第五話・突然の敵
俺は本棚へ向かいながら考え事をしていた
今一番考えているのはさっきぶつかった人に感じた違和感だ
見た目に違和感があった訳ではない
普通のパーカー姿であった
特に殺気なども感じていない
そう考えていると、本棚のところに着いた
さっきの人ではない別の男性がいる
しかもこちらを凝視してくる
気にするだけ無駄だと思い本を返しに向かう
「──君、ここの人間じゃないね」
俺はその言葉に驚き、声の方へ視線を向ける
その目からは、何の感情も読み取れない
するとその男性は手を叩き
「みんな、出てきていいよ」
その声は男の声というより少女の声であった
何が出てくるのかもわからない、それよりも一番気にするべきは殺気を感じていることだ
俺は剣に右手を添える……が剣に添えていたはずの右手が重力のかかるべき方向にまっすぐ伸びている
動かそうにも動かない完全に脱力している
すると突然床が抜けた
まるで落とし穴にでも落ちたのかのように
落ちたと思ったら急に青空が見える
青空に穴が開いていて、さっきまでいた図書館の天井が見えた
俺は受け身が取れないまま地面に落ちた
幸いにも砂浜に落ちたことで衝撃は少なかった
コンクリとかに落ちるかもしれなかったと思うとゾッとする
立ち上がると髪が腰まである茶髪の少女が立っている
それも周りにふわふわと人形を浮かべながら
さらに上からもう一人下りてきた
「図書館で暴れてはいけませんよ」
日傘をさしていて顔はあまり見えないが落ち着いた大人の雰囲気のある女性だ
正直頭の処理が追い付いていない
「図書館がめちゃくちゃになろうがいいんだよ、だって目の前に敵がいるんだから
──このゼノがァ!!」
少女が急に殺意をむき出しで叫ぶ
ぜのってなんだ?そんなことを考えているほど余裕はない
少女の手が前に出ると同時にふわふわ浮いていた人形が一斉に向かってくる
まだあまり思ったように動いてくれない右腕で剣を掴む──が力が入らず鞘から抜くことすらできない
今はただ逃げ惑うことしかできなかった
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