ!……なんだ今の?」


 瞬間、ピクリとも動けなくなった。

 当たり前だ。



 だがーー何度、目を逸らしても、何度、心を律しても、


 気づけば、視線が勝手にその“戦場”へと舞い戻ってしまうーー。


 かつて、幾多の修羅場を越えてきた俺の”妄想眼死線”ーー

 


 それは今、たった一点に吸い込まれていく。

 

 その先にあるのは、いくさではないーー

 ……ってか、カッコつけてる場合かッ?


 ただひとつ、赤く三角な……誘惑の渦ーー。     


 ……ってか、俺は詩人かッ!

 


 自分にツッコムが、思えば滑稽だ。

 あーしんどい。


「い、いかん、つい」


 我に返った。


 心の中で葛藤し懸命に自分に「冷静になれ」と言い聞かせる。


 平静を装うことすらできない。


 それでも自問自答を繰り返す。

 奥歯をぎりっと噛み締め、白々しい声を出した。



 「……っく、死線が危ない」



 アカリの鋭い目は、まるで俺の”死線”を完全に、把握したように感じてしまう。


 その瞬間、俺は罪悪感とともに、額にじわりと汗が滲む。



 そして、ジュリと目が合い、うつむき黙った。



「ふふふ……ぅふんっ♡」



 艶かしい笑い声だ。

 俺の挙動を見ていたアカリがこれでもかってな、笑みを浮かべる。


 狙いが的中したって顔だな。

 なぜか、目が笑ってないが。



 思いながらも俺はその場で放心状態のまま。


 お茶を持つ手が思わず、コトッっと音を立てた。


 姉妹の気持ちなど、露知らずーー

 俺は姉の『赤三角』に釘付けだったーー。



「集中してるみたいだけど、ナガラ兄様のこと、思い出したかしら?」


 その言葉に、俺の心臓がギクリと跳ねた。
















 お読みいただき、ありがとうございます。


 ブックマーク、リアクション、感想やレビューもお待ちしております。

【☆☆☆☆☆】に★をつけていただけると、モチベも上がります。


 引き続きよろしくお願いします。




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