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JKと殺人鬼さんの前途多難な恋  作者: 山田くぐる
1/1

〜出会いと告白〜


 これは一体どういう状況だろうか、頭の整理が追いつかない。

 私の目の前にいるこの人って、多分。恐らく、いや信じたくないけど。

 交番に貼りだされてるあの指名手配犯?いや、顔が似てるだけかな?めちゃくちゃそっくりさんなだけ?

 確かに地球には同じ人が3人いるとか言うもんね。はは、。

 あー、いや。うん。絶対あの人だ。だって片手に出刃包丁持ってるし。なぜだかわかんないけど、いや分かりたくもないが、血だらけだし。

 あー、終わった。終わりました。私の人生。短かったなぁ。

 まだまともに恋もしたことないのに。たった16年しか生きてないし。

 お父さんお母さんごめんなさい、先立つ不幸をお許しください。

 って、いやー!まだ死にたくない!

 そもそも酷くない?私こんな人と遭遇させられるようなことしてないよ。

 私もね売れっ子若手俳優とか、超演技派女優とか誰でもいいから有名人と会ってみたいと思ってたけど。さすがにバグりすぎでしょ。

 いや。あー、これか?もしかして。

 これなのか?神様がご乱心の理由は。こないだ神社でお願いしたからか?

 確かに誰でもとか欲張りすぎたかもだけど。そこまでじゃないよね。

 みんな一度はお願いしたことあるよね!?


 ちなみにこれは殺人鬼と対峙した私のたった0.5秒の思考回路。

 

 

 どうしよう、体が動かない。逃げないとって頭ではわかってるのに。

 殺人鬼の手から出刃包丁が離れる。


 今しかない。カラン、と地面に当たる音。同時に走り出していた。走ることに関しては自信があった。

 はずなんだけど。グンっと、腕を引かれたかと思うと殺人鬼の腕の中に。殺人鬼の腕に力がこもるのがわかる。

 あ、死んだわ。そこで意識は途絶えた。



 ん、疲れてたからか変な夢を見た気がする。何時だろう、確認しないと。

 重たい瞼を無理やりこじ開ける。瞳に映る天井はいつもと変わらない、なんてことはなく。

 え、どこここ。寝起きではっきりしていない脳みそに鞭を打つ。

 がばりと起き上がる。まさか、夢じゃなかったの!?確かに、あれは現実、。


 どうしよう。

 

いや、とりあえず落ち着こう。落ち着け私。深呼吸して、大丈夫だから。

 

 もしかして私、誘拐された?でも、なんのために?特にお金持ちそうな格好をしていた訳ではないんだけど。

 .........。

 はぁ良かった。身体中をくまなく確認してみるが、いたって何もなかった。いつもと同じだ。

 てっきり体目当てかと思ったけど違ったみたい。まぁ私は豊満ボディでもなんでもないしね。

 って、自分で言っといて辛いよ........。

 

 そんなことより、今は無事で良かった。こんなことしてられない、いつ殺されるか分からないんだ。早く逃げないと。

 周りに目をやるが暗くてほとんど何も見えない。ほどなくして目が慣れてくる。

 どうやら3m四方の部屋にぽつんとベットが置いてあるだけのようだ。

 ベットから降りて扉に近づく。ドアノブに手をかけた、その時。ガチャり、と鍵の開く音が聞こえた。

 あ、やばい。そう思ったのもつかの間。扉がゆっくり開かれる。

 足が震えて動けない。そりゃそーだよ、なんでよりにもよってこのタイミングなの!?もう少し遅ければせめて遠くにいられたのに。そんなことを考えていると。

 スっと手が伸びてくる。

 はい、今度こそ終わりました。


 顎に手をかけられ、無理やり上を向かされる。や、閉じた瞼に力を入れる。


 どれくらいこうしていただろう。1分?2分?相手が動く気配はない。

 恐る恐る目を開けてみる。飛び込んできたのはやっぱり、あの指名手配の顔だった。


 パッと、顎にかかる手を離すと男が不意に口を開く。


 「ね、君名前は?」


 さっきまでの真顔とは打って変わって、ニコニコとした顔で聞いてくる。

 そこで男は私がガタガタと震えていることに気づいた。


 「そんな怖がんなくても大丈夫だよ?危害を加えたりするつもりはないし、。ほら、とりあえず名前を教えて?」


 男はただニコニコとしている。それがかえって不気味さを際立たせた。

 沈黙がながれる。たかが数秒がとても長く感じて、その時間が何よりも怖かった。フゥ、と息をはき意を決して、口を開く。


 「わ、私は井上美咲です。」


 声は震えていたし、とても小さかった。だが男はそんなこと気にしていないようで、


 「美咲ちゃん、美咲ちゃんね。」


モゴモゴと口の中で繰り返す。


 「とっても可愛い名前だね。気になることがあればなんでも聞いて、なんだって答えてあげるよ。」


 聞きたいことは山ほどある。ここはどこなのか、とかどうしてつれてきたのか、とか。


 ーでも、聞くのが怖い。

 

 あー、もう私の意気地なし!せっかく聞いていいって言ってるんだから聞けばいいのに、。

 まぁ、私が元気なのは所詮頭の中だけだよ。もともと人付き合いとか得意じゃないし。

 って、そんな状況でもないんだけどね。


 「うーん、まだ怖がってるの?」


 男は少し考え込んでから、ほら、と両手を頭の横でヒラヒラと振って見せた。


 「武器は、なーんにも持ってないよ!」

 

 男は無邪気そうに言ってみせる。

 いや、そういうことではないし。素手でも怖いものは怖いだろ。

 というか私くらい素手でも難なく殺せるのではないかと思う。

 まぁ、今のところ私に危害を加えるつもりはないらしい。あったとしても諦めるしかないけど。

 深く深呼吸をする。こんなところで二人して突っ立っていたって仕方ない。

 まずは一番気になっていたことを、


 「あの、今何時ですか?」


 あー、深呼吸したのに緊張しすぎて聞くこと間違えた。

 何が目的か聞きたかったのにー!

 

 男は少し意外そうな顔をしてから、


 「今はね、夜中の2時頃だったと思うよ。」


そう言った。


 「ありがとう、ございます。」

 

 「他には?」


 よし、今度こそ


 「あの、なんのために。何が目的で私をここに連れてきたんでしょうか?」


 無事聞けてよかった。ことは何も進展してないけど。


 「惚れたからだよ?一目惚れ!だから連れてきちゃった!なんか照れるな〜。他には?俺の名前とか聞かないの?」


 「.........。」


 え、今この人なんて言った。聞き捨てならないセリフが聞こえたような。

 ほれた?ほれたってあの惚れた?

 

 

 

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