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13話 勇者VSユーリ(夢の中)

「ユーリ! 戻って来てくれ!」


「もう遅いんで無理」


 ここまでは、いつものアレスと同じ筈だった。


「何だと……? なら力づくでも戻って来て貰うぞ!」


 アレスの全身から黄色い変なオーラが迸った。

 長めの金髪も逆立ってユラユラ揺れているし、電流みたいなのが断続的に全身を走っているし、何だか強そうだ。


「――行くぞっ!」


 アレスのエネルギー弾が俺の胸へと放たれる。

 森の木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、大きな岩へと叩きつけられてしまった。

 痛くは無いが、効果音と共に俺のライフポイントが500減って行くのが分かった。残り3500だ。


 どうも前世の記憶が所々出ている気がするし、アレスがこんなに強い訳が無いのでどうやら俺は夢を見ているらしい。


「どうだ! 俺の力を思い知ったか!」


 アレスの勝ち誇った顔を見ていると、無性にイライラして来た。

 ……夢だろうが何だろうがアレスに負けるのは嫌だ。


「いい機会だ。ちょっと本気出してやる」


「舐めてんじゃねえぞおおお! 俺のターン! 俺は手札から魔法カード、サウザンドエクスカリバーを発動!」


「何だそりゃ」


 アレスがカードを天に翳すと、空から豪華な金の剣が雨のように降って来た。


自己転移ヒール


 自己転移ヒールで瞬間移動して回避した俺に、アレスが不敵な笑みを向けて来た。


「――読んでたぜ!」


「なっ!?」


 金の剣が俺の転移した先へと一斉に降り注ぐ。

 剣は硬質化した俺の体に全て弾かれたが、ライフに1000ダメージを受けてしまった。残り2500しかない。


 ……念の為事前にガードブーストを使っておかなければ即死だった。


「どうだ! 思い知ったか俺の力を!」


「……なかなかやるじゃないか」


 転移ヒールした後、0.0001秒程度だけ出来る隙を突いて来るとは……。このアレス、現実と違って頭もキレる。


 出し惜しみしてる場合じゃ無いらしい。


「本気で行くぞ! 究極魔法ヒール!」


「装備カード! グラビティ・イージス発動!」


 アレスが構えた巨大な盾が迸る閃光を受け止めた。


 負けじと究極魔法ヒールを全力で放ち続ける。


「ユーリイイイイ! 絶対に引き戻してやるうううううう!」


「今更……もう遅いんだよおおおおお!!」


 盾に、ヒビが入った。


「――自己転移ヒール


 そう呟いたのはアレスだった。


「『万能ヒール』はお前だけの特権じゃねえんだよおおおおお! 大人しく俺のパーティに戻りやがれえええええええええ!!」


 振り返り、アレスの青い瞳を強く睨みつける。


「俺は……! 絶対にお前らのパーティには戻らない! 俺は森で静かにスローライフがしたいんだあああああああああああ!!」


「「全てのライフを支払い発動!」」


「くらえユーリ! 必殺! ブレイブゴールデンフィストオオオオオ!」


「負けるか! 限界突破究極無限ヒールショットオオオ!」


 俺の全身全霊を纏った拳が、アレスの金に輝く拳が、交錯していく。


「グハアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 アレスは断末魔の叫びと共に吹き飛んで行った。


 ――勝った……! 俺は勝ったんだ!


「強かったぜ……アレス」


 ちょっとガラじゃない気がするが、たまにはこういうのも悪くない。

 夢だし。

 しかし……何故か殴った感覚が妙にリアルだったな。




 目を開くと、俺は自室のベッドに寝そべって腕を突き出していた。


 起き上がって魔導時計を見ると時刻は5時。

 まだ早いので毛布にくるまって二度寝しようとしたら、床にアレスが泡を吹いて倒れているのに気付いた。


「ア……が……ゴ……バ……」


 部屋の隅には、キャシィとオデロが小刻みに震えながら怯えた顔で俺を見上げている。


治療ヒール


 一応アレスを治療ヒールしてやったが、状況が良く分からないので気絶はそのままにしておいた。ついでに不法侵入しているキャシィとオデロに目をやる。


「何やってんの……あんたら」


「違うんス! 兄貴の作戦で眠ってるユーリさんを拉致って無理やりパーティに引き戻そうとしたら、ユーリさんが突然腕を突き出して兄貴をぶっ飛ばしちゃってビビってるとかじゃないッス! 誤解ッス!」


「オデロ、ユーリ怖い……」


「……大体の事情は分かったから帰ってくれ」


 全く……迷惑な連中だ。


「わかったッス! 今日の所は大人しく帰るッス!」


「オデロ、マヨネーズ欲しい!」


「寝るから早く帰ってくれ。帰らないならもう一生あげないよ」


「オデロ、分かった! 帰る!」


 オデロは白目をむいて伸びているアレスを背負った。


「ごめんユーリ……オデロ、反省してる」


「お邪魔しましたッス! もう夜襲はしないように兄貴にも言っとくッス!」


「頼むよ」


 三馬鹿が出て行くのを確認した俺は、毛布にくるまって安らかな二度寝を再開したのだった。


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