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第2話

「これから一生お世話させていただきます、鈴木さん」


「ね、ねーちゃん。その野郎の目マジ怖いんだけど……。殺されたりしないよね?」


「なんてことを言うのですか雫は。この方は痴漢魔ではないのですよ。さあ鈴木さん、お召し替えを」


 俺は今、女子二人の前で裸にされていた。

 一人はあの時ラーメンを頭からかぶっていた女性……濱本(はまもと)絢音(あやね)さん。そしてもう一人はその妹であり俺を殴り飛ばした張本人である(しずく)さんである。

 絢音さんは見た目は清楚な大和撫子そのものだが、雫さんは現役JKのギャルだ。しかもギャルのくせに陰キャでビクビクしている。


 ともかく、そんな二人に裸を晒しているのはワケがある。それは、なぜか彼女らの実家である濱本家というところに俺がいて、なぜか絢音さんが俺の世話係を名乗り出たからだ。一体全体どうなっているのか俺自身にもさっぱりわけがわからん。


「私たちが多大なるご迷惑をおかけしてしまったのですもの。償いをしなければなりません」と俺の体を拭きながら絢音さんが言う。

 しかし一方で彼女のおまけのように背後に隠れている雫さんは俺のことが気に入らないようだった。


「そんなツラしてるから痴漢野郎に間違われると思うんだわ。……ひっ」


 俺が少し見つめただけで悲鳴を上げやがった。なんなんだ、まったく。

 ちなみに俺は二十代後半の平均的な元サラリーマン、そして今は無職の男だ。中年のおっさんではないのだし、痴漢魔に決めつけられるような顔でもないと思うのだが……。


 俺はため息を吐きたいのを我慢して、雫さんに言った。


「怪我が治って住居を探せるようになったらお暇させていただきますので。それまでの間、我慢してはくれませんか」


「怪我が治るまでって……全治一年の怪我で? つまり一年間この家にいるつもりってことでしょー。最悪なんですけど〜」


「こら雫。そんなことを言っていたらお姉ちゃん、怒りますよッ!」


「もう怒ってんじゃん!」


 できたら俺だってこんな家からは早く逃げ出したい。だが体がそれを許さない以上、仕方あるまい。

 絢音さんはともかく雫さんとこれから一年を共にするのは正直しんどいが耐えよう。いや、耐えるしかないのだ。


「っていうか絢音さん、早く服を着せてくれませんか。羞恥心で死にそうなんです」


「はい、ただ今。……鈴木さん、私は本気ですからね。何があってもこれから一生ご奉公させていただくつもりですよ」


 そう言いながら女神のように微笑む絢音さんの目はマジだった。前言撤回。やっぱりこの人もヤバい。『一生』って……。色々嫌な想像が膨らんでしまう。

 そんな彼女に体を拭いてもらうことしかできない俺はただ、怪我が早く完治することを祈ることしかできなかった――。

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[一言] ヤンデレキターーー!!!!(大歓喜)
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