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四話

「……み!!ひなみ?!!」



月を見ていた私は目を覚ますと、見覚えのある病室に横たわっていた。



声のする方を見ると、彼氏のヒロトが涙ぐみながら私の名前を呼び続けている。



「ひなみが!!目を覚ましました!!!」



私が意識を取り戻したことに狂喜乱舞しながら、ヒロトは病室を出ていった。ああいうところはあるけど、良い奴なのだ。



一人になった病室で、右手を見る。



さっき、フランソワの涙がかかった手だ。



濡れこそはしていなかったけれど、確かに水の粒の感覚は残っていた。



「……ありがとう……」



不思議な体験だった。けれど、確かに私はあの子たちと共に過ごした。



楽しいことは分かち合い、悲しいことは癒し合い、歩んできたのだ。



私は、3年間お世話になった彼女たちに経緯を込めて右手を胸に当てた。



――――――――――――――――――――――――――


意識を取り戻してから1ヶ月が経った。



私が目を覚ましたのは、どうやら、私が襲われてから3ヶ月ほどか経ってかららしい。



3ヶ月とはいえ、流行りや時勢もかなり変化していて、戸惑いはあった。



しかし、私を苦しめたのはそんなことではなかった。



私を苦しめたもの。それは、フランソワ達との夢のような日々だ。



しがらみも苦しさもなく、ただただ愛で満ち満ちていたあの生活が、懐かしくて、愛おしくてたまらないのだ。



3年間、そこで生きていた私は、現代の生活に悲鳴をあげていた。



傷も塞がり、退院したとはいえ心までは癒えていない。



そもそも、我が子を残して現代に戻ってきてしまったのだ。



罪悪感や焦燥感に苛まれた私は、ひたすらにネットに呟きを連投する毎日だ。



ああ、もう一度、フランソワのところへ行きたい。



私は最後に、今から行くね、と言い残し買ってきた錠剤を煽った。



もう一度、フランソワに、我が子に、夫に会う為に。




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