表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

はじめてのはなし

作者: 風花


「書きたい。」



 そう思って、本棚に忘れられていたノートを探しに行った。B5のオレンジ色の表紙のノートが、思っていたとおりの場所に立てかけられていた。


 手に取って、開いてみる。


 初めの何ページかを埋める、黒いインク。以前に同じ衝動に駆られた時の名残で、今では何を書いたかもはっきりしない、お話めいた小説もどきたち。

 恥部から目を逸らすように、すぐにページをめくる。白紙に横ラインだけが引かれた、ありふれたノートを開き、はたと気づく。


 「ここには書けない。」


 書きたいと思った気持ちは急速に萎み、何故だろうと考えた。何故、ここには書けないのか。そして、ふと思いつく。書きたい場所はどこか。

 いつの間にか思い込んでいた。ノートとペンで書くものと。そうあるべきで、そうして書かれたものが正解であると。


 そんな偏見に気づき、面白いと、気を良くした。上がった気分のまま、また出かけることにした。気に入りの本屋へ車を走らせ、着くなり店の片隅の椅子とテーブルを占拠して、文字を打った。

 始めてすぐに求めていた感覚を捉え、満足感を得た。


 そう、これだ。この感覚。

 自分の情けない文字を見つめながら紡ぐのではない、デジタルの美しくバランスの取れた文字を見返しながら、自分の内側を晒していくこの感覚。


 愉しい。


 これならできると思い、迅る気持ちを抑えながら、文字を打ち続けた。

 最後まで辿り着き、題名はなんだろうかと頭を悩ます。今日の日付だろうか。今後も続けて書くならば、何かにvol.1とでも付ければいいのだろうか。


 答えが見つからないまま、とりあえずはコレにしようと名付けた。顔を知る誰かが読むわけではない。取り繕う必要はない。自分に言い聞かせながら打ち込み、投稿するボタンを押した。




 "はじめてのはなし"

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