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12話 勇者VS巨大岩

 窓からの柔らかい日差しで安らかに目を覚ました俺は、いつもの白ローブに着替える。


「ユーリ様! おはようございます!」


「おはようリタ」


 飛びついて来たリタの頭を軽く撫でてやる。

 リタの方は嬉しそうに無邪気な笑みを浮かべていたが、急に不審そうな顔になった。そして何故か俺の脇腹を触って来る。


「ユーリ様……ちょっと太りました?」


 リタの言葉に、慌ててお腹の肉を摘まんでみる。


 ……ちょっとブヨブヨだ。

 最近スローライフし過ぎで運動不足だったかも知れない。


「気にしなくていいですよユーリ様! ユーリ様はブヨブヨでも素敵です!」


 顔を落とした俺をリタが慰めてくれたが、俺の気分は晴れなかった。


「ありがとう。……でも健康に悪いかも知れないし、ちょっとダイエットして来るよ。お留守番しててくれるか?」


「はい! 晩御飯作って待ってます!」


 脂肪燃焼ヒールを使えば簡単に痩せられるが、俺は天然嗜好なのでそういうのはあまりしたく無かった。

 適度な運動で普通に痩せるのが一番だろう。


 準備を済ませた俺は早速出発した。


「いってきまーす」


「いってらっしゃいませー!」


 町とは反対側の東側へと山道を登って行く。

 やがて、目的地の修道院が見えて来た。

 山奥に似つかわしくない荘厳なバロック様式の建物だ。


 このキン・リ修道院は武闘派の修道院なので筋トレ用具には事欠かない。ダイエットするには丁度良かった。


「ユーリ師範! お久しぶりです!」


 寄って来た黒ローブのお爺さんに、俺は苦笑いで返す。


「……師範は止めてください」


「いえ、キン・リ修道院の師範は間違いなくユーリ師範です!」


 以前立ち寄った時試合を申し込まれたので何となく了承したら、気付いたら勝ちまくってしまい、うっかり俺は師範になってしまったのだった。


「まあいいですけど。それより筋トレしたいんですが」


「それなら、ユーリ師範の為に取って置きの岩を用意してあります」


「助かります」


 爺さんの案内で山を登って行くと、切り立った崖の傍にそれらしき岩があった。森の木よりもずっと高い巨大な岩だった。


「……いかがでしょうか?」


 試しに抱えてみる。


「こんな岩を軽々と……さすがはユーリ師範でございます!」


「ありがとうございます。いい感じです」


 俺はどういう訳か生まれつき結構力が強いみたいで、巨大な岩も楽々持ち上げる事が出来た。


 ……正直もう少し重い方がいいが。まあこれ以上大きな岩は早々見つからないだろう。


 そのまま岩を持ち上げて、岩の重心を両の手の平で支える。

 そして腰を屈めてのスクワットを開始した。

 やはり軽いが、少しは効いている気がする。


「おっ! ユーリじゃねえか! 俺のパーティに戻って来てくれ!」


 振り向くまでも無い。アレスの声だ。


「もう遅いし、今忙しい」


「ってかお前何やってんだ?」


「筋トレしてる所だ」


「筋トレだと!? いい心掛けじゃねえか! 筋肉があった方が沢山荷物持てるからな!」


 ……いや、ダイエットしてるだけなんだが。


「ところでアレスは何でここに?」


「そりゃ当然、お前を引き戻して魔王を倒す為だ! 俺は天才で最強だが、努力も怠らないんだ! やべえだろ! 努力する天才だぞ! お前みたいな凡人は幾ら努力しても俺には追い付けねえんだよ!」


「ああそう」


 スクワットを継続しつつも、適当に答える。


「しかし……ユーリみたいな雑魚がそんな馬鹿デカい岩を持てるって事は、この山の岩は相当に軽いらしいな! 俺だったらユーリの1億倍の岩は余裕で持てるぜ!」


「やめた方がいいと思うけど」


「うるせえ! お前は黙ってろ!」


 アレスは子供の背丈ほどある岩に手を掛けたが、岩はビクともしなかった。


「クソ……どうなってんだこりゃ。まあいい、この小さい岩なら余裕だろ」


 アレスは人の頭程の岩に手を掛けた。


「グヌヌ……結構重いじゃねえか……クソ……」


「無理するなよー」


「うるせえ! 俺を舐めてんじゃねえぞ! このくらい余裕だ!」


 アレスは強がってはいるが、顔が真っ赤になってプルプルと震えてしまっている。


「……あー軽いぜ! 余裕過ぎて……! 筋トレにならねえぜ!」


 いいやもう。勝手にさせとこう。


「そうだユーリ! 俺と岩を交換してくれねえか? この岩じゃ俺には軽すぎて修行にならねえよ!」


「いいよ」


 俺は一度岩をドスンと降ろし、岩の端の方に指を突っ込んで、指の力で岩を持ち上げた。


「よっしゃああああ! 来い!」


 掲げたアレスの両手へと岩の中心を乗せ、少しずつ力を抜いていく。


「ちょっと……重い! マジ死ぬ! マジ止めろ! ストップストップ!」


「重いの?」


「重くはねえ! このくらい余裕だ! ……ってマジストップ! 死ぬ! 重いって!」


「重い?」


「重い重い! マジ死ぬから止めろ! マジで!」


 俺は岩を引き戻し、スクワットを再開した。

 アレスは息も絶え絶えにへたり込んでしまっている。


「ハァ……今日の所は……ハァ……帰ってやる……調子が悪いみたいだ……からな」


「ああそう。じゃあね」


「今度こそ絶対に引き戻してやるからな! 憶えとけよ!」


 アレスは肩をさすりながら山を下りて行った。


 その後、暫く筋トレしていたら俺の贅肉は消え去ってくれた。

 何とかなって良かったが、今後は運動不足と食べ過ぎには注意しよう。


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