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生い立ち

 デッドウルフ、体格としては大柄な犬とそう変わらない。だからその横腹に張り付くように融合している彼女の顔は、座っている俺とちょうど高さが合った。


「その姿は……」


 見たところ、デッドウルフ自体の意識は無いようだ。死体に生えてくるキノコのように、彼女が身体を借りているような印象を受けた。


「まず、名前から、私はユミって言います」

「あっ、あぁそうだな。俺はリューロだ」


 首を下げる彼女に、俺も名乗って頭を下げる。人の深い部分について探るより先に名前を名乗る。子供の方が人として当たり前のことを出来ていて、俺はちょっと恥ずかしくなる。


── ユミ、転生者か。


 名前から分かる通り、やはり転生者だ。ここまでの巡り合わせを生み出す[転生者の篝火]の力にちょっと俺が恐れていたら、そんな俺にユミは少し微笑んでもう一度今度は深々と頭を下げた。


「リューロさん、私の見た目に驚きこそすれ、軽蔑しないでくれてありがとうございます」

「あ、あぁ、それより俺を助けてくれたんだろ? こちらこそありがとう」


 命が今あるのは間違いなくユミのおかげだ、あのまま雪山で意識を失っていたら確実に死んでいただろうからな。


「いえ……ほんの気まぐれ、みたいなものです」


 彼女はそう謙遜し、ちょっと洞窟の奥の方に歩を進め「それより! お腹……空きませんか?」と笑って言った。


***


 洞窟の奥には大量の栄養バランスの取れた食料があって、なぜこんな場所に充実したものがあるのか不思議だったが、それ含めユミが話すというので取り敢えず俺たちは食事を始めた。


「私が生まれた村は平和な場所でした。物心がつく2歳後半の頃には私は転生者としての記憶が蘇って、その目で見るこの世界はとても穏やかでした」


 座って前足で器用にパンを頬張りながら語り始めたユミは、目を細めどこか懐かしむような表情だった。


「転生者であることを両親には?」

「はい……母も父も良い人で、私が転生者であることを明かした時も驚きはしても、受け入れてくれました」

「それは良かっ」

「いえ、受け入れてくれた……というのは私の勘違いだったのです」


 俺の言葉を遮って、パンを皿に置き、少し強い口調でうつむき加減に彼女は続ける。


「告白の翌日、気付けば私は真っ白な世界に居ました。真っ白で無機質で、決まった時間に決まった食事が支給されるだけの世界に閉じ込められていたのです」

「そう……か」


 売られたのだろう、転生者というだけでどこの国もどこの機関も欲しがるものだ。

 

「そこには、私以外にも数人の転生者が居ました。みんな私と同じで気付いたらここに居たらしく、そしてみんな等しく実験台だった」


 

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