とあるサーファーの恋人の告白
ええ、傷付けましたとも。私が、傷付けました。だって、もう限界だったんです。
彼ときたら、いつだって、私のことなんて、まるで存在していないかのような扱い。彼の関心は、海と、週末の天気と、海岸までの渋滞予想と、新しいボードで占められちゃってる。
だったら、私なんか、いなくたって別にいいじゃない。
晴れた週末はいつも独りぼっち。だから、私は、お日様が大嫌い。大雨の降る、部屋の中に閉じこもっているしかないような天気がいい。そうしたら、仕方なしにだけれど、彼は私を構ってくれる。雨の日は、とっても眠たくなるのだけど。
私も一緒に海に出かければいい、ですって?
そんなことができるくらいなら、とっくにしています。
私は、ずっと、お留守番。
一度、こっそり車の中に潜り込んだことはあったけど、すぐに見つかってしまったの。彼ったら、にっこり笑って、「お土産買ってくるからね。」の一言で、私を降ろしてしまったわ。
いつだって、一緒にいたいのに。
そりゃあ、お土産は嬉しいわ。だって、とっても美味しいんですもの。獲れたての新鮮な海の幸、お魚さんの魅力には、くらくらしちゃうけど。
でも、もっと一緒にいて欲しい。一緒にひなたぼっこしたり、一緒におもちゃで遊んだりして欲しい。
我慢できなくなって、天気予報を調べるパソコン画面の前に居座ってみたり、彼が言うところのいい波が来る海岸への地図の上に寝転がったりして、アピールもしたけれど。
なんで、わざわざ、水に濡れるようなことするのかしら?
私、水に濡れるのは、大嫌い。大雨の日が好きになるなんて、皮肉なものね。
本当だったら、晴れた日の暖かい陽だまりで丸くなっているほうがいい。お日様が大嫌いになるなんて、自分でもどうかしちゃってると思うもの。
だから、ごめんね。
大事にしてるって知ってたけど、思いっきり爪を立てちゃった。それに、爪とぎとしても、感触、悪くはなかったわ。爪痕だらけになったボードを見て涙目になってる彼に、ちょっぴり胸が痛んだけれど。
ねえ、そんな板なんか、もうどっかにやっちゃってよ。
そんなに悲しそうな顔しないでよ。
私は、彼の膝の上に飛び乗る。
きっと今日は、このまま家にいてくれる。
だから、後悔なんかしていない。私のことが一番じゃなきゃ嫌だもの。海になんか行かなくたって、私と一緒の方が楽しいって思ってくれなきゃ嫌だもの。
もし、新しいボードを買ってきたら、やっぱり爪とぎにしちゃうから。




