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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大好きな時間

作者: びくりり(超妄想作家)

大好きな人をイメージして創りました


ドキドキしませんか♥



足元に ボールが 転がってきた


僕は超ーっ 


最大級のスピードで掴んだ


推しのサインが入ったブルーのボール


小さなボールを 僕は抱きしめる


「大好きっ」


僕はまひるが 大好きだから


身体中を駆け巡る 


幸せの真っ只中っ


そして訪れる脱力感と興奮


哀しいくらいの儚い時間なのに 



まひるのステージ  熱量は 半端なく


グループの中で 僕の中で まひるはピカイチ


歌声はファンを魅了して


感動を与えて



そうやって 宝石箱に入り込んだ時間は 過ぎてゆく




ある日の休日 僕は行ったことのない街を散策している


目的はないけど 僕の好きな時間


ちょっとだけ 贅沢しようと思って 初めてのスーパーに寄った


チーズの入ったジューシーなハンバーグ


最後の一個に 手を掛ける


誰かも一緒に


「あっ、ごめん、、」


目が合った


「あっ、まひるっ」


僕の中で 時間の流れと景色が 噛み合わなくなっていく



奇跡は 緩んだ気持ちに 訪れた


ところであなたは 推しと似てるところ あったりしませんか?


私は あやふやな味覚


決してグルメじゃないところ


でも美味しいと思っちゃう


あなたも 推しとどこか似てませんか




ドラマほ 続きます




「あっ、どうぞぉ」


その人は 遠慮がちに言ってくれた


「僕は いいです、、、あなたのファンだし、、」


まともに見ることなど出来やしない


だって大好きなまひるが ここに居るんだもの




これは ドラマだから 現実とは違う


そこがドラマの良いところ 


もっと もっと あなたがときめくように






まひるはそばで見ると 思っていたより華奢で繊細な感じがした


あんなにハードな歌を届けてくれるのに


身体中から優しさが流れてる



「僕 ファンなんです」


「ありがとう」


「だから これ、、どうぞぉ」


「いやぁ  どうぞ」


僕たちは 目を合わせて笑った


いつもと同じ時間がきらきらしている


僕はレジの人に箸を二ぜんもらって まひるを追いかけた


「あのー そこの公園に寄りませんか」


「えっ、、」


昼下がりの公園は 人通りが少ない


僕はベンチに座って ドキドキしながらハンバーグをはんぶんこにした


地球上の誰よりも 幸せを満喫している


まわりが全て削がれて 二人だけの時間がここにある


哀しいくらいに可笑しい





こんな幸せ あったら良いなあって 思っちゃたりしませんか


でも人生って そんなうまくいかないこと山ほど経験しているし


心か 折れても 傷ついても 生きなきゃいけないし


誰もがみんな 泣かないで生きることは

できないんだし


人間って そんな強くないし


だから 無理してでも 笑っちゃう 


涙でぐちゃぐちゃなっても



本当は 推しだって、、、 きっと





「僕 この前のコンサート行ってました。

サインボールもらいましたよ。


まひるさんの歌 感動しちゃって


あっ ごめんなさい 僕ばかりしゃべって、、


僕 あらたって言います」



木漏れ日がまひるを柔らかく包む



僕の中で幸せだけが 溢れてる


やっばり 幸せって 涙も連れて来るんだね


まひるが優しく微笑む顔を 僕の目は 涙でぼやけさせている



「美味しいですね」


「本当 美味しい」


格別な味がする


葉っぱの匂いを取り込んだ風も いつもより特別だ


こんな時間が、、 ずうっと 続いてほしい


ただ現実は あっという間に 終わっちゃう


小さなハンバーグは すぐに無くなる


「ごちそうさま、、ありがとう、あらたさん。美味しかったです」


そう言って まひるは立ち去った


ほんのわずかな時間の出来事に 全ての幸福が凝縮されていた


まひるにとって 僕は一人の推しでしかない


そう思ってベンチから 立ち上がる


