なん……だと?
目を瞑って1時間ほど経ったであろう頃、俺はようやく寝たフリを辞めて上体を起こした。隣を見れば、一人以外はみな気持ちよさそうに寝ていた。一人は見張りとして起きているんだろう、俺はまさに今起きたとこって感じに寝ぼけた目で周りをキョロキョロしてみる。
「起きたのか」
見張り役の男はフードを深く被っていて、少し不気味な印象だ。腰の鞄から覗く金属小道具を見るに彼は盗賊役職だろう。
「ええ、少し用を足してきます」
「ああ」
俺は周りに魔物が居ないことをスキルで確認した後に、『セーフゾーン』を出て彼らから見えない物陰まで移動する。俺の目的は彼らに見つかることなく、彼らのレベルを測ることにあった。
── 別に何かしようって訳じゃないんだが。
性分としか言いようが無い。自分より強いのか弱いのかを確かめなければ安心を得られないのだ。念の為、影に潜った上で彼らにスキルの照準を向ける。
「スキル<鑑定>」
スキル<鑑定>はその名の通り、対象の情報を読み取ることが出来るスキルだ。魔物相手に使えば、その魔物の種族名、性別、食性から得意としている攻撃や弱点などまで得られる情報は多岐に渡る。
だが人間相手にはそこまでの情報は得られない。国の機関やギルドが冒険者狩り等からの被害を防ぐ為に、たびたび情報隠蔽を行うように冒険者に対して促しているし、街の専門の店やギルドでも簡単に<鑑定>対策の呪文を付与して貰えるからだ。
だから映し出されたのは名前とレベルくらいなんだけど……
「……はっ!?」
その内容に思わず驚きが声に出る。
冒険者のレベルは一般的に30を超えればベテランと呼ばれ、罪斬りのエレナ程の各国で名を轟かせる実力者になるとレベルは50を超える。教会の恩恵の中で、転生してから今までずっと鍛錬を積んだ俺でレベルは48、一部の例外を除いて俺は敵無しのハズだった。
だが、その予想とは裏腹に俺が<鑑定>をした全員のレベルは50を超えていた。さらに驚くことに5人の中に『レックス』なんて男は存在せず、金髪の気さくな男の名は『アレス・ジョーンズ』と表示されていた。
── 強すぎる、いくらなんでも。
ただの冒険者では無い。これほどの実力があるのに、一層でフリーで魔物を狩ることをギルドから黙認されているわけが無い。なにか別の任務を命じられているとか? 例えばグランツの捕獲とか、共和国だって何かしらの方法で[転生者の篝火]が現れたことを認知しているだろう。いや待て、そもそも共和国の人間かも分からないな。
── それに転生者……か。
そう、1人だけ日本名の人間が居た。『マサト・タカダ』、見張りとして起きていた、あの盗賊の男だ。
兎にも角にも、これ以上彼らと行動を共にするのは危険だ。何か理由をつけて、全員が目を覚まさないうちに逃げるとしようっ……なんだ!? 突然首が締まって浮遊感に襲われる。
鑑定を逆探知されたんだ!
「おい、お前何モンだ」
気付いた時にはもう遅かった。影から引っ張られた俺が初めに聞いたのは、気さくだった彼を忘れさせるに十分な怒りに満ちたアレスの声だった。




