ワンホールケーキをキミと
こんにちは。葵枝燕です。投稿するのは、随分と久々……ですね。
今日十月二十七日は、私の誕生日なので、毎年恒例の“誕生日モノ”、です! ギリギリになってしまいましたが、そもそもギリギリ二十七日生まれですから、ちょうどいいんじゃないでしょうか、ね(言い訳すみません)。
何か、無理矢理誕生日モノにした気がする感じになってしまいましたが、読んでいただけたら嬉しいです。
「ん〜、おーいーしーいーっ!」
口に含んだ瞬間、程よい甘さが拡がった。頬に手を当てて、あたしはその甘さを噛みしめる。
お気に入りの喫茶店で、お気に入りのメニューを食べる——これ以上の幸せなんて、きっとないと思う。
「これぞ、幸せの味だわぁ」
「はいはい。それはどーも」
ぶっきらぼうな声音と共に、目の前にグラスが置かれた。グラスの中には、アイスココアがなみなみと入っている。しかも、ホイップクリームのせで、甘さがプラスされているものだ。あたしお気に入りのメニューである。
「よくもまぁ、甘いケーキと一緒に甘いドリンク飲めるよね、野絵は」
その声に顔を上げて相手を見る。毛先が青いベリーショートは、甘い香りに包まれるこの場所にはそぐわないように思えるけれど、ダークブラウンのエプロン姿は何度見てもかっこいい。
「だって、稟世のつくるものっておいしいんだもん。あたし、甘いの大好きだしさー」
稟世は、ため息をついた。このやり取りも、もう慣れたものではあるのだが、やはり稟世には理解できないらしい。そもそも稟世は、この喫茶店の料理全般を担当しているにもかかわらず、甘いものがすきではないので、根本的に理解できないのだろう。
「褒めてくれるのは嬉しいけどさ」
あたしがしょっちゅう褒めるからかもしれないけれど、照れる素振りすらもないまま、稟世はあたしの前に置かれたケーキを指差す。
「一人でワンホールは、さすがに食べ過ぎと思うけど」
あたしの目の前には、チョコレートコーティングされた四号ワンホールケーキ——ちなみに、あたしが嫌いなため、フルーツは一切のっていない——が鎮座している。そしてあたしは、それに直接フォークを突き立てて、口へ運んでいる。つまり、一人で四号ワンホールを食べようとしている。確かに、食べ過ぎ、かもしれない。
「この間、痩せるって宣言してなかったっけ?」
「いいの! 明日から本気出すもん」
「それ、絶対出さないやつね」
呆れつつ、それでも、稟世は笑顔を見せる。
それは多分、今日という日が何かをわかっているからかもしれない。
「今日は、野絵の特別な日だし? 食べ過ぎも大目に見ましょう」
「稟世、優しーい」
「ふふ、とーぜん」
そう、今日は、あたしにとって特別な日、なのだ。
「この稟世が、野絵様のために。つくれるものなら何でもつくって差し上げましょう」
フフッと、稟世がウインクする。それだけの動作もかっこいいのだから、本当に稟世はすごいと思う。
「誕生日おめでとう、野絵。生まれてくれて、出逢ってくれて、ありがとう」
ああ、本当に、なんてこの人はかっこいいのだろうか。思わずときめいてしまったあたしがいた。
「あ、でも」
稟世が、あたしの唇に人差し指を突き付ける。その目に少し、意地悪な色が灯った。
「お残し厳禁、かつ、明日から本気を出すのが条件なので。よろしくね?」
「もーう! たまには甘やかしてよ、稟世」
「野絵を甘やかすとろくなことにならないからいやです」
そんな、いつもの調子の稟世もやはり素敵で。あたしはやっぱり、幸せなんだと思った。
お気に入りの喫茶店で、お気に入りのメニューを、だいすきな人と言葉を交わしながら食べる——これ以上の幸せなんて、やっぱりきっと、どこにもないのだ。
『ワンホールケーキをキミと』、ご高覧、ありがとうございました!
以下、設定など列記します。長くなると思うので、面倒な方はスルーしてくださいませ。
語り手で今回の主役の野絵さんは、まぁ……食べることがすき、ですが、好き嫌いは激しいという設定です。野絵さんがフルーツ嫌いなのは、私自身がそれだからです。家族の誕生日でも、ケーキは私の好みが最優先なので、ほんと申し訳ないと思いつつ……。ちなみに私自身は、食べることにあまり関心がありません。
稟世さんは、料理上手なクールビューティー設定です。食べるよりはつくる派、何でもつくれますが甘いものは嫌いです。ちなみに、“リンセ”という名前をいつか出そうと思っていたので、その願いが叶いました。
どちらかというと、野絵さんがうちの姉、稟世さんは私——をモデルにした部分があります。もっとも、姉は基本何でも食べますし、私は甘いものすきですけれど。
それから、これを書くにあたり、姉に「四号のワンホールケーキを一人で食べる女性っていると思う?」と訊ねました。姉から「いるんじゃない?」と返答が来たので、「ちなみにお姉様はいけますか?」と重ねて訊ねたところ、「がんばればいけそうな気がする」とのことだったので、野絵さんには一人で四号ワンホール食べるという挑戦をしてもらいました。
最近ボーイズラヴアニメを観ている所為か、若干それっぽくなってしまった感が否めないのですが、そのつもりはないですので!
というわけで。以上、設定などでした。
二十五歳になりましたが、精神年齢が中学生で止まっていそうな感じなので、もう少し年相応になりたいものです。まぁ、お子様の自分がすきといえなくもないので、困ったものですけどね。
あらためまして。ご高覧、ありがとうございました!