何かが ベンチで光っている


「指輪だ」


銀色の中に うずくまっている緑の石は 輝いていた


まひるが落としていったんだ


慌てて まひるを探しながらまわりを見渡した


遠く 人影の中に まひるの後ろ姿が見えた


思いっきり走って 駆け寄った


「あっ これ忘れ物」


息を切らしながら 手のひらに握りしめた指輪を まひるの目の前に差し出す



「ありがとう。今、気付いて、、、


良かった。これ、大切な物だったから」


「そう、、良かったです。」


「あの もし来週 時間あったら

ご馳走させてください


本当に大事な指輪だから

少しでも お礼したくて」



天から降って来たみたいな言葉だった


それが僕のまわりを 彩りはじめる


「えっ、、本当に良いんですか」



二人で 約束をかわしていると


頬が濡れてきた


曇り空から 一気に雨が落ちてくる


「スコールだ、、」


僕たちは 急いで大きな木の下に駆け込んだ



少し冷たくなったまひるの手は 僕の手の中にある



まひるのシャツが濡れて 透けたまま肌を覆っていた


僕は 目のやり場に困って 空を見上げた


「雨 早く止まないかなぁ、、」



たぶん 僕は今 嘘をついてる 


いやっ 僕は 全細胞を誤魔化して 嘘をついてる




うるさい雨音は 僕をざわつかせて




そして、、、 そんな僕は思わずまひるに キスをした



驚いた目は 僕を見つめる



まひるの濡れたシャツの背中は 僕の手のひらに 張り付いていた


雨粒が僕の肩に落ちた


スコールは たった数分の


僕の中で 最大限に長い時間で


過ぎていった



「ごめんなさい、、、」 



弱気な僕は我にかえって まひるの顔色をうかがう


何の取り柄もない 格好良くもない 僕に戻った



魔法は とけたんだ

 

きっと約束は 無くなった


僕は自分のした事を 一瞬にして後悔した


「とんでもない事を僕は、、、」



空は はっきりした水色になって


太陽の光に濡れた街は 色を際立たせはじめる




「じゃあ、、 来週ね」


まひるの言葉が 聞こえた 


「えっ、、本当、、、」



僕は まひるを見送った


人に見られたら恥ずかしいくらいの 


ぽかんとした顔で



僕の未熟さを 全て覆い被せて まひるは 去って行った


そして それからの一週間は どんな嫌な事も 辛いことも ウソみたいに簡単に乗り越えられた


明日 まひると会える


それは 夢に 現実がしがみついてるみたいな

 

掴みきれない面白さだった





出かける2時間前から 僕は勝負服を着ている


まひると約束したけど 



「本当に来るのかな、、、」


僕は不安にかられている


来なかった時の自分への言い訳も 先に考えて


「応援するだけで良いんだ」 


そう思い あの日に起きた夢のような出来事を 心に仕舞って目を瞑って 呟いてみた


「まひる 大好き、、、」





約束の時間まで あともう少し


僕は待ち合わせの場所に ドキドキしながら立っている


あの日 まひるにキスしてしまった大きな木の下に 


立っている。


約束の時間になっても まひるは来なかった



まひるを待つ僕に 冷たい顔をした小雨だけが やって来る



電話番号は聞いてなかったから


待つことしかできない



脚はだんだん重くなっていく



小さな不安は だんだん大きくなって 


僕を締めつけてくる 


息が苦しいくらいに



この場所に一人でいることが 辛くなってきた


「もう 来ないのかな」



心の中で降る涙は 足元を濡らしながら 


小さな水たまりになっていった



「あきらめよう」


そう思って顔を上げた時 まひるが目の前に立っていた


「ごめんね」



僕は嬉しいのに 涙が勝手に溢れる



まひるの指先はそんな僕の頬を包んで 


優しく髪を撫でてくれた




それからの時間は 


とろけるように僕を包んで、、、



そして 冷たくなっていた僕の唇を


まひるの唇が 今 温めて、、、


くれている





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