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序文
遥かなる過去、地球によく似たエデンという惑星で--
一人の男がいた。名前はヤハゥエ・ヤルダバオート。
男は怒っていた。世の乱れに。法ではなく力でエデンを支配する王たちに、そして、それに対して立ち上がらない民草に。
一人の女がいた。名前はレイン。
女は泣いていた。寄る辺なきわが身を、娼婦まがいのことをして日々食いつながざるを得ない境遇を。
ただ日々を暮らしていれば、二人は出会わなかっただろう。
だが、ヤハゥエは旅立つ。世直しと世界救済の旅を。
そしてレインは剣を取った。
力こそすべての世。ならば彼女が力を求めたとて誰がそれを咎めよう。
ヤハゥエは勇士と呼ばれる男たちの元を訪れ、そして失望する。その腐りきった力に。
一方、レインはただの夜盗に身をやつした。
諸王国はレインに賞金をかけた。
しかしだれもレインを捕らえることが出来ず、その悪名はついにヤハゥエの知るところとなった。
ヤハゥエは義憤ではなく好奇心から彼女に興味を持った。
人づてに噂を辿り、レインの元に。
そして始まる。怒りと悲しみの血の雨の物語。