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本音

「二つ目は父……先王の屈辱を晴らすためさ。ウォーカーに指示を受けてからの先王の様子は見ていられなかった。威厳も無くただ焦って怒鳴り散らかすその姿は王に相応しくは無かった」


 少しうつむき加減に、悔しそうに唇を噛んでユリウス陛下はそう言う。先王ということは、現王のユリウス陛下の父のはずだが、頑なに先王という呼称を貫く陛下に、俺は言外の痛みを感じた。


 そして、帝国の先王と言えば帝国史上最も偉大な王と呼ばれるほどの人物だったはずだ。賢王という通称もあり、共和国までもその名は轟いていた。


「ウォーカーは人質を取るんじゃよ……国全体もそうじゃし、特に家族は酷く危害を加えると、そう陛下にも言ったそうじゃ」

「なるほどな……報酬を奪われるリスクもある上にそれじゃ平常心では居られない、か。ウォーカーのような圧倒的な権力と実力を持つ者が相手ならばなおさら」


 王という立場の重圧を俺は知らないが、大切な人を失う辛さならば知っている。俺ならば、到底冷静な判断を下せないだろう。


「マサトをこの、脱出不可能な裏迷宮に送ったのも?」


 シズクがそう聞けばマサトはこくりと頷き、ユリウス陛下はため息をついて額に手をやる。


「あぁ。『馬鹿げている、辞めるべきだ』と何度止めたか。それでも先王は聞かなかった。その時点で私は先王を父と認めるのを辞めたよ。だが、父じゃなくとも先王がただおかしくなったと思われるのは許せない」


 プライド……権威……言いようは幾らでもあるが、感情の問題でもあり、そしてそれは陛下の立場を確固たるものにするための布石でもあるんだろう。

 

「なるほど、あいわかった。三つ目は?」

「そして三つ目は……三つ目は……」


 そこで陛下はゆっくりと息を吸った。言葉を止めたことに一体どうしたんだと注視すれば、わなわなとその陛下の体が震えている。


「陛下、どうし──」

「三つ目は、単にムカつくからだ……! 世界の頂点を気取って、この私に偉そうに指示を出す、あのデブを殺してやらねば気が済まない! 絶対に、絶対にだ! 絶対にぶち殺す!」

「……え?」


 突然、声を荒らげ汚い言葉遣いでウォーカーを貶す陛下に俺もシズクもリカも声も出ず呆然としてしまう。

 そんな中、パチパチパチ──とマサトだけがそのユリウス陛下の変貌ぶりに拍手をして、感無量と言った表情で讃える。


「はぁっ……すまない。私としたことが取り乱した」

「なーんだ。つらつらと論理を述べてたけど、それが本音ってことじゃない」


 シズクが少しバカにしたような調子でそんなことを言うものだから、マサトが物凄く険しい表情で、今にも襲いかかりそうな気配を見せる。

 が、シズクは別段それを警戒するでもなくこう続けた。


「そういうの、分かりやすくて良いじゃん」



***


 それから幾つか情報を交換した後、具体的な支援の内容を説明され、いよいよ通信の終わりが近付いてきた。


「そっちからウォーカーに仕掛けるのは無理なのか?」


 最後に俺はそう聞いた。

 ユリウス陛下は支援と言うが、直接ウォーカーが接触した時を狙うのが1番手っ取り早いだろうと思ってのことだ。それに、俺たちがこの迷宮から出るまでに、攻勢に出るのも悪くないと考えた。

 が、陛下は首を横に振る。


「無理だな。ウォーカーは基本的に我々に干渉してこない。奴が指令を出すのは転生者の存在が確認された時と、[転生者の篝火]が確認された時だけさ」

「その時以外……普段、ウォーカーは何処にいるんだ?」

「正確なことは言えない。だが私に先王からの引き継ぎを伝えに来た時、共通言語が共和国訛りで、かつ服装も共和国のものだった。共和国のどこかで紛れて生活していると私は推測している」

 


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