11話 勇者VS呪われた剣
この話は勇者視点です。
「許さねえユーリ!! 絶対にお前だけは!!」
俺は思わず酒場のテーブルをブッ叩いた。
「兄貴……どうしたんスか?」
「オデロ、今日の兄貴こわい……」
「ユーリの野郎だよ! いつも俺の邪魔ばかりしやがって!」
今思うと、リリータさんとユーリの野郎はいい感じだった気がする。つまりユーリの野郎は隠していたが、リリータさんはユーリの女という事だ!
「クソ! ユーリの野郎絶対に許さねえ! パーティには全然戻りやがらねえ上に、俺のリリータさんまで奪いやがって!」
「リリータって誰スか?」
「お前には関係ねえよ!」
「なんスかそれー!」
口を尖らせて不服そうなキャシィから目を逸らすと、
『――欲しいか?』
妙な男の声が聞こえて来た。
『力が欲しいか?』
おかしな事に、頭の中から声が響いている気がする。
「おいオデロ……何か言ったか?」
「オデロ、何も言ってない」
俺はふと、机の上に置いてある剥き出しの錆びた黒い剣が気になった。
「何だこれ?」
「ああこれッスか? 薬草取ってる時にオデロが見つけたんスけど、呪われてるみたいで売れなかったんスよ」
『俺を使えば……お前は最強になれる』
この剣が喋っている。……何故かそんな気がする。
キャシィとオデロには聞こえていないらしいが。
「オデロ、この剣を俺にくれ!」
「兄貴が欲しいならいいけど……」
「何か作戦があるんスか?」
「ああ、あるぜ! 今度こそユーリの野郎を絶対に引き戻してやる!」
俺は意を決して剣を握った。
……その瞬間、全身に力が溢れて来るのが分かった。
『俺の力……存分に使うがいい……代償として……お前の命と魂は俺の物だ!』
「ユーリ……殺す」
ユーリを殺さなければ。それが、俺に課せられた唯一無二の使命だ。
「どうしたんスか兄貴?」
「オデロ、兄貴こわい」
「……失せろ」
俺は震えるデカブツと黒ローブの女を無視して酒場を出た。
ユーリを殺す……俺の目的はそれだけだ。
◇ ◇ ◆ ◇ ◇
ユーリのいる森に辿り着いた俺は、紫の草を探した。
集めた紫の草に黒剣を突き刺して行く。
黒剣の瘴気が草に流れ込んで草は黒く濁った色になった。
――絶対にユーリを殺してやる。
俺は黒く萎びた草をひたすら口に押し込んで行った。
心臓が大きく脈打ち、全身に更なる力が溢れかえるのが分かった。
そのまま全速力でユーリの家を目指す。
「あれ? 来たのかアレス」
「ユーリ、遊びに来たぞ」
「お前アレスじゃないな?」
ユーリは冷たい目で俺を睨んでいた。
「……何故分かった?」
「俺と出会ってまず俺を引き戻そうとしないのは、絶対アレスじゃない」
「……良く気付いたな……だがもう遅い。俺の名はゴズロ、貴様に復讐する者の名だ!」
「ああ、昔命乞いして来たから助けてやった悪霊だっけ?」
「黙れ! 俺はあれから更に力を付けた! 今度こそ殺してやる! 死ねええええええ!」
「――解呪」
「ギャアアアアアアアアアアア! 分かった! もう悪いことはしない! 許してくれえええええええええええ!」
「……もう遅い」
…………。
……あれ、俺何やってたんだっけ。
「すまんな……お前を巻き込んでしまったかも知れない。今度から悪霊の命乞いは聞かない事にするよ」
何故かユーリがいる。
……状況が良く分からないが、ユーリと出会ってまず掛ける言葉なら決まっている。
「……ユーリ! 俺のパーティに戻って来てくれ!」
「いつも通りで安心したよ」
「じゃあ戻って来てくれるのか!?」
「それは絶対無理」
「チクショオオオオオオオ!」
ふと、後ろから声が聞こえて来た。
「アレス兄貴――――! 大丈夫スか?」
「オデロ、兄貴心配」
「お前ら……!」
そうだ……俺はなんか、変な剣に呪われちまっていた気がする。
「心配かけてすまなかったな……」
「兄貴いいいいいい! 良かったッス! 元の兄貴に戻って!」
「オデロ、怖かった……」
リリータさんをユーリに奪われた嫉妬でうっかり忘れていたが、俺にだってこんないい仲間がいたんだった。
……いつまでも落ち込んでる場合じゃねえな。
泣きじゃくるキャシィとオデロの肩を叩くと、俺はユーリへと振り返る。
「おいユーリ! 絶対にお前を引き戻してやるからな!」
「無理。あと今日は大事を取って帰った方が良いよ」
「仕方ねえ! 今日はなんかダルいから帰ってやるが、次は無いからな!」
キャシィとオデロと連れ立って、森を抜ける。
西の王都へ続く草原の彼方には、真っ赤な夕日が輝いていた。
「よしお前ら! あの夕日に向かって競争だ!」
「あー兄貴! 待ってくださいッスよー!」
「オデロ、負けない!」
「よっしゃああああ! 待ってろよおおハッピーハーレムライフ!」




