最終話 勇者VSユーリ
――俺がアレスのパーティ追放されてから5年程経った頃だった。
俺はリタと結婚していた。
リタに告白された時は驚いたが、良く考えたら俺もリタが好きだったので流れで結婚したのだった。
そんな感じで俺は今まで以上に充実した幸せなスローライフを送っていた。
しかし、そんな幸せな生活を脅かす存在がけたたましい呼び鈴の音と共に叫び声を上げた。……アレスだ。
「ユーリ! 頼む! 戻って来てくれ!」
「それはもう遅いけど、上がって行けよ。二階を作ってみたんだ」
いつもなら適当に追い返す所だったが、今日は用事があった。
「マジかよ! 見せてくれ!」
俺は二階へとアレスを招き入れた。
二階は開けたベランダに、木の屋根があるだけの簡素な造りだが、見渡しは良かった。
「中々いい景色じゃねえか!」
「まあなあ」
俺はそう答えつつも、記憶改変の詠唱を始めた。
これさえ使えばアレスは俺の事を忘れ、俺をパーティに引き戻そうとする事は金輪際無くなるだろう。
いい加減面倒になって来たし、リタの為にもこれ以上アレスを野放しには出来ない。
……最初からこうしておけば良かったんだ。
ふと、アレスの青い瞳が俺を睨んで来た。
「ユーリ! 今日はお前に話したい事があって来たんだ!」
「……何だ?」
俺の開いた手の平に、魔力が集まって行く。
「……今日は謝りに来たんだ。……お前を追放しちまって悪かった!」
アレスは深々と頭を下げてしまった。
「…………」
――やっぱりやめとこう。
俺は、記憶改変を放とうとしていた手を握り締め、魔力を打ち消した。
面の皮が厚くて、物分かりが悪くて、異様にしついこいアレスの事はずっと嫌いだったが……今はそんなに嫌いでは無いかも知れない。
「すまなかった! ユーリ!」
「もういいよ昔の話は。それより俺、リタと結婚することにしたんだ」
「へー良かったじゃん! ならリタも俺のパーティの荷物持ちにしてやるよ!」
「俺もリタも、お前の荷物持ちには絶対ならない」
「えー何でだよー!」
「……まあ一か月に一回くらいだったら、遊びに来いよ」
「マジで!? じゃあ頼む! 俺のパーティに戻って来てくれ!」
「それは今更だし、もう遅いから絶対無理」
「なんだとお!」
俺は美しい森の景色を眺めながら、軽く苦笑いした。




